歴史漫画が好きな身としては、色んな歴史上の人物にスポットを当ててほしいと思っているので、本作の人選はまさにツボでした。ぶっちゃけ漫画のテーマを決めるときって「最初の段階でいかに興味を持ってもらうか」も重要だと思うんで、歴史漫画なら絶対に有名どころの人物を採用した方が有利だと思ってたので。
まぁそれだと今度は「また信長かよ、また新選組かよ」みたいになるんだろうけど。ちなみに本作は武市半平太を主役としているタイムスリップ系漫画です。というわけで今回は、笑いあり感動ありの侍タイムスリップ「サムライせんせい(全8巻)」を紹介します。
サムライせんせいのあらすじ
ちょんまげ頭に着物で颯爽闊歩するぼくらの先生は、お侍。なぜだか分からないけど、幕末からやってきたらしい？見慣れぬ文明に右往左往する先生は、町の皆さんの好奇の目に晒されて……。笑いあり、感動ありの侍タイムスリップ！
サムライせんせいの見所をチェック!!
武市半平太が主人公の歴史系タイムスリップ漫画
日本史を題材にしたタイムスリップ系漫画は決して少なくありません。現代から過去に行くパターンもあれば、過去から現代に来るパターンもあるんだけど、いずれにしても題材になる時代や歴史上の人物の相場は決まっています。
…が、本作の主人公は武市半平太ということで、個人的には相当マニアックなところを突いてきたなぁという印象を受けました。いわゆる尊王攘夷の時代の人で、ぶっちゃけ「武市半平太を出すよりは坂本竜馬の方がウケは良かったんじゃないの!?」とかも思ったんだけど、まぁこの話は置いといて…結果から言うとこの人選がなかなか良かったです。
まぁ史実に基づいた歴史漫画でもなければ、その題材になっている人物を知っているかどうかで面白さは変わってくると思います。でも本作は武市半平太に関する解説が入ってるうえに、回想シーンなんかも上手く使われているのでその辺は心配ありません。
150年前の人間が現代とのギャップに驚く様子
タイムスリップ系漫画のお約束と言えばこちら。時代のギャップ、文明の進化に驚く一部始終です。まず一般人の服装とか身なりに驚き、次いで電線やら車やら目につくもの全てに驚かされる展開が待っています。
で、一応こういうお約束的なコメディー要素はあるんだけど、本作は基本的には真面目路線というかそこまで過剰にコメディーチックな展開はありません。個人的にはこれが新鮮だと思いました。
主人公の武市半平太も侍としての慎ましさを持っているという感じでもなく、割と簡単に一般市民と揉めたりするし、すごく人間味があるような気がします。こういう漫画で現代に来る武士とか侍って、信長とかでもなければそれなりに謙虚な奴が多いような気がしたんだけどなぁ。
子供塾のお手伝いをするサムライ
そして本作のタイトルが「サムライせんせい」である所以が、お世話になっている所のお手伝いの一環として子供塾のお手伝いをすることに起因します。読むまでは勝手に「タイムスリップしてきた侍が中学校とか高校で歴史の授業をする的なコメディー」とかだと思ってたけど、面白いくらい全然違いました。
侍としてそこまで器の広い感じでもない様子が伺えて、個人的には人間味があって良かったと思ったし、バカ真面目な感じも少しほっこりできる要素だったと思います。子供たちとの関係性もありきたりな感じじゃなくて自然な感じです。
そしてサムライせんせいとしての日常を描いていくコメディー漫画かと思ったら、これもまた微妙に違うんですよね。個人的には「これってサムライせんせいっていうタイトルは適切なのか？」って思ったくらい、先生としての武市半平太の物語ではないような気がしました。
もちろんそれは面白くないという意味ではないし、少なくとも僕は小学生たちとのコメディーよりも本作みたいな感じの方が大好きです。
サムライせんせいに興味を持つ謎の人物
本作の一番注目すべき見所は、主人公と様々な人間たちが出会っていく部分にあります。最初は黒ギャルに対して山賊って言うくらいにして、町では侍の服装なんかを馬鹿にする人が出てきたりもするんだけど、そういう人たちと次第に打ち解けていく感じって言うのかな。この辺は結構ハートフルだったりします。
あとは主人公に興味を持って近づいてくるある男の存在です。ぶっちゃけこれは「そういうことか！」って思わされたし、本作がめちゃくちゃ面白くなっていく要因と言っていいでしょう。ここは多くは語らないので、ぜひご自身の目で確認してもらえたらと思います。
サムライせんせい 全8巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
あんまり武市半平太を知らない僕が読んでも、めちゃくちゃ楽しめるタイムスリップ系漫画でした。コメディー要素もあるっちゃあるけど、それは掴みの部分だけって感じかもしれません。
内容はかなり真面目なヒューマンドラマと言っていいくらいで、主人公の現在と過去の人間関係みたいなものにスポットが当たっているので、笑えると言うよりは「勉強になる、考えさせられる」と言った方が適切じゃないかと思います。
とりあえず本作を読み終わった後は、武市半平太がどんな人なのかや武市半平太と接点がある人を軒並み調べたりしたくなるはず。あまりありきたりという感じのしないタイムスリップ系漫画なので、そういう意味でも夢中にさせられる作品と言っていいでしょう。歴史漫画が好きな人や時代劇漫画が好きな人におすすめです。
本作は2017年に実写映画化されていて、市原隼人さんや忍成修吾さんが出演しています。
あとがき
ふたゝびと 返らぬ歳を はかなくも 今は惜しまぬ 身となりにけり。
