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「鉄コン筋クリート」を読んだ感想・レビュー

鉄コン筋クリート表紙
Ⓒ鉄コン筋クリート

僕が本作を読んだのは割と最近になってからの話で、恥ずかしながら「浦安鉄筋家族」とごっちゃになっていました。なんとなく表紙絵の男の子の雰囲気も似てない?

松本大洋氏の作品の良さはある程度大人になってから理解できるようになりました。特に「ピンポン」なんかは卓球漫画、いや、スポーツ漫画全体を見渡してみてもトップクラスの面白さです。というわけで今回は、特徴が溢れる絵で描かれる哲学的な世界観が見事な「鉄コン筋クリート(全3巻完結済み)」を紹介します。

鉄コン筋クリート あらすじ

純粋な力を信じるクロ。純粋な心を信じるシロ。2人の悪童が背徳の街宝町を舞台に繰り広げるアクション。危ないから気をつけてくださいね!!宝町に住む少年、シロとクロはネコと呼ばれ、他の町でも恐れられる存在。学校にも通わず、暴力で金を奪い取る荒んだ生活を繰り返していた。

鉄コン筋クリートの見所をチェック!!

2人の悪童が主人公

鉄コン筋クリート1
Ⓒ鉄コン筋クリート

本作の主人公はクロとシロと呼ばれる2人の悪童です。家族もいなければ学校にも通っておらず、暴力を働いては奪い取ったお金で生計を立てているという…。見た目では想像が付かないくらいのやべー奴らで、地元で知らない人はいないってくらいの悪童です。

2人のバックグラウンドも気になるんだけど一番気になるのはこの2人が普通じゃないっていう部分で、特にシロの言動を見ていると見た目以上に幼いというか、言葉を覚えたての子供のような印象を受けるでしょう。純粋な力を信じるクロと純粋な心を信じるシロ、この2人が町で大暴れをして最終的にどこにたどり着くのかに注目です。

見た目に反して喧嘩最強の2人

鉄コン筋クリート2
Ⓒ鉄コン筋クリート

体は小さいし、見た目的にも怖いというよりは可愛いに近い感じすらある2人ですが、不良やヤクザ相手にもお構いなしに喧嘩を吹っ掛けます。凶器を使うことにも躊躇がなく、とにかく相手をボコボコにして金目の物を奪い取るっていうね。

とりあえずやっていることはヤンキー漫画のそれと変わらないし、むしろそれ以上と言っても過言ではありません。見た目が付いて来ていないだけで、これがスーツ+パンチパーマだったらヤクザ漫画って錯覚するんじゃないかってほどにめちゃくちゃ暴れまわっている様子が描かれています。

ただ、こんなにバイオレンスなシーンを見せつけられても、本作が暴力に頼って描かれた漫画だとは微塵も思わないはず。根底にあるテーマが何なのかは読み進めていかないと分からないけど、少なくとも序盤の時点で本作に隠された壮大なテーマの存在に気付くことは間違いないでしょう。

哲学的な物語

鉄コン筋クリート4
Ⓒ鉄コン筋クリート

本作の初期設定として「純粋な心を信じるシロ」というものがあります。クロもシロも幼い少年であることは間違いないんだけど、特に白は純粋すぎるというか何色にも染まっていない感があるんですよね。

だからクロの暴力的な部分を見ても何も思わないし、恐らく町の見え方も普通の人とは違うんじゃないかっていう気すらしてきます。この純粋さこそが読者を引き付ける部分だと思いました。

最初は「もしかして頭が弱いのかな?」とか思っちゃうけど、最後まで読むと全然そんなことじゃなかったってことを痛感するはず。暴力が渦巻くような汚い街で、まったく汚れずに生き抜いている不思議な存在のシロ。そんなシロが本作を読み終わる頃には、読者に何かを残してくれることは間違いありません。

鉄コン筋クリート 全3巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

見た目的にも内容的にも好き・嫌いがはっきり分かれてしまうタイプの漫画だと思います。好きは人は「絵が超魅力的!」って言うし、嫌いな人は「絵が見にくい!」って言うはず。個人的には松本大洋氏の絵は見にくいと同時に味があって唯一無二だと思ってるけど。

内容的には悪童2人組が警察やヤクザ相手に好き勝手やるバトル漫画かと思いきや、そんな単純な物語ではありません。端的に言うと「哲学的」で、読む人によって受け捉え方も大きく変わるような漫画です。どこか懐かしく感じるような空気感もありつつ、読めば読むほど味が変わっていくって言うのかな。これと言った面白さがないのに魅力的っていう表現がぴったりなんじゃないかと。

単純で分かりやすいテーマでもないしクセの強い絵っていうのも相まって、分かりやすい面白さのある漫画が好きな人は受け入れにくいと思います。その反面、読む人によって感じ方が変わるとか何かを考えさせられるという漫画が好きな人にはおすすめです。

あとがき

この街はもう長くねえ。