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何年か前に某国がミサイルを撃ったってことでサイレンが鳴ったことがあったじゃないですか?僕は家でガタガタ震えていて、それでも学校や会社が休みにならない異常さを感じていたのを覚えてるんだけど、戦争当時の空襲警報もそんなノリだったとは夢にも思いませんでした。
本作を読むと戦争時のイメージが大きく変わるという人も少なくないのではないでしょうか。というわけで今回は、山田風太郎氏の戦時中の日記をコミカライズした作品「風太郎不戦日記(全3巻完結済み)」を紹介します。
風太郎不戦日記のあらすじ
山田誠也、のちに「忍法帖」シリーズでその地位を確立する大作家・山田風太郎は、昭和20年、医学生として東京にいた。時は太平洋戦争末期、同世代の若者は、みな戦地へ。しかし体調不良で召集を見送られた誠也は、お国のために体を張れない葛藤を抱えながら、日々を送っていた。そんな彼が当時の世間を、そして日本をどう見ていたか。克明に綴られた日記を、令和の今だからこそ、コミカライズ。個性派漫画家・勝田文がユーモアを交えて描く風太郎と昭和20年は、必読ものです!
風太郎不戦日記の見所をチェック!!
本作は小説家・山田風太郎氏が書いた戦時中の日記をコミカライズしたものです。個人的には山田氏について全く詳しくはないんだけど甲賀忍法帖の名前で聞いたことがあって、これをコミカライズした「バジリスク~甲賀忍法帖~」はめちゃくちゃ夢中になりました。
ちなみに当時は医学生だったようで戦争には行っておらず、医者で小説家っていう時点で漫画の世界も驚くスーパーマンなわけですが、そんな山田氏も普段は普通の大学生だったんだなぁという日常が覗けます。
まさか今や山田風太郎賞って名前の賞を持っているような人が、自分のフケで文字を書いてるなんて夢にも思わないでしょ。
当時と今の日本を比較すると面白い
戦争って言われると現代の多くの人にとっては非現実的なことのように捉えるんじゃないかと思います。僕自身、ほとんど想像上のことであって詳しくは知らないし、何かしらの情報を仕入れようと思ってもその情報元の思想みたいなこともあって、なかなか「これぞ真実!」みたいなものに辿り着けていません。
でも本作を読んでいると、当時の日本も今の日本もさほど変わってないんじゃないかなーっていうのが正直なところです。最近は「日本はだめになった」みたいなことを聞くことが多く、戦時中はよっぽど芯のしっかりした人が多かったんだろうなぁって思ってたけど、たぶんそこまで大差ないんじゃないかと。
少なくとも事実を歪めて報道するようなマスコミ体質というか、嘘で塗り固める政治家みたいなものの構図は変わっていないと言えるでしょう。負け濃厚の戦争時においてもやってることは今のコロナ対策と一緒なので、日本は当時から立派ではなかったし、そこから全く進歩もしていないような気がします。
もちろん感じ方は人それぞれだろうし、そもそもこれ自体が山田氏の日記によるものだからアレだけど、当時の偉大性の屈託ない日記を覗いているって思えば、現代と比較する楽しみなんかもあって見応えたっぷりです。
戦争に対する庶民からの目線
戦争をテーマにした漫画は非常に多いんだけど、僕がそこをあまり通ってこなかったからなのか「戦争に参加している兵隊目線でもなければ、あからさまな戦争被害者って感じでもない作品」っていうのがすごく斬新でした。
まぁ戦争被害者じゃないって言ったらアレだけど、少なくとも「試験中に空襲が来れば問答無用で全員合格」と言われて空襲が来ることを願ってしまうあたり、僕が思っていた戦時中のイメージとはめちゃくちゃかけ離れていたんですよね。
きっとコロナ禍における緊急事態宣言みたいなもんで、空襲も緊張感を持っていたのは最初だけだったのかなぁなんて思ったり思わなかったり。そして戦争が終わってすぐ、米軍が配るチョコレートに群がる日本人…みたいなのも思ってたのと少し違っていたので、「戦争は憎いけど直接家族を殺されたわけでもなく、米軍に対してそこまで大きい恨みもなく…」という絶妙な距離感が非常に興味深いです。
風太郎不戦日記 全3巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
僕にとっては戦争の受けとらえ方について新しい目線から楽しめる作品でした。でもいかに戦争が愚かな行いかっていう部分はこれまでに読んできた作品と共通していて、そこに加えて「戦争に直接は参加していなくてもたくましく生き抜いている一般市民の姿」みたいなものが楽しめる戦争漫画だと思います。
そしてコロナ禍に置かれている現在と似ている部分が多々あって、現在と当時を比較してみるっていう読み方がとにかく面白いです。個人的には悪い意味で「何も変わってねーじゃん」って思ったし、たぶん当時もしSNSがあったとしたら多くの国民はマスコミを叩いてたろうし、下手すりゃ軍人も叩いてたんじゃないかとすら思いました。
もちろんこれは僕の感想でしかありませんが、戦争という愚かな行為の先入観を壊してくれるというか新たな見方ができる作品だとも思うので、特に若い読者の方に読んでもらいたいと思える漫画です。
あとがき
帝国ツイニ敵ニ屈ス。