現実離れしたファンタジー寄りの作品においても、想像し得るテーマかどうかというポイントは重要だと思います。例えば「死なない人間がいたら?」という設定は、多くの読者を惹きつけるのではないでしょうか。
本作はまさにそんな設定の漫画作品です。死なない人間がいる、でもそれが自分に該当するかどうかは死んでみないと分からないし、もし死なない人間だったとしてもそれが幸せかどうかは限らないっていうね。
差別や好奇の目にさらされて、最終的に人間や軍隊とのバトルに発展することを考えれば、もしかしたら「あの時、普通に死んだほうが幸せだった」と思うのかもしれません。というわけで今回は、死なない人間が主役のダークファンタジー「亜人(全17巻完結済み)」を紹介します。
亜人 あらすじ
「亜人」と呼ばれるその生物は「死なない」。高校生・永井圭はある日、交通事故で死ぬが、その直後に生き返った。それは、彼が亜人であり、人間ではないことを意味する。圭をとりまく環境は一変した。彼は人間たちから逃げ惑うことになる。友人のカイは、怯える圭を助けるために駆けつけ、ふたりで人里を離れて山の中に逃げ込んだ。そんな彼に人間と敵対する亜人たちが接触してきた。――彼は何と戦い、誰と生きればいいんだろう?
亜人の見所をチェック!!
亜人かどうかは死んでみて初めて分かる
亜人かどうかというのは血液型みたいに簡単に分かるものではなく、実際に死んでしまうほどの出来事に遭遇し、それでも死ななかったという場合に初めて発覚することです。1番最初に発覚した例は、アフリカの戦場と言われています。
それから確認されているだけで世界に50人弱の例があるそうですが、亜人ということが発覚しただけで研究対象になったり、今まで仲が良かった人たちですら目の色が変わったり…。とりあえず死を超越した存在でありながらも、普通の人間よりも生きにくそうなのは間違いありません。
仮に事故に遭って亜人であると発覚した場合、亜人じゃなきゃ不慮の事故でそのまま死んでいたわけだし、生きてたんなら儲けものくらいに思えるかもしれないんだけど、生き残った後に待っている過酷な展開のことを思うと、そのまま死んでたほうが良かったってくらいに思うかも。
亜人の特殊能力「黒い幽霊」
亜人は不死身(寿命は別)の能力以外にも「黒い幽霊」を出すことができます。これは特殊条件下を除いて亜人にしか見えないとされているので、ジョジョで言うところのスタンドに近いです。
亜人は銃撃や兵器攻撃で死ぬことがないので、この黒い幽霊と合わせて戦うことで圧倒的な戦力を有しているものの、この黒い幽霊がそこまで戦闘能力が高いというわけでもないため、人間側と戦った場合に本体が麻酔銃で捕獲されるリスクがあるという…。
まぁ亜人であることが発覚した時点で、政府の某機関に狙われるようになってしまうことは想像に容易いし、亜人側はそれに対して抵抗することが予想されます。でも死なないだけで、そこまで戦闘能力が高いわけでもなく、戦う際は人間が使用する重火器で応戦したりするので、バトルシーンには大きな見応えがあっておすすめです。
何が正義で何が悪なのか
人類の歴史において「大量虐殺」なんてのは、非常に気持ちの悪い話です。ただし過去に人体実験などを行ったことで、今の生活に役立っている要素が五万とあることも事実です。
もし亜人の存在が確認されたとき、それを研究に利用するというのは簡単に想像がつきますが、亜人に人権が認められないのだとすれば、終わりのない人体実験ということで死ぬことよりも辛い日々が待っていることは火を見るよりも明らかでしょう。
腕や足の切断、痛みを与えた時の脳波の測定、拷問にも似た苦痛を味わい続けた亜人は、果たして人間を恨まずにいられるのでしょうか。これによって亜人から報復されるとしたら、果たして正義はどちらにあるのか…。
亜人 コミックス序盤を読んだ感想・レビュー
亜人と人間の関係性がめちゃくちゃ面白いです。「事故にあったけどなんとか生きていた」って展開が不幸だと思うのは、亜人ならではの展開じゃないかと思います。
そんな特異な存在である亜人を研究したくなるというのは必然のように感じますが、医学の発展に犠牲は付き物であると理解はしていても、その亜人が自分に近ければ近いほど悲痛であることは間違いないです。
そして亜人も寿命以外で死なないということ以外は普通の人間とほぼ一緒なので、ずっと拷問されてきた等の事情があれば、人間に対して恨みを持つこともおかしなことではありません。
亜人そのものはそこまで無敵というわけではないのに対し、亜人であることのアドバンテージを駆使して戦う要素は、能力バトル漫画のような見ごたえがあります。ちょっとヒューマンドラマ的な要素もありつつ、今後の展開が気になって仕方がないダークファンタジーだと思いました。
あとがき
亜人になりたいかって聞かれたら微妙。
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