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「生贄投票」を読んだ感想・レビュー

生贄投票表紙
Ⓒ生贄投票

中学校でも高校でもいいんだけど、クラスで投票する機会がある場合って総じて良いものを選ぶケースばかりじゃないですか?委員長を決めるとか人気者投票をするとか。一方でその逆の結果も知りたいっていうのは深層心理なんだろうか。

リアルなクラスじゃまずありえないだろうけど、例えば「ルックスが良い人ランキング」みたいなのをやって、トップ3だけじゃなくて最下位まで発表するってなったらちょっと興味が出てきたりしませんか?(もちろん自分に自信がない場合は吐き気がするくらい嫌だけど)

本作はそういうちょっと残酷な投票に興味がある人には刺さりそうなデスゲーム漫画です。というわけで今回は、反道徳×学園サバイバル「生贄投票(全7巻完結済み)」を紹介します。

生贄投票のあらすじ

ある日、高校生・今治美奈都のスマホに突然表示された「生贄投票」というアプリ。候補者としてクラス全員の名前が並べられ、生贄に選ばれた者には、“社会的”死が与えられるという。何の気なしに友人の名を押してしまった美奈都だったが、この投票がクラスに大きな波紋と崩壊をもたらしていく──。

生贄投票の見所をチェック!!

通常のデスゲームとは異なるペナルティ

生贄投票1
Ⓒ生贄投票

本作は基本設定こそデスゲームのそれなんだけど、一番大きく違う点は「社会的死」が与えられるという点です。死ぬんじゃなくて社会的に死んでしまうという設定になっていて、簡単に言えば「これがバレたら生きていけない!」的な秘密をバラされてしまうという感じになっています。

で、そのターゲット(生贄)を決めるのがスマホを使った投票システムで、単純に入った票数の多い奴から槍玉に挙げられていくという流れです。まぁ自分の学生時代を思い浮かべた時に「このクラスでそれをやったら誰に票が入るか」みたいなことを考えながら読むと結構面白いと思います。

何よりこういうのってクラスで嫌われてる奴が槍玉に挙げられることはあっても、友達がいなくて孤立している奴に票が入るケースってあんまりないんですよね。どっちかっていうと人気者っぽい人が先にやられるっていうのは、人間の妬みみたいな感情を上手く再現できていてすごく夢中にさせられるでしょう。

ペナルティ回避のハードルがやや低め

生贄投票2
Ⓒ生贄投票

得票数が一位になっても救済処置が残されていて、規定回数をタップすることでペナルティを回避することができます。個人的には「こんなんで回避できるの!?」って思っちゃったけど、自分以外の人に1万回タップしてもらうっていうのは意外とキツそう。

というのも、表向きでは「絶対に助けてやっから!」みたいな奴が出てきて、実はあんまりタップしてくれなかった的な絵がもう見えるじゃないですか?40人クラスだとして1人250回って考えると、そんなに簡単な条件でもないのかも。

でもこれって明日は我が身なわけで、もし自分が何回押したかがバレるシステムになっていたら、そこそこ押してもらえると思うんだよなぁ…。ちなみに作中では投票システムと絡めて「大っぴらにタップしにくい理由」みたいなのも挙げてたけど、ここに共感できるかどうかでペナルティ回避に対する考えが変わると思いました。

個人的には「タップしにくい理由<タップすべき理由(自分の時に押してもらえなくなることを防ぐためにもタップすべき)」だと思ったので、ちょっとしたモヤモヤが残ってしまったかもしれません。

自分にとっての秘密がクラス中に知れ渡る恐怖

生贄投票4
Ⓒ生贄投票

あなたにも何かしらの秘密があると思うんですが、それってそんなにバレたくないものですか?例えばジェンダーの人って自分がジェンダーだって告白するのには相当な勇気がいるって話を聞いたりするじゃないですか?

でも僕にはそういう秘密が全くないんですよね。ちょっと特殊な性癖をバラされるのは嫌だけど、投票に選ばれてタップによる回避のチャンスを貰って…それでもダメだった時のペナルティって考えたら全然受け入れられるんです。

もしこれが仮に「クラスの〇〇さんに対してコソコソ何かをやっていた」みたいなことだとしたら、その場で暴露されるのはちょっと嫌かもしれません。体育着を盗んだとかリコーダーにいたずらしたとかね。でも死ぬのに比べたら全然余裕だし、そもそも社会的な死になることはないような気がしました。

ここは読者の感じ方次第なので「クラスメイトには知られたくない秘密がある」っていう人ならめちゃくちゃ刺さるんじゃないかと思います。

交換条件を持ち出すゲスい展開

生贄投票3
Ⓒ生贄投票

そして当然って言ったらアレだけど「タップしてほしいなら…」みたいな交換条件を出す奴も出てきます。こういうダークな雰囲気は個人的に嫌いじゃないので、これが結果的にどう転ぶのかっていうのは面白かったです。

でも仮に自分の体を売って金儲けをしている女子生徒がいたとして、それがクラスのみんなにバレたくないっていう状況で、「こいつに抱かれてもいいからクラス中には秘密にしてほしい」みたいなことってあるかな?親にバレたくないとかなんだろうか。

この辺の価値観が全く分からないからアレだけど、少なくとも僕にとっては「体を売って稼げるくらいの度胸があるなら、その事実が露呈するのよりもクラスのゲスい奴に抱かれる方が嫌じゃね?」っていう感覚だったので、この辺は楽しめるかどうかは読者次第と言えそうです。

でも相手の弱みに付け込む奴が出てくるっていう展開はたまらないし、もっと言えばこいつ自身が選ばれた時のリスクヘッジを考えていないっていう浅はかさについても何かを考えさせられるでしょう。

生贄投票 全7巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

最初はゲームに負けた時のペナルティが「死」じゃなくて「社会的な死」っていう部分にめちゃくちゃ興味があって、従来のデスゲームとはまた違ったドキドキ感がありました。ただ、蓋を開けてみたらペナルティが大したことないし、それを回避する方法もそこまできつそうには見えないのでイマイチ入り込めないっていう感じ。

例えば僕がこれに参加していたとして、特殊な性癖やら何やらをバラされても全然平気というか、そもそも社会的な死になってないんですよね。まぁこの辺は人によるんだろうけど、少なくとも「コンビニの商品に穴をあけたりしていたずらしてた」みたいなことって、人として最低ではあるけど社会的な死にはならないじゃないですか?

何も生贄投票じゃなくても自主的にやってる奴がYouTubeにはたくさんいるし。ここのペナルティが怖くないってなってしまうと、本作の楽しみは半減してしまうと思います。

あと「そもそもなんでこんなゲームが始まったのか」的な部分は絶対に言及してほしい。ファンタジーならファンタジーに振り切ってくれれば野暮なことは言わないけど、その辺がちゃんとしてないと「そもそもクラスメイトたちの弱みを首謀者はどうやって集めたの?」とか色々言いたくなる部分が出てきてしまうので。

個人的にはあれこれ言いたくなる展開が多かったけど、絶対に人には知られたくない秘密があるという人なら楽しめるのではないかと思います。

あとがき

怪物と闘う者はその過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。