本作の表紙を見て、何か違和感に気付きませんか?僕は具体的には何も思わなかったけど、ちょっとした違和感みたいなのを感じていたんですよね。その違和感の正体は、読み始めてすぐに気が付きます。「あ、この人は女性のような見た目をしているけど、男性なのか」と。
差別やら色々騒がしい世の中になりまして、簡単にホモだのオカマだの言えない風潮になっていますが、本作は「男性が女性のフリをして生きている物語」です。そういう趣味があるという話ではなく、あくまで不可抗力ではありますが…。
というわけで今回は、成り行きで急に父親になり、その後母親になった男の物語「ニコイチ(全10巻完結済み)」を紹介します。
※コミックス1巻部分のネタバレを含みます。
ニコイチ あらすじ
タイトルにあるニコイチというのは「職場では男、家では女」という生活を続けている主人公に由来するもの。
かつて交際していた彼女が事故で亡くなってしまい、その彼女には実は子供(当時2歳半)がいて、周りの反対を押し切ってその子供を引き取ったものの、父親として接しようもんなら泣きじゃくるばかり。
あれこれ色々と考えた結果、母親として接してみたところ、子供との関係性が上手くいった…。ということで、その子の前では女装するという生活を続けることになり、子供が小学校5年生になった今もなお、その生活は続いている。
ニコイチの見所をチェック!!
らんま以来の1/2
本作は29歳男性が「会社では男、家では女」を使い分ける日常を描いたコメディーです。
冒頭から「私と息子には血の繋がりがありません」という割とヘビーなカミングアウトがあったかと思いきや、その次のページでは「そして私は母親でもありません」という展開になったもんだから、血の繋がりの有無って別に大したことじゃないよねって気持ちになりました。
女性の格好をして化粧をした状態で家を出る。そして会社近くの公衆トイレで着替えて、化粧を落として出社するという…。同じ男として「血の繋がっていない子供の為にここまで出来るアンタすげーよ」以外の感想が出てきません。
まぁ現実に「そんなに男と女を使い分けられる人っているもんかね?」と思う部分はありますが、これはあくまで漫画であり、コメディーです。「声でバレるんじゃね?」みたいな野暮なことは言わんと、らんまみたいな感覚で楽しみましょう。
矢印が二方向にしか出ない三角関係
本作の主人公は、未亡人…とも言えるんだろうか。交際して間もない女性の子供を20代前半で引き取った、現在29歳の女装が得意な一般男性です。
そりゃ人並みに恋もしたいだろうし、気になる女性の1人や2人くらいはいるでしょう(ちなみに職場では、女装した姿で息子と撮った写真を飾っているため、既婚者の扱いを受けている)。そんな彼には、以前から通勤電車で一緒の気になる女性がいて、ふとしたことがキッカケでこの女性と急接近します。
なんとか男性の方の自分で彼女と仲良くなりたいと考える主人公ですが、そうは問屋が卸さず。女性の方の自分は異常なまでに好かれたのですが、素の自分は異常なまでに嫌われてしまいました。
向こうは「女性同士」と思っている部分もあって一緒にお泊まりをしたり、下着を買いに行ったり…。いつこの真相が、どのようなカタチで彼女に明かされるのか必見です。
息子に正体がバレる時…
片想いの彼女にバレる瞬間も大きな見所ですが、本作では何と言っても息子にバレる瞬間こそが大きな見所と言えるでしょう。
子供っていうのは勘が良い生き物なので「実は知ってたよ」的な展開もありそうな気がしますが、もしその気配を微塵も感じ取っていなかった場合「これまでお母さんだと思っていた人が実はお父さんで…」っていうのは、コメディーとして落ちない修羅場感が残ってしまうような気がします。
交際していた女性の子供を引き取って育てるなんてことは並大抵の努力じゃ無理だろうし、何よりも10年近く毎日女装しながらですからね。主人公は神レベルのお人好しに違いありません。
そんな主人公には絶対に幸せになってほしいし、もちろんその息子にも幸せになってもらわねば。…って考えると、どうやってこの物語に決着をつけるのか早くも超気になる展開です。
ニコイチ コミックス1巻を読んだ感想・レビュー
最初だけちょろっと読んでも「この漫画が面白くないわけがない!」と感じさせるポテンシャルに溢れています。ジャンル的にはギャグ漫画に分類されるほど笑わせにかかってくる感はないので、あくまでコメディーという感じ。「女装がバレるんじゃないか?」というスリルが付きまとうって意味では「ドキドキ系コメディー」と言ってもいいかも。
元カノの子供を引き取って十年近くも女装を繰り返しながら母親として生活するっていうのも凄いけど、女装verの主人公に惹かれている会社の後輩社員ってのも少し不気味だし、男性verには冷たいのに女性verにはメロメロなヒロインって存在も、なかなかカオスな感じ。
例えハゲてなくてもカツラが人にバレるのって恥ずかしいじゃないですか?だから不可抗力とは言え、女装が人にバレるってのも恥ずかしいことに間違いないんです。その瞬間がいずれは訪れるのだろうと思うと、その瞬間まで読むことを辞めるのは難しいんじゃないかと。とりあえず僕も続き読みまーす。
あとがき
ニコイチって元々「事故車2台を合体させて、1台の車を作る」みたいな裏社会的用語だと思ってたけど、本作にはピッタリすぎる。