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「1/11(じゅういちぶんのいち)」を読んだ感想・レビュー

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Ⓒ1/11 じゅういちぶんのいち

泣ける漫画って言われたらたくさん思い浮かぶけど、その多くは丁寧に伏線を張り巡らせての結果であることが多いです。いきなりネロとパトラッシュが死んでも泣けないのと一緒で、読者を泣かせるためにはある程度の助走が必要でしょう。

でも本作はショートエピソードがメインなので、そんなに助走はできないんです。できないにもかかわらず、めちゃくちゃ感情を揺さぶってくるんです。というわけで今回は、涙なしには読むことができないサッカー×ヒューマンドラマ「1/11(全9巻完結済み)」を紹介します。

1/11(じゅういちぶんのいち)のあらすじ

自分の才能に限界を感じ、中学卒業と共にサッカーを辞めた安藤ソラ。しかし、女子日本代表・若宮四季との出会いが、心の奥底に眠っていた何かを衝き動かした――。清新な筆致で描かれる、ソラを巡る様々な人間模様――

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何らかの挫折や困難を乗り越えるというテーマ

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Ⓒ1/11 じゅういちぶんのいち

本作はショートエピソードのオムニバス形式の作品で、どの物語も「何らかの挫折や困難にブチ当たった主人公が、身近にいる誰かによって後押ししてもらうことで困難を乗り越える」という流れになっています。

例えば小さい頃からサッカーが上手で「自分はプロになるんだ」ということを疑ってなかった少年が、自分より上手な選手に囲まれて挫折してしまうとか。家が厳しくて部活動を許してもらえず、コソコソ隠れてサッカー部のマネージャーをする女子部員の姿とか。

なので厳密にいえばサッカー漫画というよりも人間ドラマ、ヒューマンドラマに近い作品です。もちろんサッカーの試合のシーンもかなりあるんだけど、その試合に至るまでの過程や試合中の行動にスポットが当たっているという感じ。

サッカーに限らず団体競技をテーマにした漫画はみんなそうですが、「自分がチームのために出来ることを考える」みたいなことを描かれると面白くないわけがないよね。

一風変わったショートエピソード形式

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Ⓒ1/11 じゅういちぶんのいち

本作はコミックス一冊につき、三人分のエピソードが収録されています(後半になってくると一人当たりのエピソードが前編と後編に分かれてボリュームアップしたりするけど)。だからフォワードの佐藤くんの次のエピソードがゴールキーパーの鈴木くんの物語だったりするし、その次はマネージャーの高橋さんの話になったりします。

でもこれだと普通の短編集じゃないですか?本作はちょっと特殊な見せ方をしていて、過去のエピソードの主人公が別のエピソードの脇役として登場するんです。フォワードの佐藤くんのチームのゴールキーパーが鈴木くんだったり、そのチームのマネージャーが高橋さんだったりするのがめちゃくちゃ面白い!

これによって思い入れのあった選手が再び登場するとテンションが上がるし、思いがけないところで物語が一本の線になって繋がった瞬間は、言葉では言い表せない感動になります。

涙なしでは読むことができない人間ドラマ

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Ⓒ1/11 じゅういちぶんのいち

本作は困難に立ち向かっていく物語なので、お涙頂戴系のヒューマンドラマです。しかも割と大きく振りかぶって「泣かせまっせー」という空気すら感じます。ぶっちゃけ一昔前の熱血ドラマでも太刀打ちできないくらいのやつ。

悪く言えば「わざとらしい、あざとい、クサい」という表現になるんだけど、それを踏まえても普通に泣かされるよね。僕は「ケガを我慢して試合に出る」的な美談には耐性があって、むしろ冷めた目で見ちゃうんだけど、本作のような友情とか恋人愛、親子愛みたいなものには弱いのでめちゃくちゃ感情を揺さぶられました。

徐々に徐々に感動の土台を作っていくというよりは、感動させるまでの展開が急ピッチなのも大きい気がします。無駄な伏線がなくて、最低限の情報しかないっていうのかなぁ。ショートエピソードでテンポ良く楽しめるというのも大きなメリットです。

1/11(じゅういちぶんのいち) 全9巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

結末が予想がしやすいエピソードもあれば予期せぬ結末を迎えるエピソードもあって、読者によって当たりはずれが出るんじゃないかと思います。個人的にはほとんどのエピソードが楽しく読めました。

でもまぁこればっかりは仕方ないんだけど、どこかで見たような話が結構あるんですよね。個人的にはスラムダンクっぽいなーって感じるシーンとかもあったし、この辺は割と引っかかるって人もいるんじゃないかと思いました。

それでも本作はめちゃくちゃ感情を揺さぶってきます。熱血系じゃないし、そこまで熱量が高くないにもかかわらずです。絵の雰囲気も物語とマッチしていて、誰もが素敵な世界観に入り込めるでしょう。

サッカー漫画というよりはサッカーを題材にした人間ドラマっていう感じなので、特に戦略に重きを置いたサッカー漫画を求めている人にはおすすめできませんが、感動する話やちょっとイイ話系の漫画が読みたいという人であれば、サッカーに興味がなくてもおすすめです。

あとがき

野球部とか演劇部のエピソードもめちゃくちゃいいぞ。