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「屍牙姫」を読んだ感想・レビュー

屍牙姫表紙
Ⓒ屍牙姫

不老不死にそこまでの魅力は感じないけど、仮に不老不死が良いことだとしてもその代わりに太陽の下で生活できないっていうデメリットは大きすぎるなぁと思うわけで。

それでも血液を過剰に摂取しておけばある程度は日光を浴びても大丈夫っていう設定は、天秤として非常に秀逸な設定だと思いました。「これなら吸血鬼の仲間になっても悪くない気がする」っていう人も少なくないのでは?

というわけで今回は、仄暗い青春と血と体液が入り交じるダークファンタジー「屍牙姫(全5巻完結済み)」を紹介します。

屍牙姫 あらすじ

女王様の言うことは、絶対―――。化け物の【下僕】となった僕らの、数奇な運命。東京、国太刀市では、今日も橘壮一はクラスメイトにいじめられていた。ゴミ屋敷と化した自宅の中には無気力な母親がひとり。どこにも居場所のない橘だが、ある女性のために、夜な夜な若い男子学生を女性宅に連れ込む謎の行動を繰り返していた…。仄暗い青春と血と体液が入り交じる、絶望のヴァンパイア・ストーリー!

屍牙姫の見所をチェック!!

妖艶な雰囲気を醸し出す女性

屍牙姫1
Ⓒ屍牙姫

本作は簡単に言えば吸血鬼の物語なんだけど、この吸血鬼に対して色気を感じるっていうのは面白いと思いました。口裂け女がマスク取って「私きれい?」って聞いてきたことに対して「きれいです!」じゃ話進まないじゃないですか?

この女性宅に若い男が連れ込まれて行方が分からなくなるっていう始まりに、男性読者ならわかりみがすごいです。中学生とかそんくらいの時に裸の美女に誘われるっていうシチュエーションがあるなら、そりゃ血を吸われてもいいような気がしないでもないっていうね。

ちょっとスプラッターホラーっぽさがあるので所々に気持ち悪さもあるんだけど、それすらも魅力というか女王様っぽさが際立っていて妖艶な雰囲気がめちゃくちゃ凄いです。このエロ&グロは必見の価値あり。

女王に仕えて心臓を集める使い魔の物語

屍牙姫2
Ⓒ屍牙姫

吸血鬼設定と言えばメジャーなものが幾つかあります。太陽の光が苦手だとか十字架やニンニクが苦手だとか色々あるんだけど、本作ではちょっと特殊な設定になってるんですよね。

吸血鬼は基本的には不老不死なんだけど死んでしまう条件が3つほどあって、それぞれ「日光、飢え、特殊な武器」となっています。で、自分の食料を調達させる下僕(使い魔)みたいなのを配下に置くんだけど、この使い魔が持つ特殊な武器によって命を落とす可能性があるっていう部分がめちゃくちゃ面白いんです。

日光と飢えのリスクを避けるために用意した使い魔なのに、それによって殺されてしまうかもしれないっていうリスクを背負うことの運命というか、吸血鬼と言えども万能じゃないという設定がたまりません。

使い魔同士の迫力満点のバトル

屍牙姫3
Ⓒ屍牙姫

使い魔は女王のために人間の心臓を調達することが主な目的なんだけど、調達先で別の女王に仕える使い魔と遭遇することがあります。この場合、バトルに発展することがほとんど。

使い魔としての強さはキャリアや素質なんかにも関わってくるものの、割と重要なのが「誰に仕えているか」です。特にオリジナルと呼ばれる吸血鬼に仕えているとそれだけでめちゃくちゃ強くなります。

本作の主人公はオリジナルに使えることになった使い魔で、自分の恋人を守るために女王に忠誠を誓ったり、人間を狩ることに嫌悪感を覚えたりと右往左往することになるんだけど、ここに大きな見所が集約されていると言っても過言ではありません。

人間の感情を失いたくないと願いながらも、人間の部分を残せば残すほど使い魔としての力が得られないというジレンマを感じつつ、主人公がいつまで人間としての正気を保っていられるかにも注目です。

屍牙姫 全5巻を読んだ感想・レビュー(あとがき)

エロ&グロの要素が際立っているダークファンタジー、あるいは吸血鬼モノのホラーという感じの作品なんだけど、全5巻で物語も綺麗にまとまってるし非常に見応えのある作品でした。

ただのグロい物語じゃなくて根底にしっかりとしたテーマがあるし、主人公の考え方が少しずつ変わっていく様子にも見応えたっぷりです。好きな人を守るために魂を売ったかと思えば、シチュエーションが変われば力欲しさに人間の部分を捨てたり、場合によっては飼い主に嚙みつくこともあって、読みながら色々と考えさせられます。

一つ気になったのが四天王みたいなのがいるんだけど、実質2人しか出てこないっていう部分です。このことから本当はもっと壮大な物語にしようと思ったけど、途中で畳んでしまった感が少し残っています。でも物語自体に打ち切り感というか消化不良な感じは残っていないので、個人的には問題ないと思いました。

いたずらにエロとグロの要素を入れましたっていう感じじゃなくて、ちゃんと意味を持っているダークファンタジーです。非日常系のホラー、ダークな雰囲気が好きな人におすすめします。

あとがき

僕も中学生~高校生の頃なら喜んでホイホイされてたはず。