漫画みたいな展開ってあるじゃないですか?それこそ学校に向かう途中の曲がり角で異性にぶつかる的な展開もそうだし、戦争中に「この戦争が終わったら…」みたいなことを言い出したりとか。
そういうのがなければ漫画として成立しないかって言ったらそうじゃないみたいです。本作で描かれているのは誰にでもある日常で、それが見方によって素敵なエピソードに変わっているんです。というわけで今回は、ありふれた日常が素敵に見える青春漫画「たそがれメモランダム(全2巻完結済み)」を紹介します。
たそがれメモランダム あらすじ
女子高生の高取エリ。彼女の放課後は、ちょっとした謎とドラマに満ちている。
・とあるカップルは何故話をしないのか?
・お堅い先生の密かな楽しみは?
・そそくさと帰る同級生の秘密
・美術室のヴィーナス像の謎
・踏切に出るというユーレイの噂etc...誰もが持っている秘密、意外な一面を垣間見る――甘く少しほろ苦い青春ショートストーリー!!
たそがれメモランダムの見所をチェック!!
日常の「なぜ?」が素敵エピソードに早変わり
僕が本作を手に取るキッカケになったのが「とあるカップルは何故話をしないのか?」というあらすじです。単純に「なんでだろう?」って思ったしkindleレビューも好評だったので購入したんだけど、非常に素敵なショートエピソードが多く収録されている作品でした。
ぶっちゃけショートショートのような裏切りはないし、読み始めた人の多くが「こうじゃないか?」って予想したことが大体当たるような展開が多いんだけど、それで面白いっていうのが本作のすごいところだと思います。
「日常のなぜ?」が素敵なエピソードに変わっている様子が大きな見応えありです。似たような経験は僕にもあったけど、それらをこういう視点で捉えられていたらもっと世界が鮮やかに見えるだろうなぁという感じ。
読者に対して問いかけと余韻を残す爽やかな読了感
本作はサザエさんみたいな感じで色んな日常ショートエピソードが収録されているんだけど、その終わり方がまぁ不思議で魅力的なんです。なんて形容すればいいか分からないんですが「読んでいて何かを考えさせられる」というか、すべてを読者に伝えずに余韻を残している感じというか。
この読了感が非常に爽やかで魅力的なんですよね。たぶんこの読了感について読者同士で語り合ったらめちゃくちゃ熱いと思う。何なら本作内のエピソードで「この時、作者が伝えたかったことを50文字以内で簡潔に答えなさい」みたいなことをやってみても面白いんじゃないかと思います。
個人的にはこの読了感の爽やかさはあだち充作品に匹敵すると思っていて、とにかく色んなことを考えさせられました。そういう意味では全2巻のボリューム以上の満足感も得られるはずです。
果たして恋の行方は?
本作の初期設定として、主人公が学校の先生に恋をしているというものがあります。まぁ現実によくある話だろうし、実際にそれが問題になってニュースになってるのも見たり聞いたりしてるわけですが…。
そういう女子生徒と男性教師の間の恋物語みたいなものを漫画にしようと思ったら、まぁ最近の作品の傾向として「私が卒業するまで待ってくれますか?」的な展開が多いように思います(特に少女漫画の類は)。ほんで卒業式にグッドエンドを迎える的な。
そういう展開に対して見飽きた感すらある読者の1人としては、普通なら「またきたよコレ」くらいの感じなんだけど、本作の場合はその設定を見せつけられても「この恋の結末はどうなるんだろう?」と気になって仕方なかったです。そんなありきたりな結末にはならんだろうという期待感もあるし、それに応えてくれる青春漫画だと思います。尚、結末はご自身で確認してみてください。
たそがれメモランダム コミックス全2巻を読んだ感想・レビュー
すごく素敵なエピソードがたくさん詰まった全2巻でした。どこにでもありそうな日常を切り取って漫画にしているだけなんだけど、見せ方がめちゃくちゃ上手くて思わず夢中にさせられてしまいます。
本作を読むと「青春漫画を面白くするのに友人と派手に喧嘩する必要もなければ、激しくフラれたりとか友達から仲間外れにされたりとかする必要ってないんだな」って気付きます。そんくらいありふれた日常です。
デメリットをあえて言うとすれば全2巻で終わってしまうことでしょうか。このスタイルの漫画ならいつまでも読み続けることができるし、恐らくネタ切れもないんじゃないかと思います。もっと読んでいたかったと思うくらいに魅力的な青春漫画です。
あとがき
色んな感情がすべて詰まった全2巻。