個人的には「次生まれ変わるなら絶対に女がいい!」みたいなことは全くありませんし、男と女を比べてどうこうってことはあまり考えないようにしています。どっちにも有利な面があれば、どっちにも不利な面があるという考えです。
では、自分の性別が朝起きて変わっていることに気付いたら?さすがに大人になってからのそれはきついから、本作のように小学生低学年の時点で性別が変わったとしたら…それでもかなり受け入れがたいのではないかと。
本作は身体が男子から女子になってしまった男の子が、女の子として成長していく人間ドラマです。というわけで今回は「オレが私になるまで(連載中)」を紹介します。
オレが私になるまでのあらすじ
ある日、男の子が朝起きたら女の子になってしまいました。すぐ戻ると思いきや、どうやらその様子はありません。変化する自分のココロと周囲との認識のズレに戸惑いながら、すこしずつ成長していく物語です。
オレが私になるまでの見所をチェック!!
急に身体だけが男子→女子になってしまった小学生
本作の主人公は小学2年生の男子で絵に描いたような悪ガキというか…いわゆる「女子に対して迷惑をかけまくっているわんぱく系男子」の典型的なやつです。そんな彼が朝起きると、急に身体だけが女子になってしまうという突発性性転換症候群という病気にかかってしまいます。
まぁここに全くリアリティがないから最初は戸惑ってしまうんですが、読み進めていくほど非常に良くできている物語だと感心させられてしまうんですよね。この主人公の戸惑い方は、まるで「身体は女子なのに心は男子という人の気持ちに近いんじゃないか」と思わせられました。
僕は完全に「男子はズボン、女子はスカート」みたいな価値観で育っちゃったからアレだけど、これからは多様性を認める世の中になっていくんじゃないかって思うし、古い考えで固まってしまった僕のような読者がアップデート目的で手に取ってみるのもおすすめです。
一言では表現しきれない複雑な感情
自分に置き換えてみると非常に分かりやすいんですが、朝起きたら性別が変わっていたとして、これは人に打ち明けるべきことなのかどうかっていう戸惑いがあるじゃないですか?小学生の頃から自分の服を自分で買っている人ってあんまりいないと思うし。
僕は外見も中身も男だけど、それでも小学生の頃にブリーフからトランクスにしたいっていうのを母親に言うのは緊張しました。それがあるから突発的な病気で女子になったとは言え、自分からスカートはきたいとは言えない気持ちもすっげー分かります。分かるというか分かりそうな気がする。
そして外見が男子で中身が女子っていう人も、親による「男の子は~」っていう決めつけに悩んだろうなぁというのも痛いほど伝わってきました。何とも言い表しがたい魅力があって、色んな気付きが得られる作品です。
かつての自分と照らし合わせて主人公が思うこと
かつて男子だった頃に、好き勝手に振る舞っては女子に迷惑をかけていた主人公。そんな自分に似た男子を見ると黙っていられない性分と同時に、当時の自分の行いがいかに間違っていたかを痛感します。
この時はまだ小学生の頃だから、まだ男子と女子の間にそこまでの力の差はないんじゃないかって思うんだけど、早い人は小学生の高学年からガンガン成長していくし…。そんな男子がマジで向かってきたら女子は怖いだろうなぁ。
とは言え、女子側が非力を盾に暴力を振るうっていうのも間違ってると思うし、この辺はめちゃくちゃ難しい問題なんじゃないかと思います。「暴力はだめ」って言うのは簡単だけどね。この辺りの心理描写は非常に巧みで、読者が色んな角度からたくさんのことを考えさせられることになるでしょう。
オレが私になるまで 序盤を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
1巻と2巻を読んだ時点でのレビューです。まず心理描写が巧みなので「自分が次の日に性別が変わっていたら…」みたいなことを受け入れやすい雰囲気があると思いました。少なくとも色物の別世界と感じてしまうような温度差はありません。
そして男性読者の場合は「男子と女子の違いや女子の大変な部分」を目の当たりにするでしょう。全員が全員そうだとは言わないけど、僕がう〇こだのち〇こだの言って喜んでた時も女子は大変だったんだろうなぁってつくづく実感しました。
最近はトランスジェンダーとか性的マイノリティという言葉も聞くようになってきたし、そういうのに理解が足りないと感じている読者には特におすすめしたい作品です。良い意味で視野が広がるというか、もっと多様性があっていいんじゃないかって自然に思える良書だと思います。
あとがき
今の時代は「涙が出ちゃう男のくせに」もアウトなのか。