青春時代を思い出すと、必ずと言っていいほど「モテた奴、勉強ができた奴、運動ができた奴」を思い出します。大して仲が良かったわけでもないし、今ではもう接点もないにもかかわらずです。
この感情こそが本作で訴えかけてくる芯の部分で、青春時代の苦い部分と言っても差し支えないでしょう。というわけで今回は、切なくて苦しい青春譚「僕らは自分のことばかり(全2巻完結済み)」を紹介します。
僕らは自分のことばかりのあらすじ
誰かを「いなくなればいい」と思ったこと、ありますか? サッカー選手を目指し、やめた2人の少年。絵筆に青春を懸ける少女の絶望と再生。クラスのいじめられっ子が有望な新人漫画家と知った、漫画家志望の少年。全てを水泳に捧げる少年に恋した女の子。さまざまな“天才と凡人”の出会いが僕たちの黒い感情をあぶり出す。切なくて苦しくて、でも愛おしくてたまらない青春グラフィティの傑作登場!
僕らは自分のことばかりの見所をチェック!!
青春時代ならではの疎ましい存在
人によるのかもしれないけど、青春時代や思春期の頃って他人に対する嫉妬心がハンパなかったような気がします。特に僕の場合は部活とか恋愛面とか勉強面において、自分が敵わないと思わされると自分だけじゃなくて相手に腹が立ったりしていました。
大人になった今では自分より上の人だらけっていう現実にも気付いて、ある分野でこてんぱんに負けたとしても「あいつはあいつでめちゃくちゃ努力してるしなぁ…」っていう感情が浮き上がってきますし、これまでの人生で積み重ねてきたもののありますからね。
だから相手に対して疎ましいと思う気持ちのピークは、青春時代なんじゃないかと思います。そして本作はタイトルにもあるように、そんな嫉妬のピークを描いた作品です。よほどできた人間以外、共感できること間違いなし!
自分以上の才能に嫉妬する瞬間
部活動のレギュラー争いもそうだしテストの点数など、学生の時ってあまり言い訳できない競争が多いような気がします。もちろん社会に出てからも比較される場面って少なくないんだけど、人生経験も積み重ねてきてるから自分の中で逃げ道や言い訳が作れるというか、ストレートに嫉妬することってそんなにないような気がしました。
一方で学生時代って、テストの点数で負けた時に「あいつ塾行ってるしなー」みたいなことって思わなかったと思うんですよね。単純に敵わないっていう感情があって、本気になればなるほど負けた時の悔しさが直で襲ってきたような記憶があります。
場合によっては部活動なんかでも「あいつのせいでポジションを諦めた」みたいなことがありそうだし、そういう自分以上の才能に嫉妬する心理描写が巧みに描かれている青春漫画です。妬みの感情もすごいけど、ここまで嫉妬できるのも青春時代ならではってことを痛感させられるはず。
無いものねだりと自分勝手な言い分
思春期の頃は暇さえあれば女子のことを考えていました。特に恋愛に関してはエゴの集合体みたいな部分があってこれといった正解がない分、自分よりもモテる相手に対して羨ましさと嫉妬でぐちゃぐちゃになっていたような気がします。
というか恋愛に関してはいくつになっても「僕らは自分のことばかり」だと思うんです。「なんで俺じゃだめなの?/なんで私じゃだめなの?」っていう感情だらけじゃないですか?これをぶつけようのない怒りとして飲み込むっていうのが、まさに青春時代そのものなんじゃないかと思いました。
大人になったらもう割とすんなり諦められたりするからね。もちろんこういう青春時代を経てきて今があることは間違いないんだけど、あの時は死ぬほど辛かったようなことも今思えば大したことがないって思えるようになったっていう人なら、本作を読んでいて何かを思わずにはいられないんじゃないかと思います。
僕らは自分のことばかり 全2巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
オムニバス形式になっていて、実に多くの自己中心的な青春時代を堪能することができました。まぁ自己中って言っちゃうとトゲがあるけど、青春時代の頃なんて大体みんなそういうもんじゃないかと思います。
思春期ならではのモヤモヤ、ぶつけようのない感情が見事なまでに再現されていて、誰しもが懐かしいと感じられる青春グラフィティと言っていいでしょう。あんまり感動するっていうタイプの作品じゃないけど、悩むことの大切さを認識できるところに大きな価値があると思いました。
楽しかったばかりじゃない青春時代を振り返るのには最適な作品です。色んなエピソードが楽しみたいという人は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
あとがき
卑屈になりすぎるのもアレだから適度に自己中なくらいがちょうどいい。