恐らくタイトルだけじゃ手に取らなかったと思います。吉良吉影じゃねーんだからっつって。「吉良吉影は静かに暮らしたい」って言われたら、名前の珍しさもあってちょっと読んでみようかなって思うかもしれないけど、この期に及んでスズキって…。
なんてことを思いながらも手にとってみたら、普通に面白かったよね。ヒューマンドラマチックなサスペンスというか、ずっと結末が気になる感じがたまらないです。
というわけで今回は、訳あり母子と隣室に住む自称・殺し屋の物語「スズキさんはただ静かに暮らしたい(全3巻完結済み)」を紹介します。
スズキさんはただ静かに暮らしたい あらすじ
仁輔は新しい学校に転校してきた10歳の小学生だ。家に帰ると、母親が作って行ってくれた料理をレンジで温め、テレビを見ながら1人で食べる…という生活を送っている。
母親のひとみは風俗で働き、いつも夜遅くに帰ってくる。その日、ひとみが帰ってきても仁輔はまだ起きていて、2人は久々に一緒にゲームをして遊んだ。
深夜2時、2人でワイワイ盛り上がっていると家のインターホンが鳴る。ひとみは「まさか」と一瞬焦りを見せたが、ドアの前に立っていたのは隣人のスズキという若い女だった。
スズキさんはただ静かに暮らしたいの見所をチェック!!
家族は何をやらかしたのか
最初の1、2ページは仲睦まじい3人家族の旅行か何かのシーンから始まるのに、その次のページでは既に家庭崩壊した後というか、幼い息子を残したまま母親は風俗で働いてるっぽいし、父親の姿は全く見えないってことで「何かあった感」がすごいです。
これは物語の序盤から中盤にかけて少しずつ明かされていくんだけど、この時点では「え、そんなことになってたの!?」っていう感じなんで、いわゆる「ありきたりな物語」では無いと思う。
普通は「父親の会社が倒産→借金のカタに父親が殺された」とかじゃないですか?そういうやつじゃないです。この一家が巻き込まれた壮絶な物語は、一言で言うと「運が悪かった」だけど、本人たちからすればそんな簡単には割り切れないよなぁ…。
自称・殺し屋と少年の不思議な生活
ちょっとした話の流れで仁輔とスズキが一緒に暮らすことになるんだけど、まぁ明らかに子供嫌いそうな若い女と純真無垢な少年の生活って、どこか無機質なんだけど何故かホッとする的な部分があります。
本作のタイトルにもあるように、スズキは「ただ静かに暮らしたい」という人間性なんで、言ってしまえば「子供と一緒に暮らすなんて百害あって一利なし」くらいの感じだと思うんです。
そんな子供のために今まで作ったことがない料理を作ってみたり、一生に寝たり…。情が移るのは容易に想像できます。スズキが少しずつ変わっていくのと同時に、殺し屋を自称するスズキと接していくことで仁輔もまた変わっていく…という感じ。良い方向に変わるんであればいいけど、果たしてそれは本当に良い変化なのか…っていう部分に注目して欲しいと思います。
スズキさんはただ静かに暮らしたい 全3巻を読んだ感想・レビュー
正直な感想としては「想像以上にスケールの大きな物語だった」という感想です。少なくともタイトルの「スズキさんはただ静かに暮らしたい」というワードからは、全く想像がつかないほどのサスペンス要素、ヒューマンドラマがありました。
まぁサスペンス要素が多々あるんで、あんまりネタバレせずに読んで欲しいところです。個人的には「全3巻でサクッと読めるし、絵も綺麗だし、謎要素が解き明かされていく爽快感もあるし、感情も揺さぶられるし、とりあえず最高」って感じ。
まぁ涙もろくてすぐ泣いてしまうような僕が泣かなかったってことは、感動するはするけど泣くほどじゃないんだろうなぁ。家族愛とか親子愛ならすぐ泣いちゃうんだけど本作は別に全然平気だったし…。
仁輔に訪れた出来事とスズキの過去にある共通点とか、散りばめられた伏線をちゃんと全3巻で回収したのもお見事。終わり方も綺麗だし、もうちょっと読みたかった感も少しあって完ぺきな構成だったと思います。
あとがき
働かずに楽して暮らしたい。
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