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「水の中の月」を読んだ感想・レビュー

水の中の月
Ⓒ水の中の月

方言を全面的に出している漫画って、味があるって思える作品も少なくない中で「読みにくい」っていう要素が大きい場合もあると思うんです。で、本作は味がありつつも読みにくいという作品でした。

たぶんこの東北訛りがあるからこそ物語が引き立っている感はめちゃくちゃ感じるんだけど、いかんせん読みにくい!でも標準語だとここまで響かなかった感があるって考えると、それだけで興味深い作品と言えるでしょう。

というわけで今回は、3人の未成年による青春の物語「水の中の月(全1巻完結済み)」を紹介します。

著:土田世紀
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水の中の月のあらすじ

砥ぎ澄まされた感性と熱い情熱で、俊英・土田世紀が描く“3人の未成年の物語”。「やれ煙草だ、アンパンだ、人殺しだって… 我ァがら不自由になってぐこいつらより、よっぽど自由だスや」 他人を傷つけ、自分が傷つき、思い通りに生きることが儘にならない…。青春とは本当に“自由”な季節なのか? 賢治(ケンズ)、清(キヨス)、与一(ヨイヂ)…。北国の寒村に生まれ育った3人の“未成年”のそれぞれの生き方を描くことを通じて、土田世紀は僕等に問う…。青春とは何かを、人生とは何かを…。

水の中の月の見所をチェック!!

子供の頃から芯のあった主人公とその友達の物語

水の中の月1
Ⓒ水の中の月

子供って残酷な遊びが好きじゃないですか?でも中にはちゃんと教育されてるのか、芯の強い子がいたと思うんです。

僕が小学生の頃にアリの巣を見つけてアリたちを踏みつぶしまくってる子がいて、僕はそれを見ても別に何とも思わなかったんだけど、それを「可哀想じゃないか!」って言って止めた子がいたんですよね。当時は何も思わなかったけど、今でもハッキリと思えています。

本作の主人公はまさにそんな感じで、友達がカエル爆竹で遊んでいたことに対して鉄拳制裁をするという…。それもただ殴るでもなく、相手に同じ思いをさせるでもなく、愛を感じる鉄拳制裁です。今だとこれも傷害だなんだって騒ぐ親が出てきそうだけど、個人的には愛のある暴力ってこういうやつだと思いました。

今時そういうシーンがあるのかどうかは分かりませんが、本作はそういう昭和の昔ながらの雰囲気が感じられる友情の物語と言っていいでしょう。

徐々に変わっていく友人たちの姿

水の中の月
Ⓒ水の中の月

子供の頃に仲の良かった友達が少しずつ変わっていく様子って、何とも言えない寂しさのようなものを感じます。例えばこれが良い方向でも悪い方向だとしてもです。もちろん本作の場合は後者。

小さい頃は仲良し三人組って感じでも徐々に性格の差や体格の差なんかも出てくるし、他で付き合っている友人たちの影響なんかも出てくるでしょう。すると少しずつ距離が開いてきたりして「昔はあんな奴じゃなかったのになぁ」って人が出てきてしまうのも事実です。

本作ではそういう部分の寂しさなんかが秀逸に表現されています。幼少の頃に仲の良かった友達が、中学や高校で一気に不良になってしまったっていう経験のある人にはめちゃくちゃ刺さる内容と言っていいでしょう。

そして一度壊れた友情は元には戻らないのか

水の中の月
Ⓒ水の中の月

道を踏み外した友人が暴走族やら暴力団に入っていた場合、いつまでも口うるさく関わってくる主人公に対して疎ましさを感じるのは当然の流れかと思います。その友人本人の心の底には別の感情があったとしても、上からはメンツを気にする発言も出ると思うし、黙ってやられて帰ってくるなんてことは許さないはず。

グレてしまった友人がいたとして、過去に仲が良かったっていうなら心のどこかで、その友人には直接手を上げにくいみたいな心理もあると思うんです。それでも手を出す時がきてしまったら、それはもう友情の崩壊を意味するのかどうかっていう部分に大きな見所が用意されています。

色んな友情の形があって、本作の場合は羨ましいとは感じないけど深く考えさせられるストーリーでした。リアリティがあって入り込みやすいし、まさにヒューマンドラマの最たる例と言っていい作品です。

水の中の月の読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

中学生とか高校生くらいだと不良になったとは言っても、大人から見ると大したことがなかったりするじゃないですか?例えば僕には仲の良い友人Aがいて、Aが中学で髪を染めたりしてた時に「怖え!」って思ったけど、うちの親はAと道端で会ったりしても普通に声を掛けるっていうね。

こういう時って大体「ちゃんと挨拶返してくれるし良い子だよー」とか言ってるけど、その横でこっちは「まじかよ」って思ったりして。「授業前の起立と礼をしないような奴なのに、うちの親には挨拶するんかい!」みたいな。

本作はこういう時の流れをモロに感じる作品で、寂しくもあり温かくもある人間ドラマだと思いました。全1巻っていう短いボリュームの中にも読み応えがかなりあって、読了後の満足感ったらないです。

ただ単に「変わらない友情」みたいなことを描いているストーリーに何も感じないという読者でも、本作で描かれている友情には良くも悪くも胸を打たれるんじゃないかと思います。

あとがき

キヨスって清州かと思ったらキヨシが訛ってるだけっていうね。

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