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「僕のジョバンニ」を読んだ感想・レビュー

僕のジョバンニ表紙
Ⓒ僕のジョバンニ

「天才って才能がある人のことを言うのか、あるいは努力できる人のことを言うのか」みたいな話ってずっとされてきたことだと思うんだけど、今活躍してる天才って間違いなく「才能があって努力している人たち」のような気がします。

そして環境にも恵まれてなきゃいけないだろうから運の要素も必要。そういう意味では本作の二人の主人公は、紛れもなく天才と言えるでしょう。

というわけで今回は、二人の少年がチェロを手にしたところから始まる運命の物語「僕のジョバンニ(連載中)」を紹介します。

僕のジョバンニのあらすじ

海難事故に遭い、暗い海原を漂い、死の淵にあった郁未。彼を岸まで導いたのは、鉄雄が弾くチェロの“音色”だった――。鉄雄の家で暮らすようになった郁未に、鉄雄がチェロを教え始めたことで、少年たちの未来が大きく動き始めた――!!

僕のジョバンニの見所

チェロの才能を持っている少年が主人公

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Ⓒ僕のジョバンニ

あなたはチェロって言われてどういう楽器かパッと思い浮かぶ人ですか?僕からしたら「バイオリンの大きいやつで、担ぐんじゃなくて床に置いて演奏するやつ」で、コントラバスよりは小さいやつってくらいの認識しかありません。

だから本作の主人公が小学生ながらにしてチェロを弾いてるってのはかなり衝撃的でした。しかも東京の大会で優勝するようなレベルです。ここだけ聞いたら主人公は紛れもない天才なんだけど、天才というには種類が違うというか「人間味のある天才」なんですよね。

それに最初はすごいって褒めてもらえても、結局周りの小学生たちはチェロにそこまで興味があるわけでもないし、かつてはチェロを弾いていた兄貴ももうチェロを一緒に弾いてはくれないっていう…。ちょっと可哀想な一面にも注目です。

海難事故から漂着した少年との出会い

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Ⓒ僕のジョバンニ

本作にはもう一人重要人物がいます。海難事故に遭って死にそうだったところを、奇跡的に海辺まで辿り着いて保護されたっていう少年です。この少年が奇しくも主人公と一緒に生活をすることになります。

で、この少年が助かった理由ってのが「声がした」っていう言葉に隠されてるんだけど、これが声じゃくて主人公がチェロを演奏していた音だったっていうのは、勘の良い人ならすぐにピンと来るんじゃないかと。

事故から助かってもなお周りの誰にも心を開かない少年は、自分を救ってくれた主人公には興味を持つって感じの始まりです。この少年が主人公とどう関わっていくのかっていう部分は本作最大の見所と言っていいでしょう。

主人公と謎の少年の絆

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Ⓒ僕のジョバンニ

あなたも自分が幼少の頃を思い出してみると、似たような経験を一つや二つはしてるんじゃないかと思うんだけど、自分が得意なものとか好きなものに同じようにして興味を持っている友達って欲しいじゃないですか?

で、最初は自分が教えてあげるようなカタチで一緒に楽しむんだけど、これが「気付いたら相手の方が上手くなってた」みたいなことってあると思うんです。大人になってれば「あいつすげーなー」で終わりなんだけど、いかんせん小学生にそれは無理でしょ。

こんな感じで二人の少年の絆は強くなっていったところで、徐々に綻びを見せ始めていく…みたいな流れは、先の展開が気になって仕方ありません。両者とも紛れもない天才なんだけど、タイプの違う天才に出会ったことによる嫉妬とか焦燥感みたいなものも大きな見所の一つです。

チェロを通じてどう向き合っていくのか

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Ⓒ僕のジョバンニ

天才だと言われていた人物がもっとすごい存在に当たって絶望を感じる的な展開は、楽器に限らずスポーツなんかの世界でも割とよく聞く設定だと思うんだけど、そこで諦めるのか追いつけ追い越せで頑張るのかっていうのが一つの分岐点です。

でもある程度のレベルに到達しているなら「このままやっても勝ち目がない」っていうのも見えてくるわけで、どうしても負けたくないっていうのであれば相手以上の努力や環境を用意しなければなりません。

我流でやるには限界がありますから、じゃあ優秀な指導者に教えてもらおうってことになるんだけど、そこでプライドを捨てられるかっていう部分にも見所がたっぷりです。何を捨てて何を手にするのか、そして完全な友情で始まった二人の関係性はどう変化していくのか…ヒューマンドラマが好きな人には文句なしにおすすめします。

僕のジョバンニ 序盤を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

穂積氏の漫画作品は「式の前日」も衝撃的だったし、それ以外に「さよならソルシエ」も読みました。どっちもめちゃくちゃ面白かったけどボリュームが少ないからあっという間に終わってしまうんですよね。

というわけで本作は巻数多く楽しみたいと思ってるんですが、序盤が面白すぎて後半に萎えてこないかどうかだけが不安です。序盤はかなり面白くてめちゃくちゃ惹きつけられてしまいました。

チェロに対して知識がなくても全然楽しめるし、タイプの違う二人の天才が友達のままでいられるのか、それともライバル関係になるのかっていう単純な部分でも面白いです。そもそも家族同然でもあって、年齢を重ねていくうちに自然と素直になれる部分もあれば、逆に譲れなくなってくる部分なんかもあると思います。

そんな二人の関係性がどうなっていくのか、最後まで見届けたくなる作品です。

あとがき

僕のジョバンニの序盤ってわざとじゃないです。