「インコンニウスの城砦」を読んだ感想・レビュー

表紙を見たときに感じるファンタジーチックな絵に惚れたのもそうですが、淡々と進むスパイ漫画っていう内面にベタ惚れしました。戦争がテーマになっているのに重すぎず、ファンタジーの枠に留まっているのも読みやすい理由になっていると思います。

本作はスパイとして活躍する少年の物語なんですが、この少年はただのスパイじゃないっていうね。最後の最後に真相が明らかになるので楽しみにして読んでみてください。というわけで今回は、幻想科学諜報漫画「インコンニウスの城砦(全1巻完結済み)」を紹介します。

ポチップ

インコンニウスの城砦あらすじ

本編モノクロ193ページ。氷に覆われた星。科学と魔術が拮抗する世界。少年カロは密偵として「56号移動城砦」へと赴く。そこにはやがてインコンニウス将軍の影が…そんな幻想科学諜報漫画

本作は地球全体が氷河期に突入する直前の世界で、比較的温暖な気候にある赤道周辺をめぐって北と南が争っている世界の物語です。北軍は移動城砦、南軍は戦略巨像で戦います。

ジャンルとしては「幻想科学諜報漫画」というようですが、簡単に言うとスパイを題材にした漫画です。日本にはスパイ禁止法みたいなものが今のところないんだけど、本作を読んだだけでも「戦争をするのにスパイを使うことがいかに重要か」みたいなことがひしひしと伝わってきます。

もちろん「送り込んだスパイが捕まって拷問された」とか「スパイを送り込んでいたつもりが、逆に情報を奪われていた」みたいな展開は避けなきゃいけない部分です。いかにしてそういうリスクを避けるかみたいな部分に大きな見所が用意されているので注目してみてください。

本作の主人公はスパイとして北軍の移動城砦に潜り込む少年です。仕事の名目で砦内に潜入し、兵器としての移動城砦がどういう構造をしているのか探るという感じ。

ぶっちゃけ戦う前に相手の戦力を知っておくっていうのは、めちゃくちゃアドバンテージが大きいわけで、これをやらない理由はないでしょう。逆に「二重スパイを使って嘘の情報を与える」っていう展開でも、相手に対して大きな混乱を与えることができるはず。

本作においても主人公たちが北軍の情報を探っている一方で、同じように北軍からもスパイが送られている可能性は無視できません。水面下で諜報活動を続けながら、相手を出し抜くための情報戦には大きな見応えがあるのでおすすめです。

まず第一に「北と南が戦って果たしてどっちが勝つのか」っていう部分が大きな見所です。その次に「スパイとして活躍した主人公の行く末」みたいなものも大きな見所と言っていいでしょう。

勝ち負けは言わずもがな気になる部分ですが赤道周辺を争っての戦いなので、負けた方は氷河期に飲み込まれて死んでしまうっていう展開になるのか、それとも勝った方も自然の力には抗えないみたいな展開も十分にあり得そうじゃないですか？

そしてスパイとして功績を挙げた人間がどうなるかっていう部分にも注目です。スパイなんて顔が割れちゃいけないわけで、表立って表彰されるとも思えません。そう考えると結局は用無しになってしまうのかもって思ったり思わなかったり。

全1巻で無駄な前置きなんかもなく、淡々と進んでいく物語という印象です。全然説明的じゃないので、よほど丁寧に読み進めていかないと「え？どういうこと？」ってなるんじゃないかと思います。ちなみに僕は一度読んだだけでは紹介レビューが書けず、連続して二回読みました。

スパイもの自体がそんなにない中で非常に高いクオリティの作品だと思います。本来であればバレる・バレないみたいなせめぎ合いも描きつつ展開するのがセオリーだと思うんだけど、これはこれで最高に味わい深いです。やっぱスパイがそこまで情報を語るのも良くないと思うんで。

幻想科学の感じもSFとかダークファンタジーっぽさを演出していて、魅力的な世界観を作り上げていると言っていいでしょう。結末の余韻を残している感じも見事でした。

ちなみにkindleアンリミテッド登録者なら、全1巻が無料で読めるのでぜひ読んでみてください。

スパイ作品って読み応えあるなぁ。

ポチップ

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