マンガ大賞を受賞した作品って聞くと、極端にハズレが無くなるような気がしています。やはり多くの人に支持されているからこそのマンガ大賞だと思うし…。
賞が発表されることで「読んでみようかな?」って思う読者も増えるだろうから、その影響は計り知れないほど大きいわけで、1回獲るだけも難しいだろうに3年連続受賞ってやばくないっすか?
でも本作は、それも頷けるくらいの超大作です。というわけで今回は、時間を巻き戻して街を救う物語「僕だけがいない街(全8巻+1巻)」を紹介します。
僕だけがいない街 あらすじ
毎日を懊悩して暮らす青年漫画家の藤沼。ただ彼には、彼にしか起きない特別な症状を持ち合わせていた。それは…時間が巻き戻るということ! この現象、藤沼にもたらすものは輝く未来? それとも…。
僕だけがいない街の見所をチェック!!
再上映(リバイバル)という特殊能力
本作の主人公には再上映(リバイバル)と呼ばれる特殊能力があります。その内容は「何か悪いことが起こる前に1分~5分ほど前に戻って同じ状況を繰り返す」というものです。悪いことの原因や違和感に気づくことで、その能力は解除されます。
例えば道路の近くで能力を発動した場合、事故を起こしそうな車がいる可能性があり、横断歩道を渡ろうとしている人を足止めすることで事故を回避するみたいな感じ。ただし発動するタイミングは自分で操作できず、毎回不意を突かれるようなカタチで作動します。
ゆえに自分にとって都合良く使えるような能力ではありません。本作はこの能力を使って、幼少の頃の記憶や過去に挑む物語です。
幼少の頃に戻り、同級生を助ける
あるタイミングで発動したリバイバルは、主人公が小学生の頃まで遡ります。かつて主人公の周りで小学生の失踪・誘拐事件が発生しており、その真相を探るという流れです。
事件は解決済みとなっていて犯人も逮捕されているんだけど、その犯人は容疑を否認し続けながらも刑に服していて、主人公の中では「冤罪なのでは?」という疑念が巻き起こっています。
同級生を救えなかったという後悔の念から発生したリバイバルですが、これが主人公を含め当時のクラスメートや主人公の親にとって、大きく運命を狂わせるキッカケになるんです。果たして事件を防ぐことができるのか、そして真犯人は存在するのか…必見です。
断片的な記憶のピースを合わせながら事件の真相に挑む
リバイバルで小学生の頃に戻ると見た目は小学生のままであるにもかかわらず、記憶と知識は大人のままなので大きなアドバンテージを得ている状態です。しかしその事件は、当時の周りの大人たちが「子供たちに思い出させないように」と配慮したこともあり、主人公は詳しい事件の詳細などを知っているわけではありません。
それに過去の時代で情報を集めようにも、周りには小学生にしか見えないわけで、かなり歯がゆい思いをすることになります。そこを何とかしようと必死に動き回る姿が印象的でした。
何度もやり直しができればイージーゲームなんですが、そう都合良くもいかない能力に少しの苛立ちを感じつつ、読んでいるこっちも手に汗握りながら主人公を応援する展開が最高です。
僕だけがいない街を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
コミックス1巻を読んだ感想・レビュー
サスペンス作品の1巻目なので何をどう評価すればいいのか分からないんだけど、とりあえず1巻の後半から物語は急激に加速するので、ここで読むのを止められる人はそうそういないんじゃないかと。
最初は主人公の根暗そうな感じに苦手意識を感じていたとしても、その主人公に感情移入するようになるまでそんなに時間は掛かりません。僕も最初は「このマンガ面白いか?」っていう冷めた感じで読んでたけど、1巻の真ん中くらいに差し掛かるころには夢中になってたので。現時点ではかなりおすすめです。
コミックス全9巻を読んだ感想・レビュー
すごく面白い作品で、何度か読み返しています。伏線の張り方、物語の終わり方、どれをとっても美しい!結末に関しては賛否があるだろうけど、すべてが思い通りになるわけじゃないっていう含みを残した点は、むしろ良かったんじゃないかと思いました。
タイムスリップとかタイムリープっていう概念があるサスペンス作品は少なくないですが、本作はその中でも最高レベルのクオリティだと思うので、まだ読んでないという人にはぜひおすすめしたいです。
ちなみにストーリーは全8巻で綺麗に完結していて、9巻目は外伝的な扱いになっています。たぶん8巻まで読んだら9巻も読みたくなるくらい夢中にさせられる読者が大半だと思うけど、物語だけ楽しめればいいって人は8巻まででOKです(9巻も裏ストーリーが楽しめるのでおすすめ)。
あとがき
僕だけがいない街ってタイトルは、何よりも優しく、何よりも残酷。