記事内に広告を含みます

「遠い食卓」を読んだ感想・レビュー

遠い食卓表紙
Ⓒ遠い食卓

グルメ漫画と言えば何かしらの料理が出てきて、それを美味しそうに食べる主人公の姿が印象的な作品が多いんだけど、本作はそういうシーンがほとんどないグルメ漫画です。

グルメ漫画っていうよりは「食を題材にした人間ドラマ」って言った方が適切かも。読み切り10編(正確には9編かな)が集まっている単行本なので、テンポ良く読み進めることができるでしょう。というわけで今回は、身近なグルメをテーマに繰り広げられるドラマ「遠い食卓(全1巻完結済み)」を紹介します。

遠い食卓のあらすじ

月刊アフタヌーンに連載されていた好評読み切りシリーズが単行本化! カップラーメン、コーヒー、糠漬け、餃子などの身近な食べ物をテーマに新人ながらすでに名手のたたずまいを持つイシダナオキが9つのストーリーを編み出した! くすっと笑えたり、ちょっとジーンとしたり、そんなお話が詰まっております。ぜひご一読を!

  1. カップラーメン フルクサス
  2. コーヒービーン ラプソディ
  3. スープジャンクション
  4. 漬け物エレジー
  5. シャケ弁ラナウェイ
  6. グッバイ餃子
  7. 親子蟹
  8. 手羽先エスカレーション
  9. 遠い茶筒(前編)
  10. 遠い茶筒(後編)

本作は短編集という名前こそ付いていないものの、読み切り10編が収録された短編集と言っても差し支えないと思います。

遠い食卓の見所をチェック!!

カップラーメン フルクサス

遠い食卓1
Ⓒ遠い食卓

料理研究家の息子で体育教師をやっている主人公が、流行りのカップ麺を食べたくて奮闘する物語です。奮闘するって言っても別に大したことはしていません。

生徒から流行っているカップ麺の情報を仕入れ、最初は興味がなかったんだけどあまりにも言われるから軽く食べてみようかって気持ちになり、そしたらあまりにも流行りすぎててどこも売り切れているっていう流れです。

グルメ漫画っていうか日常の一コマに近いような気もしますが、最後にしっかりとオチも付いていてクスッとさせられてしまう描写が秀逸なエピソードだと思います。個人的には料理研究家がカップ麺を食べても全然問題ないと思ってるけどね。

漬け物エレジー

遠い食卓2
Ⓒ遠い食卓

DHA48(ダイエットは明日から)と呼ばれる自作グループに所属しているぽっちゃり女子が主人公の物語です。テーマは漬物となっていて、これもまたグルメ漫画というよりは漬物を題材にした日常の一コマという感じ。

漬け物王子と呼ばれているイケメンが開催しているセミナーに参加したところから、一気に詐欺の片棒を担がされてしまう…みたいな展開となっています。そもそも買う・買わないが本人の自由なわけで、これを詐欺って呼んでいいのかどうかも微妙だとは思うんだけど、とりあえず「法外な値段で漬物樽を売りつける」みたいな話です。

その中でも漬け物の利点なんかもしっかり描かれているので、物語を楽しみながら漬け物の何たるかを知れるという一面も。自分で漬け物を作ったことがあるという人にはかなり刺さるエピソードではないかと思います。

遠い食卓を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

オチの付け方が上手い短編が多くて、読んでいる時のリズムが心地良いです。食を題材にしている漫画なんだけど食事の紹介みたいなのはほとんどないし、なんならそれを食べているときの美味しそうな顔も全く出てきません。

それでもコンビニ弁当の残りをおかずにされるのが嫌なお父さんが出てきたり、餃子が食べたくて仕方ない女の子が出てきたり…。そしてエピソードの最後に残る感情も笑いだったり寂しさだったりと様々です。

個人的には「シャケ弁ラナウェイ」の哀愁漂う感じとオチの秀逸さが好きですが、どれも素敵なエピソードだと思いました。色んな種類の人間ドラマが楽しめるので、サクッと読める短編集が好きな人におすすめです。

あとがき

食べ物の恨みは深い。