マイナーって言ったら失礼かもしれないけど、戦国武将にスポットを当てた漫画を描こうと思ったときに「誰それ?」って言われてしまうような武将を選択する時点で、本作は非常に稀有な歴史漫画と言えるでしょう。
歴史とか戦国時代に詳しい人なら知ってるだろうけど、僕みたいな信長の野望をちょっとやってますってくらいの知識だと「名前くらいは知ってるけど、詳しくは知らない」という立ち位置の仙石秀久。この仙石と戦国が掛かってのセンゴクです。
というわけで今回は、仙石秀久の活躍(~小谷城の戦い)を描いた歴史漫画「センゴク(全15巻完結済み)」を紹介します。
センゴク あらすじ
時は戦国時代。美濃(みの)・斉藤家の家臣、仙石権兵衛秀久(せんごくごんべえひでひさ)=センゴクは、落城寸前の稲葉山城にいた。敵は覇王・織田上総介信長(おだかずさのすけのぶなが)!! 強大な敵に茫然自失となるが、幼なじみ・侍女のお蝶とのある約束を守るために、織田軍団に囲まれた城から決死の脱出を試みるセンゴク。果たして生き残れることはできるのか!?
センゴクの見所をチェック!!
信長じゃなく、秀吉でもない主人公
信長、秀吉、家康あたりを題材にした歴史漫画はよく見ます。あとは宮本武蔵とか前田慶次あたりも王道になるのかな。
もし自分が漫画家だったとして、戦国時代を題材に漫画を描こうと思った場合、まぁ多少は「他作品と差別化したい」って感情もあると思います。だから信長とか秀吉をメインに描かないって気持ちも分かるんだけど、はっきり言って「そこ!?」っていうチョイスに驚きを禁じえません。
本作の主人公は仙石権兵衛秀久。ぶっちゃけ歴史が好きな人じゃなければ「誰それ?」くらいの武将じゃないかと。少なくとも僕が受けてきた学校教育で仙石秀久の名前を聞くことはなかったし、僕の中では「信長の野望をやってると出てくる、そこそこ武力が高い武将」くらいのイメージしかありませんでした。
信長の配下…の秀吉の更に配下…の仙石秀久の目線から描かれている戦国時代は、数々の歴史漫画を読んできた人の目にも新鮮に映るのではないでしょうか。
割と史実に基づいた(と思われる)作品
本作を読んでいて目に付くのは多くの注釈です。眉唾エピソードのように思えるシーンや解説がある時、必ずと言っていいほど引用した文献などが記載されていて、読者に配慮されています。
例えば「秀吉には指が6本あった」とか。あとは今日語られている歴史は勝者が語ったものであって、歴史の勉強をするうえでも逐一「他説あり」とは言わないじゃないですか?本作では大筋のストーリーは作者の意向で進行しながらも、確実性が怪しい部分について「こういう説もありますけどねー」みたいに触れてくれています。
そういう手法で描かれているので、少しでも興味を持ったら「ちょっと自分でも調べてみようかな」ってなるし、なにより歴史に興味が出てくるんですよね。読んでて勉強になる歴史漫画です。
脚色多め(と思われる)恋愛要素
本作の主たるテーマの1つが、仙石秀久の恋愛観というか恋模様です。当時は政略結婚なんかもあって、自由に恋愛なんか出来なかった時代と思われます。そんな中、好きな女性と離れ離れになってしまったりする様子が描かれていて、これがアクセントになっているんですよね。
ぶっちゃけ歴史漫画が読みたい人は、戦いのシーンとか策略的な部分に魅力を感じる人が多いんじゃないかと。僕もそっち派なんだけど、本作の恋愛要素には一切の蛇足感がないし、素直に読めます。
恋愛はお互いの気持ちという部分なんで、読んでいて「それ本当か?」と言いたくなるシーンがほとんどですが、個人的には全然あり。脚色強めだとは思うけど、史実とのバランスが取れていると思いました。
センゴク コミックス全15巻を読んだ感想・レビュー
月並みですが、信長じゃなくて「織田弾正忠信長」、秀吉じゃなくて「木下藤吉郎秀吉」っていうのが良いです。なんか読んでて賢くなった感じっていうんでしょうか。
冗談はさておき、日本史の教科書でサラッと学んだことが仙石秀久目線で詳しく描かれているので、戦国時代に興味を持った人が読むには最適だと思います。
僕が知っている戦国時代を描いた漫画の多くは、戦闘能力の高い武将が槍とか刀をブン回して無双するって感じの作品が多いんだけど、本作は「弓最強」みたいなスタンスが強いんで、よくある感じの歴史漫画とは一線を画していると言っていいでしょう。
ちなみに本作で描かれているのは、斎藤家臣だった仙石秀久が織田家中に迎え入れられてからの奮闘記。1573年の小谷城の戦いによる浅井家の滅亡までです。続編には「センゴク 天正記」などがあり、本作が楽しめたのならこちらもおすすめです。
あとがき
本作を読んでから信長の野望をプレイしたら、確実に仙石秀久を登用したくなる。