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「竜の学校は山の上」を読んだ感想・レビュー

竜の学校は山の上表紙

 

色んなタイプのショートストーリーが楽しめる短編集も好きだけど、本作みたいに「全部がファンタジーで統一されている」みたいな短編集も好きです。後者だと似たような話ばかりで飽きるっていうリスクもあるんですが、本作は根底にあるテーマが違うせいか飽きがきません。

ファンタジーが好きな人、特に「魔王を倒した後の世界」という舞台に惹かれる人にはぜひ手に取ってもらいたいと思える短編集です。というわけで今回は、現実と幻想のバランスが絶妙なファンタジー作品集「竜の学校は山の上(全1巻完結済み)」を紹介します。

 

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竜の学校は山の上 あらすじ

勇者は孤独な里帰り、女子中学生の天使は進学に悩み、ケンタウロスは馬車馬のように働く、今日も大学の上空には竜が飛ぶ……あたりまえのように、そこにある非日常。現実(リアル)と幻想(ファンタジー)が入り混じる「九井ワールド」へご案内!ウェブや同人誌即売会で発表された7編に加筆修正を加え、描き下ろし2編もあわせて収録。ウェブや同人誌即売会で作品を発表し、広い世代から注目を集める新星、初の作品集!

 

 

  1. 帰郷
  2. 魔王
  3. 魔王城問題
  4. 支配
  5. 代紺山の嫁探し
  6. 現代神話
  7. 進学天使
  8. 竜の学校は山の上
  9. くず

以上の9編が収録された短編集です。作者の九井諒子氏は「ダンジョン飯」や「ひきだしにテラリウム」などが有名。

 

竜の学校は山の上の見所をチェック!!

帰郷

竜の学校は山の上1

 

魔王を倒した後の勇者が、育った村に帰ってきたその後の物語です。ロールプレイングゲームをやったことがある人なら分かると思いますが、魔王を倒した後って基本的にはハッピーエンドで終わることが多いじゃないですか?

でも現実世界を見ていると、今まで魔王なんかいなかったのにも関わらず世界規模の戦争を二回もしています(それもここ100年~200年の間に)。これを考えると「果たして魔王がいなくなったら本当に世界は平和になるの?」と懐疑的になってしまうのも事実。

ゲームの中の勇者は世界から争いを消せるだけのパワーがあるかもしれないけど、本作の勇者は村人に相撲で負けてしまうくらい、なんらその辺の人間と変わらないような感じすらある勇者です。そんな勇者の人柄が感じられる、非常にわびさびのあるファンタジーと言っていいでしょう。

 

魔王城問題

竜の学校は山の上2

 

こちらもまた魔法討伐後の世界を描いたファンタジーですが、教訓めいたことを教えてくれるというか「日本昔ばなしに似た空気を持っているエピソード」だと思いました。

簡単に言えば、魔王がいなくなった魔王城に王様と王女が住もうとするって話なんだけど、魔王城なんて勇者一行から身を守るために造られた城だから、人間が住むのには適していない環境なわけです。ドラクエとかなら毒沼に囲まれてることも珍しくないし…。

そこに意地でも住もうと考える王女と、王様に対して何かしらのわだかまりを持っている勇者とのコントラストが映えるファンタジーです。そして最後に得られる教訓が何とも言えない読了感へと繋がります。

 

竜の学校は山の上

竜の学校は山の上3

 

「大学にドラゴンを研究する竜学部というものが存在したら?」という世界観で描かれたエピソード。ドラゴンをいかに人間の生活と馴染みあるものにしていくかという様子が描かれています。

まぁ早い話が「役立たずなドラゴンをどうやってビジネスに繋げるか」っていう話で、卵が食用にできないだろうかとか、小さい個体をペット販売できないかとか、ありとあらゆる観点から竜を研究している人たちの物語という感じ。

本短編集の表題にもなっているくらいですから、かなり力の入ったエピソードのように感じました。お金にならないと多くの大人は価値がないって思っちゃうかもしれないけど、研究員にとってはそうじゃないっていうのが理解できるというか、学問の崇高な感じが伝わってくる作品です。後味も爽やか。

 

竜の学校は山の上を読んだ感想・レビュー

すごく不思議な雰囲気に包まれているファンタジー短編集です。魔王がいなくなった後の世界を描いたファンタジーなら平和一辺倒だと思ったんだけど、意外とそうでもないっていう部分に寂しさなんかも感じつつ、色々と考えさせられてしまう結末が爽やかな中にも重みを残しているという感じ。

あとはおとぎ話みたいな展開だったり、神聖な生き物や不思議な生き物と一緒に生活をする様子の不思議な感じが面白いです。9編もの物語が入っていて読み応えもあるし、どれもファンタジーの世界観に統一されているので、ファンタジーが好きな人にはたまらない短編集だと思います。

「優しくもありながらちょっとだけ寂しい」みたいなバランスが秀逸で、読んで楽しみながらも考えさせられる内容と言っていいでしょう。九井諒子氏のダンジョン飯が面白かったということで本作を手に取るファンの方も多いようですが、氏の短編集はどれもハズレがないのでおすすめです。

 

あとがき

世の中にはなーふたつのものしかないっ。

 

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