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「裸足で、空を掴むように 梅田阿比短編集」を読んだ感想・レビュー

裸足で、空を掴むように表紙

 

短編集って言えば複数のエピソードから構成されていて、その中から「特にこれ!」っていうようなモノが短編集の本題になることが多いような気がします。

そういう意味では本作の表題は文句なし!たぶん短編集のタイトルがまだ決まっていない状態で読んだとしても、間違いなくこれを表題に選ぶっていうくらいにクオリティが高いんです。というわけで今回は、優しい雰囲気の絵と少し重たい世界観のコントラストが見事な短編集「裸足で、空を掴むように(全1巻完結済み)」を紹介します。

 

 

裸足で、空を掴むように あらすじ

異端の幻想作家、その魂の“記録”。黒い毛皮をまとう職人の街を舞台に靴職人の娘・ナンナのひそやかな想いを描いた表題作「裸足で、空を掴むように」のほか、「銀の誓約」、「人形師いろは」、「幽刻幻談―ぼくらのサイン―」(デビュー作)、「おちばの家」(描きおろしショート)を収録。

 

  1. 銀の誓約
  2. 裸足で、空を掴むように
  3. おちばの家
  4. 人形師いろは
  5. 幽刻幻談―ぼくらのサイン―

以上の5編が収録された短編集です。作者の梅田阿比氏は「クジラの子らは砂上に歌う」などが有名。

 

裸足で、空を掴むようにの見所をチェック!!

銀の誓約

裸足で、空を掴むように1

 

小学生の男の子が女装することになってしまった話。嘘とか冗談っていうわけじゃないんだけど、その場の空気を鎮めるために口走っちゃったことが引っ込みつかなくなってしまったという感じの物語です。

最近はトランスジェンダーという言葉も聞くようになり、何の気なしに発言したことが誰かを傷つけちゃう世の中になってますが、そういう感じの作風ではありません。ただただ成り行きで女装することになってしまい、それ以外は何ら変わらない小学生の物語と言えます。

好奇の目にさらされたりして心が折れそうになる男の子と、途中で約束を破ることを許さない女中の心の内が気になるエピソードです。

 

裸足で、空を掴むように

裸足で、空を掴むように2

 

魔炎憑きと呼ばれている忌み嫌われる存在がいて、魔炎憑きは人権を認められていないという…直感的には「魔女狩り」みたいな文化のある世界の物語です。本作の表題にもこのエピソードが選ばれていますが、この短編集の中でぶっちきりで飛びぬけていると感じました(他の作品のレベルが低いというわけではありません)。

町の英雄と彼に恋心を抱いている靴屋の少女の物語で、いわゆる身分の差みたいなものが描かれています。不釣り合いな2人は「上にいる人間が下の人間を引っ張り上げる」みたいなケースが多いと思ったんだけど、こういう展開もありだなぁと痛感しました。

ハッピーエンドって言っていいのか分からないけど、読者によって意見が分かれそうな終わり方も魅力的なエピソードです。個人的にはこのエピソードがめちゃくちゃ大好き。

 

裸足で、空を掴むようにを読んだ感想・レビュー

どれもファンタジー色が強い、独特の空気感を持った作品でした。梅田阿比氏の絵はほんわかしていると言うかどことなく優しい雰囲気が漂うタッチの絵なのに、重い雰囲気のストーリーまで描き上げるんだから驚きを禁じえません。

デビュー作の「幽刻幻談―ぼくらのサイン―」も収録されているので、クジラファンの人にはたまらないのではないでしょうか。デビュー作もそうだし「人形師いろは」もそうだけど、少しオカルトチックな雰囲気が魅力的なので、オカルト漫画が好きだという人にもおすすめです。

個人的にはやっぱり「裸足で、空を掴むように」がめちゃくちゃ良かった!何ならこれで単行本1冊分のストーリーで楽しみたいと思ったくらい。ファンタジーとは言いながらもダークファンタジーよりの重さが感じられる作品が好きだという人は、文句なしに楽しめるでしょう。

 

あとがき

きみ おでこ 寒そうだから。

 

 

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