世の中には色んな奇病がありますが、個人的には「それがもし人間の生活に役立てられるものだったとしたら?」みたいなことを想像することがあります。原因の解明も含め、世の中の大勢の役に立てるためにその奇病の患者の人権は無視されてしまうのだろうか…とか。
もし僕と似たようなことを考えたことがあったり、あるいは今のを聞いてちょっと気になったという人なら本作は間違いなく楽しめる作品と言っていいでしょう。というわけで今回は、人体を藍に染める奇病がテーマのサスペンス「ブルーフォビア(全2巻完結済み)」を紹介します。
ブルーフォビア あらすじ
人体を藍に染める奇病、【藍病】。その病は患者の骨を蝕み、深海を閉じ込めたように美しく輝く【海鉱石】へと変え、その鉱石のもつ可能性は倫理観を失いし者どもを生んだ…。“ここにいてはいけない”【記憶を失った青年】と【藍病患者の少女】孤島脱出SFサスペンス
ブルーフォビアの見所をチェック!!
何らかの人体実験が行われているかのような不穏な空気
本作はとある青年が担架で運ばれているところから始まるんですが、この時点で既に不穏な空気を感じます。投与されている多くの薬剤だったり、扉に書かれているハザードマークだったり…少なくとも普通の病院ではありません。
何らかの人体実験が行われていることすら疑わしい状況からのスタートで、これから始めるサスペンスの序章としては先の展開が気になる感じに仕上がっています。そしてこの担架で運ばれている青年こそが主人公なんだけど、残念ながら記憶を失ってしまっているという…。
自分の正体も分からず、自分が今いる施設がどこなのかも分からず、逃げ出そうにも誰を信じていいかすら分からないという状況です。これが全2巻で結末に辿り着くわけですから、ストーリーの加速力はハンパ無いと言っていいでしょう。
謎の女性と施設から脱出するという展開
本作を大雑把に言うと「記憶喪失の青年が自分を助けてくれた女性と一緒に謎の施設を脱出できるかどうか」って感じの物語です。その過程で少しずつ記憶を取り戻していくことになり、自分の置かれている状況や真相が徐々に明かされていきます。
施設の人間は脱走されないように色々な妨害をしながら捕獲を試みるわけですが、向こうにも向こうの事情があって「下っ端には彼らが脱走したことすら伝えられない」みたいな背景が、まさに都合が悪いことを隠そうとする政府に似た雰囲気を感じられるでしょう。
謎の施設からどうやって脱出するのか、そして行動を共にしている女性の正体は誰なのか等、とにかく気になる展開が続くのも本作の見所の1つ。もったいぶらずに秘密が次々と明かされていく急展開にも注目です。
人体を藍に染める奇病
世の中にはまだまだ解明されていない謎を秘めた奇病が存在しますが、本作のテーマも奇病となっています。その内容についてはここでは明かさないので実際に本作を読んでみてください。
どんな効果があるかはさて置き、一言で言うなら「人体を藍に染める奇病」です。アルビノの方の被害を考えたら、単純に体が青くなるだけでもそれ相応の被害がありそうじゃないですか?でも本作ではそこから一歩踏み込んだ設定が用意されています。
ぶっちゃけこれまでに発明されてきた物の多くは、使い方次第です。ダイナマイトだって原子力だって毒にも薬にもなるわけで…。本作はそういう人間の業の深さみたいな部分にもスポットが当たっているので、全2巻とは思えないくらいに練りこまれたサスペンスと言っていいかもしれません。
ブルーフォビア 全2巻を読んだ感想・レビュー
個人的にサクッと終わるサスペンスが好きなので、本作はかなり好意的に読むことができました。全2巻なので終始駆け足気味で、もうちょっと詳しく描いてほしかった部分がないわけではないんだけど、かなり上手にまとめられているという印象です。
記憶喪失に始まり記憶を徐々に取り戻すっていう展開はありがちだけど鉄板。さらに正体不明の女の子に助けられ、この2人がどういう関係性なのかっていう部分だけでもサスペンスとしては十分なのに、ここに奇病の要素が入ってくるわけですからもう大満足。
「実際にこんな奇病があったら」っていう想像をしながら読むと、より深く本作を楽しむことができるでしょう。変に回収されなかった伏線なんかもないし、サクッと読めるサスペンス作品が読みたいという人にはおすすめしたい漫画です。
あとがき
読み終わったら「奇病」を検索しちゃうかも。
徐々に真相に迫るスリルが最高!面白くておすすめのミステリー、サスペンス漫画を紹介する