たぶんドラゴンボールのギニューに触発されたんじゃないかって思ってるんですが、昔から「他人と中身が入れ替わる」的な妄想が結構好きです。もちろん「斎藤工になったら…」みたいな自分にとってプラスしかない妄想ね。
しかし場合によっては「そんなのは望んでない！」っていうパターンも起こりうるわけで、その最たる例が犯罪者と入れ替わってしまうというものじゃないかと。というわけで今回は、テロリストと中身が入れ替わってしまうサスペンス「殺さざる者、生くべからず(全3巻完結済み)」を紹介します。
殺さざる者、生くべからず あらすじ
かつての友は、テロリストになった――。桜井天彦と東ユキオ。将来を嘱望される若手精神科医と、未曾有の大規模テロ組織のリーダー。かつてともに笑い合った親友同士。天彦の兄の怪死事件以来、別々の道を歩みし２人が、鑑定人と被疑者という真逆の立場で再会する時、２つの運命が交わり、溶け合い、絶望が静かに幕を開ける――。
殺さざる者、生くべからずの見所をチェック!!
主人公は誰もが羨む精神科医
本作の主人公は非常に優秀な精神科医で、将来がほぼ約束されていると言っても過言ではない存在です。親も有名な政治家だし、綺麗な彼女もいて、まさに順風満帆な人生を謳歌しているという感じ。
でも過去に「兄が自殺した」という過去を持っていて、それに対して「そこまで追い詰められている兄の心に気付けなかった」みたいなことから精神科医を目指したというバックボーンがあります。
それを切っ掛けにして努力を重ねたから輝かしい今があると言ってもいいんだけど、本作は「その兄の死が自殺じゃなかったんじゃないか」みたいな流れに進んでいくサスペンスです。
かつて一目置いていた旧友がテロリストに
かつて賢いという意味で一目を置いていた旧友が、度重なるテロの主犯格として逮捕されます。その精神鑑定に主人公が向かい、久しぶりの再会を果たすという流れです。そこで兄の死が仕組まれたものなんじゃないかってことに気付くわけですが、ここからの展開がめちゃくちゃすごいです。
何の目的でテロを起こしているのかとか、どうやって自分が直接手を下さずにテロを実行し続けられているのか等々、とにかく疑問が疑問を呼ぶ展開で夢中にさせられてしまいます。
あ、ちなみに先に言っておくと、本作は打ち切りになっていて最後の真相部分は一切描かれていないので、疑問が疑問を読んだ一連の展開は決着が付かないまま完結しているので注意してください。
テロリストと中身が入れ替わってしまう展開
ひょんなことからテロリストと自分の中身が入れ替わってしまい、順風満帆な人生を送るはずだった主人公が死刑を待つだけの犯罪者になってしまいます。精神科医だった頃の自分の記憶は残っているので、職場の先輩などに色んなアプローチをするものの信じてもらえないという展開です。
そして精神科医である自分の中には旧友のテロリストが入っているわけですが、彼が自分の身体を使って何をしようとしているのか、そして彼の暴走を止めるために自分にできることは何なのかを探していく展開が胸熱。これを面白くないって感じる読者は少ないんじゃないかと思ったんだけどなぁ。
自分と入れ替わった旧友の方も主人公の人間関係なんかを把握していて「入れ替わってるけど記憶みたいなものも手に入るシステム？」みたいな都合の良い部分はあるけど、お先真っ暗な主人公がどう立ち回っていくのかがめちゃくちゃ楽しみな展開です(まぁ最後まで不明なままですが)。
殺さざる者、生くべからず コミックス全3巻を読んだ感想・レビュー
本作はヤングマガジンで連載されていて、どうやら打ち切りになってしまったようです。全3巻っていう括りにはなっているものの、その実態は未完と言っていいでしょう。最後のページを読んだときに「え、これ4巻ないの!?」って唖然としました。
兄が死んだ真相、旧友の暴走の理由、犯罪者と中身が入れ替わってしまった主人公の未来…かなり面白くなりそうな伏線が多々あるのにも関わらず、その全てを最後に放り投げてしまっています。魔王討伐のファンタジーとかなら「これからも旅は続いていく…」みたいな終わりでもいいかもしれないけど、サスペンスでこれやったらあかんでしょって感じの終わり方です。
序盤から最後までめちゃくちゃ面白かっただけに、すごく楽しみにしていた結末が一切読めなかったのが残念でした。ぶっちゃけ打ち切りになるようなクオリティじゃないし、作者の中丸氏が犯罪でもやってなければ納得できないレベル(そのような事実は確認できませんでした)。こうなるのが最初から分かっていたら恐らく読まなかったので、よほどの物好きな方以外にはおすすめしません。
あとがき
これが打ち切りになった真相も知りたい。
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