僕が大学を出ていないからこその僻みかも分かりませんが、大学生の就活時期っていうのはマウンティングだらけという印象があります。現にその時点での大企業、平均年収みたいなもので会社の価値を計って、結果を残した人物こそが勝ち組みたいな。
本作は就活時期を舞台にした漫画です。今から15年以上前に連載開始された就活漫画ということで、今とは若干異なる社会情勢なんかも面白いし、この当時から変わってないものも勉強になるし…。就活に向けた準備という意味でも、就活を懐かしむという意味でも楽しめる一作と言っていいでしょう。
というわけで今回は、就活時期の葛藤や恋愛やあるあるがふんだんに詰まった「たくなび(全5巻完結済み)」を紹介します。
たくなびのあらすじ
東名学院大学・経営学部3年生の萩原拓は、映画好きでエキストラのバイト経験もある、東北出身の優しい青年。しかし、将来の目標もなく無気力な日々を過ごしていた…。そんなある日、旅行代理店への入社を目指して就活中の恋人・葉山茜から別れを告げられる。その後、茜との関係を取り戻すため、拓も真剣に就活に取り組むことに。そんな矢先、同じく就活に励む女子大生・照屋真希と出会い…!?
たくなびの見所をチェック!!
就活生あるある
僕の周りでも就活時期に破局したカップルが多数いたので、就活を機に別れるカップルは多数存在するんだろうなぁと。同時に不安に押しつぶされそうになるとか、周りと比較して自分に自信が持てなくなるとか…就活生あるあるがてんこ盛りです。
やっぱ就活時期は年収で会社の価値を計るのも分かります。でもこれって終活時期ならではのことじゃないかと思うんです。僕は転職も経験してるけど、28歳で年収が800万円ってことに対してすごいとは思っても、自分がそういう会社に入りたいとは思わなくなったので(まぁ僕自身が負け組って言ってしまえばそれまでですが)。
上記画像の女性が旅行代理店を第一志望にしようとしていることからも、世の中どう転ぶか分からないって部分があるじゃないですか?だからこそ自分なりに真剣になって考えるんだろうし、このときの経験が自分のバックボーンになるんだろうと。知らんけど。
就活時期になって誰もが抱くであろう葛藤
僕は大学を卒業していないので、大学生の就活事情みたいなものがあまり分からないんだけど、何か打ち込めるものを作ってこなかった人間の多くは「強みを作っておけばよかった」って思うはず。進路相談の時期になると急にボランティア始めたりとかする人も多かったし。
確かに超大手企業って入るのが難しいし、そういう人たちが新卒の平均収入をグンと上げてるんでしょう。ただ、それがずっと続くかどうかっていうのは疑問です。本作が15年以上前の作品だっていうことが面白いポイントで、電通はともかくフジテレビが持ち上げられてる時代ですから。
僕が学生時代の頃は「今の学生が就職したいって思ってる会社のほとんどは、10年後の同じランキングに名前入ってないよ」みたいなことを言われて、当時は何とも思ってなかったけど今は栄枯盛衰って言葉の意味を理解したというか…。
いずれにしても答えの出ないことで散々悩むっていうのは人間の性みたいな部分があり、それが顕著に出るのが大学生の就活時期ってことじゃないでしょうか。この葛藤は当事者なら共感できるだろうし、第三者なら自分なりの考えを持って読み進められるので面白いです…知らんけど。
主人公の成長とその答え合わせ
本作は2000年代前半に連載が始まった作品で、連載開始時期で言うと15年以上前になります。15年あったらそりゃ世の中は180°変わってもおかしくないと思うんですが、この時から変わったものもあれば変わらないものもあるわけで。
いずれにしても2000年代前半は不景気やら就職難だって騒がれ始めたくらい?2020年以降に「失われた20年」っていうワードを耳にするようになった気がするし、今や副業や転職が当たり前で終身雇用制度が崩れ始めているような気がしないでもないですから、本作中において「近い将来、日本はこうなる!」って言ってることが当たってたら面白くない?
本作は就活青春ストーリーっていうことで、ある程度の先読みがあります。例えば上記画像のシーンでは「本当の勝ち組になるには自分に力をつけるしかない」と言っていますが、これが今の時代とマッチしているかどうかっていう楽しみ方もできるんですよね。この楽しみ方は結構おすすめです。
たくなび 全5巻を読んだ感想・レビュー
最初はタクシーナビかなんかの略語で、タクシー会社に就職して結果を残すのかなぁって思ってたけど全然違いました。タクシー会社も業界全体で見れば懐は寂しいって聞くけど、その中のほんの一握りの一流は相当稼いでるみたいな話も聞くんで。
さて、本作は大学生の就活時期の葛藤を漫画にしたもので、そこに恋愛要素というか青春要素を組み込んだものになっています。今読むには若干絵が古い印象も受けるけど、内容は今読んでも面白いです。
個人的にはフジテレビや海上(マリーン)が持て囃されていたっていう時代背景が非常に面白くて、確かに今でも超が付くほどの大企業・団体ではあるんだけど、風向きが変わってきてるって感はあるじゃないですか?それはあぐらをかいていた結果なのか、あるいは世界情勢の変化なのか…。
今や日本企業で「ここに勤めていれば安泰」なんて企業は数えられるくらいしかないような気もするけど、そういう時代背景の移り変わりの対比が面白かったです。あと恋愛要素はよくわかりませんでした。
あとがき
消費税がまだ5%の時代。