短編集とか全1巻で完結するような読みやすい作品が好きなんだけど、その中から今回は世間的にもメチャクチャ評価の高い1冊を持ってきました。
「それでも町は廻っている」「外天楼」などでも知られる石黒正数氏の人気作です。青春漫画や日常漫画、そして女子大生が好きな人には是非押さえていただきたいと思います。
というわけで今回は、ぐるぐる廻る青春のアレやコレやを描いた大学生日常ストーリー「ネムルバカ(全1巻完結済み)」を紹介します。
ネムルバカ あらすじ
本作は、大学の女子寮で同部屋の先輩と後輩が繰り広げる日常青春漫画である。バンド活動に打ち込む金欠な先輩と、特に夢中になれるものがなくアルバイトに打ち込む後輩。
どこにでもありふれている青春の1ページを、石黒正数が再現した。ぐるぐる廻る目まぐるしい日常というわけでもなければ、決してスローライフな日常というわけでもない。今しかないその一瞬を懸命に生きている女子大生の姿は必見の価値あり!
ネムルバカの登場人物
鯨井 ルカ
本作の主人公にして、柚実の先輩。インディーズバンドを結成している。
少し破天荒で無計画な一面を持っているが、柚実からの信頼は厚い。
入巣 柚実
本作、2人目の主人公にしてルカの後輩。古本屋でアルバイトをしている。
ルカと比較すると常識人のようにも思えるが、実は柚実の方が厄介な存在だったりもする。
ネムルバカの見所をチェック!!
仲睦まじい先輩と後輩の仲
後輩が先輩をちょっとイジれるっていう心地良い関係性って、大学生ならではだと思うんです。
中学~高校までも一部はそうなんだろうけど、この辺りはやっぱ明確に年齢が違ってくることが多いし、どっちかっていうと体育会系のしっかりした上下関係が根強いんじゃないかと。そういう意味でも、見ていて非常に微笑ましい先輩と後輩の関係性が見て取れます。
例えば「自分が先に食べてた海老の尻尾をゴミ箱から拾ってきて入れる」なんて行為は、心を許している相手にしかできないじゃないですか?仮にお笑いの世界だったとしても、笑ってすまされる暴挙じゃないはず。それをツッコミ1つで済ませる関係性の良さ…心地良いですね。
ネムルバカの由来
本作のタイトルにもなっている「ネムルバカ」ですが、これは作中に登場する曲の名前に由来します。じゃあその曲のタイトルになった「ネムルバカ」の由来は一体なんなんでしょうか。この理由が何とも言えない緩さを醸し出していて、この空気感こそが本作の魅力なんじゃないかと思います。
曲にしろ、漫画にしろ。タイトルって重要だとは思いながらも、肝心の作者が適当に決めている場合も少なくありません。個人的に驚いたのが「HUNTER×HUNTER」ね。
あれは完全に「息子が親父を追いかける=ハンターがハンターをハントする=HUNTER×HUNTER」だと思ってたから。まさかダウンタウンの「なんで2回言うねん!」からきたものだとは…。こんな感じの心地良さに溢れているのが本作「ネムルバカ」です。
一風変わった終着点
もし「ミュージシャンを目指す若者の姿」を題材にしたストーリーを書くのであれば、大きく分けて…。
- 夢が叶うパターン
- 最後の最後で夢を掴めなかったけど、諦めずに再出発するパターン
- これからも夢を追い続けるパターン
大体このあたりが相場なんじゃないかと思います。で、本作はどれにも該当せず、一風変わった終着点を見せてくれました。良く言えば余韻のある感じ、悪く言えばスッキリしないという感じ。
でも、これこそが大学生くらいの青春時代を表現するのにベストな表現なのではないかと。漫画の登場人物ってだけで、中身はそのへんの大学生と変わらない等身大の感じが最高です。
全1巻を読んだ感想
石黒正数氏は、ネムルバカ以外にも外天楼とか短編集を数多く出されていて、緩い雰囲気の中にも色んな驚きを詰め込んでくれる漫画家さんだと思っています。
本作もまさにそんな感じ。ファンも喜ぶ納得の仕上がりになってると思うし、これからファンになるであろう人たちの入口にも相応しい作品だと思いました。やっぱ完成されていない青春時代っていうのは、いつ見てもいいものですね。
「早く大人になりたい」と考える十代の読者が読んでも、はたまた本作の登場人物と同じくらいの年代の読者が読んでも、もちろん20歳そこらを既に通り過ぎた人でも…。
それぞれによって感じ方が変わってくる作品の代表格だと言っても過言ではありません。青春時代を描いた日常漫画が好きな人には、文句無しにおすすめします。
あとがき
寝る時に目も口も開けている僕は完全に眠る馬鹿。