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「あげくの果てのカノン」を読んだ感想・レビュー

 

芸能人の人が不倫をすると、ありとあらゆるワイドショーが盛り上がりますよね。世間的にも関心を示す人が多いからなんだろうけど、個人的な意見を言わせてもらうとすれば控えめに言って「タヒねばいいのに」くらいに思ってます。

もちろん夫婦の関係性なんて十人十色なわけで、中には「別に他人と身体の関係を持っていい」っていう公認の夫婦もいるだろうから他人がとやかく言うことはないとも思うけど。

だから、まさか不倫愛みたいなものを描いた漫画に夢中にさせられるとは夢にも思わなかったです。ちょっとメルヘンチックな雰囲気があってこそだとは思うけど、この組み合わせは斬新すぎました。というわけで今回は、SF×不倫の異色の恋愛を描いた「あげくの果てのカノン(全5巻完結済み)」を紹介します。

 

 

あげくの果てのカノン あらすじ

押見修造(漫画家)、驚嘆。村田沙耶香(小説家)、絶賛。

高月(こうづき)カノン、23歳。高校時代からストーカー的に想いを寄せる境(さかい)先輩と、アルバイト先の喫茶店で再会を果たす。でも、いけない。先輩は世界の英雄で、そして奥さんのものだから。

SF×不倫の異色の恋愛を描くのは、弱冠24歳の俊英。ストーカー気質メンヘラ女子の痛すぎる恋に、共感の嵐です!

 

あげくの果てのカノンの見所をチェック!!

ストーカー気質の地味系メンヘラ女子が主人公

 

表紙を見てジャケ買いしたって人は衝撃を受けるかもしれないほど、まぁ表紙を見たイメージと中のキャラクターが全然違うもんだから、すっげー戸惑った人もいたんじゃないかと。ちなみに僕はそのタイプでした。

本作の主人公はずっと先輩に片思いをしていて、その時の恋を忘れることが出来なかった女の子です。ちなみに過去に一度、振られているとのこと。ここだけ聞いたらちょっとステキな恋物語のように聞こえるかもしれないけど、先輩の音声を録音したり、雑誌の切り抜きを集めたり…。ちょっとストーカー気質なところがあります。

まぁネタバレの範疇じゃないと思うから書きますが、本作はそんなストーカー&メンヘラ系女子がかつて大好きだった先輩(既婚者)と不倫する物語です。不倫した結果、誰が不幸になるのか…そして主人公は幸せになれるのか。主人公が幸せになれたとして、それを読者が祝福できるのか。色んな角度から結末を予想することで、2倍も3倍も楽しめる作品だと思います。

 

先輩はスーパーマン!?核となるSF的な要素

 

前項で書いたような単なる不倫劇だったとしたら、本作もここまで跳ねなかったんじゃないかと思う。本作の醍醐味の1つは「先輩が地球を守るスーパーマン的な存在であること」です。

もちろん戦いの中で怪我をしたり、腕を無くしたりということもしばしば。そして修繕されることで身体は元通りになるという設定です。治療というよりは修理に近いのかな。生身の人間というよりも人造人間的な存在に近いかも。

そして重要なのは、修繕をする毎に人格の一部が変わるということです。「お魚を綺麗に食べる彼が好き」みたいに思ってたら、次会った時には「魚?俺、肉しか食わねーし」みたいになってたりするんだけど、この要素が普通の恋愛漫画とは大きく違うポイントとなっています。

「先輩のことしか一生愛せない」と言っていて何なら略奪愛上等くらいの感じだったのに、その先輩の趣味趣向が少しずつ変わってったとしたらそれは先輩なの?見た目以外の全てが変わって、というか見た目的にも片腕が無くなったとかになって、それでも昔から好きだった先輩と一緒なの?

ここまで恋愛とSF要素がガッツリ噛んでいる作品って無理やり感とかあるんじゃないかと思ったんですけど、ちゃんと噛み合ってて面白いです。

 

不倫された側の存在や心情

 

不倫が原因で旦那と離婚したとするじゃないですか?奥さんからすれば旦那も憎いし、旦那と不倫している女も憎いっていう状況になるわけですけど…。「主人公が学生の頃からずっと好きで片思いしてきて、先輩がやっと振り向いてくれた」ってシチュエーションの恋愛漫画においても、主人公に対して胸糞悪くなる的な感覚って芽生えるんでしょうか。

個人的にこれは見せ方の問題だと思っていて、最初に「あげくの果てのカノンは不倫の物語だ」って聞かされて、もしかすると主人公に肩入れしてしまうんじゃないかって思ったりもしました。僕は本記事の冒頭で「パートナーを裏切って不倫するような奴は、控えめに言ってタヒねばいいのにくらいに思ってる」って書いたけど、それがブレるんじゃないかっていう不思議な感覚というか…。

 

もちろんSF的な要素が絡んできて、現実とは別物って部分は大きいものの「不倫された際の報復としてそれはちょっと…」とか思ってしまうんじゃないか的な不安ですよね。…タヒねばいいのにとか思ってる奴の感情じゃないっていう。

本作で描かれている恋愛が美しいかどうかはさておき、誰が幸せになって誰が不幸になるのか。不倫した側が美談として語る物語に出てくる、不倫された側の人間はどのような存在のように見えるのか、ぜひ注目してもらえればと思います。

 

あげくの果てのカノン 全5巻を読んだ感想・レビュー

最初は友人から「不倫愛とSFを題材にした面白い漫画があるよ」って聞かされて、当時発売したてのコミックス1巻を読んだんだけど、正直言ってその時はハマらなかったんですよね。それが時間が経ってから二度目に挑戦してみたら全巻一気読みです。

僕の場合は「ジャケット詐欺にあった!」みたいな感覚があったし、そもそも不倫がどうとか疲れるような気がしてそういう意識が邪魔してたんだと思います。最初こそちょっと重たい腰を上げて読み始めたみたいなところがあったけど、ハマりだしたら一気でしたから。

 

単純に「先輩が魔の手から地球を守るヒーロー」ってだけじゃなく、その過程で人格が変わっていくって部分も面白いと思ったし、そういう部分があったから不倫愛に対しても嫌悪感なく読めたような気がします。普通の不倫愛だったとしたらやった方が死ぬほど不幸になるか、あるいは不倫される側にそれ相応の理由がないと納得できないような気がするもんね。そういう意味では読了後のモヤモヤ感みたいなものもなかったし上手く描かれていたと思います。

あとは「あげくの果てのカノン」っていうタイトルにも思う部分が出てきたりとかして、全5巻という決して長くないボリュームの中に壮大なロマンを感じました。「どうせ不倫愛でしょ?」って思って読まず嫌いをしている人、とりあえず2巻まで読んでみて欲しいです。

 

あとがき

やってることはゲスいんだけど、読了感が変に爽やかで不思議。

 

 

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