ちょっと不謹慎かもしれないけど未解決事件とかが大好きで、冤罪の可能性のある事件に関しても、自分なりにあれこれ考えることがあります。
もちろん警察の方がしっかりと調査しているわけで、表に出てこない情報も沢山あるということを踏まえると、被害者がいるような事件に対してあれこれ邪推するわけにはいかないだろうということで、完全に自分の中のものとしていますが…。
少なくとも「いくら死刑判決が下ったからと言って、確固たる証拠もない中、更には容疑者本人が認めていないものをそうだと決めつけるのは良くないのでは?」と思っています。
そういう時に必ずと言っていいほど「タイムマシンがあればなぁ」と思わずにはいられません。本作は、そんな思いをカタチにした作品です。というわけで今回は、過去に戻って父親が犯した殺人事件の真相を探る「テセウスの船(全10巻完結済み)」を紹介します。
テセウスの船 あらすじ
1989年6月24日、北海道・音臼村の小学校で、児童含む21人が毒殺された。逮捕されたのは、村の警察官だった佐野文吾。28年後、佐野の息子・田村心は、死刑判決を受けてなお一貫して無罪を主張する父親に冤罪の可能性を感じ、独自に調査を始める。事件現場を訪れた心は、突如発生した濃霧に包まれ、気付くと1989年にタイムスリップしていた。時空を超えて「真実」と対峙する、本格クライムサスペンス、開幕。
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生まれて初めて会った、若かりし頃の父親とは
本作の主人公にとっては、母親のお腹にいる時に殺人犯として逮捕された父親という存在は、恨みの対象になっていることが想像に容易いです。どこへ行っても殺人犯の息子というレッテルを貼られ、会ったこともない奴のせいで自分の人生が台無しになっているわけですから。
でも、そんな父親が逮捕される前の時間にタイムスリップし、初めて若かりし頃の父親と対峙した時の心境って、なんだかドキドキしてしまいます(僕の父親は別に逮捕とかされてないけど、タイムスリップして若い頃の親父に会うと思ったら、やっぱドキドキするもんね)。
そしてそこで見た父親が、本当にろくでもない男だったらまぁいいんだけど、逆に「本当にこの人が殺人とかするのかな?」と思えるような人物だった場合、まぁ真相を探りたくなるのは息子として当然なわけで…。じゃあ真犯人を見つけて、父親が逮捕されない未来にできれば、主人公の運命も変わるんでしょうか。この辺りは大きな見所と言えます。
タイムスリップ後の行動による変化
主人公の父親が逮捕されるキッカケになった大量殺人事件が起こる前に、幾つかの不審な事件が起きていたことも主人公は知っています。例えば「〇月△日、××ちゃんが除草剤を飲んで死亡」というような事件を防ぐには、その子の家にある除草剤を取り除くことが有効なのでは?…と、普通の人なら誰しもが思いつくのではないかと。
ただ、ここで除草剤をパクったのでは、その場面を目撃されたら容疑者の1人になってしまうだろうし、捨てる場所にも困るはず。ただでさえ「突如現れた身元不明の人間」ということで、主人公は怪しまれるポジションなわけですから。
とは言っても、死ぬことが分かっている人間、事故が起きるタイミングを知っているのであれば、知らないふりはできないのが普通だと思います。未来を知っている主人公が、どのような形で過去に干渉していくのか必見です。
事件の真相、犯人の正体は?
- 真犯人がいる
- 冤罪ではなく父親が犯人
- 過去に来たことで自分が犯人に仕立て上げられてしまう
本作の結末を予想するにあたって、大きく分けて3つの筋道が予想されます。
まずは王道の「真犯人がいる」というパターン。これは父親が濡れ衣を着せられているということになり、犯人はのうのうと暮らしているということです。最近になっても冤罪の可能性が残っている死刑囚の方もいますし、裁判のやり直しで無罪になった方もいます。人々の関心はここにあるんじゃないかと思うので、とりあえずこれが本命。
もう1つは、やはり犯人は父親であるというパターン。主人公は生まれた時から既に殺人犯の息子というレッテルを貼られており、本当に父親が犯人なのかどうかを詮索することすら許されていませんでした。
つまり「本当に父親が犯人なのだろうか?」という疑いが強い状態から入ることになります。僕ら読者は「これで父親が本当に犯人なわけがない」というような色眼鏡で見てしまいがちですが、主人公にとっては何が本当か判断しかねる状況です。
普通は「家族の言うことを信じる」という展開もありそうだけど、主人公にとっては血のつながりはあっても実際に会ったこともない人物のことですからね。この辺りの疑心暗鬼も非常に良いスパイスになりそうです。
最後は、主人公が真犯人に仕立て上げられてしまうパターン。この場合、父親も冤罪だったということになりますが、そもそも冤罪が生まれてしまってる時点で、確固たる証拠は無かったということになると思います。
そんな中、どこで何の事件が起こるか分かっている主人公が、あれこれ嗅ぎまわっている状況は、地元住民にとって不審な行動以外の何物でもないでしょう。
下手すりゃ父親に疑われてジ・エンドという展開すらもありそう。いずれにしてもハラハラ、ドキドキの展開が待っていることは間違いありません。
テセウスの船を読んだ感想・レビュー
コミックス1巻を読んだ感想・レビュー
冤罪で死刑になった人って山ほどいるんだろうなぁと思う一方で、何が正解なのか分からなくなることってあるじゃないですか?たぶんGoogleやYouTubeで「冤罪事件」って検索すれば、それだけでもつい最近の事件が幾つも出てくると思います。本作もそれに近いわけで…。
唯一、現実と違うのが「遺族の1人が過去にタイムスリップして真相が探れる」という点。未解決事件なんかでも「過去に戻って真相を知りたい」って考えたことがある人なら、これ以上ないテーマだと思う。
過去にタイムスリップすることで、殺人犯(本人は犯行を認めていない)である自分の父親と対面するっていうドキドキ感は、引き込まれないわけがないです。本当に父親が殺人を犯していないのであれば、いったい誰が何のためにやったのか。続きが気になって仕方ありません。
コミックス全巻を読んだ感想・レビュー
個人的には「期待以上ではなかった」というのが正直な感想です。もちろん面白い作品ではあると思います。でも「途中が超面白かったんだから、もっと面白くできたのでは?」というのが正直なところ。
まず事件の真相について「え、そんな感じなの?」と思ってしまった部分。これまでの伏線が面白すぎたこともあってか、結末部分に物足りなさを感じてしまいました。
で、真相を追求するにつれて「なぜ父親が逮捕されたのか」という部分も明らかになってくるんだけど、何度読み返してもここが雑に感じてしまうんですよね。「警察の捜査ってそんなに杜撰なの?」という感じ。主人公の父親に対する私怨とか、警察のメンツを守るために彼を死刑にしようと目論んでいる黒幕みたいなのがいれば、まだそれも理解できるんだけど…。
トータルで考えれば、文句なしに面白かったです。ただ、個人的には最後の結末はもうちょっと違うカタチの方が良かったんじゃないかと思うし、主人公の父親は冤罪で死刑になりかけてるんだから、その辺も掘り下げて欲しかった感はありました。
未来から過去にタイムスリップしたと言っても、それを誰かれ構わず馬鹿正直に説明できるわけでもなく、過去の事件をあれこれ完璧に防ぐっていう展開じゃなかったのは見応えがあったと思います。
あとがき
若い頃の自分の親に会うって、なんかドキドキしそう。
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