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「7人のシェイクスピア」を読んだ感想・レビュー

 

「シェイクスピアって何者?」っていう質問をしたとして、多くの人が答えられるほどシェイクスピアってのは人気者なの?僕はそういう知識が全くないので、それこそ中学とかそれくらいの頃に世界史を勉強して「ルネサンス」と呼ばれる時期に活躍した作家ってくらいのイメージでしかないです。

問われる知識も代表作くらいだから、一応「ロミオとジュリエット」「リア王」「ハムレット」くらいは覚えてるけど、それぞれがどんな物語なのかはさっぱり…。そこで知見を広げるという意味でも本作を手に取って読んでみましたが、まぁ面白い。こういう入口だったら世界史も楽しく学べたんじゃないかと思いました。

というわけで今回は、絶対的格差のなかで自由を求めた7人の文豪たちの熱筆疾風録「7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(全6巻)」を紹介します。

 

 

7人のシェイクスピア あらすじ

 

舞台は16世紀、空前の演劇熱に沸くロンドン。当時は生まれながらの身分や、宗教などによる差別や格差が非常に大きかった時代である。そんな中、田舎生まれのランス・カーターという青年がロンドンへと進出した。後のシェイクスピアである。

彼は「ネズミ捕り」「煙突掃除」「馬車の卸者」などの仕事はいずれ無くなるかもしれないが、汗水たらして働く人たちの娯楽は無くならないと確信しており、芝居の世界にこだわった。

 

シェイクスピアと言えば、現代では演劇のみならず、映画やドラマ、漫画やアニメなどに引っ張りだこの人気劇作家であるが、彼は最初から才能を評価されていたわけではない。それどころかランス・カーター、彼1人がシェイクスピアというわけではない。

この物語は「貴族に生まれたわけでもなければ、学があったわけでもないシェイクスピアという人間が、なぜ歴史的な偉業を成し遂げることができたのか」という疑問にスポットを当て、それぞれの分野に長けた7人の集合体がシェイクスピアだったら…というIFの世界を描いた作品である。

 

7人のシェイクスピアの見所をチェック!!

底辺スタートからの成長が楽しめる

 

シェイクスピアっていうと、とりあえず「何をした人かは知らないけど名前は知ってる」って人が大半だと思う。特に厨二男子からしてみれば、シェイクスピアと二酸化マンガンは絶対に忘れられないネーミングだよね(←なんの話だ)。

さて、歴史的に成功している人が主人公の漫画となると、心のどこかに「この人はすごい人だ」という先入観が生まれてしまうから、あんまり気が付かないという人もいるんじゃないかと思うけど、本作のシェイクスピアも最初の頃はガッツリ批判されます。

 

「最初から才能はあったけど、それを評価する人間の目が腐っていた」のか、あるいは「最初は才能こそ感じさせるけど、粗削り過ぎて評価するに値しない作品だった」のか。本作の場合は恐らく後者じゃないかと。

ミュージシャンなんかもそうじゃないですか?最初は良い曲を作っても無名で正当な評価がされにくいけど、一度売れてしまえばデビュー当初に作って散々コキ下ろされた曲も高く評価される的な。

せっかく書いた脚本とかを目の前でびりびりに破かれたシーンとかは、僕みたいな根に持つタイプの読者が読むと「今に見てろよ」って感じの闘志が煽られるような感じです。

 

面白いものが正当な評価を受けるという時代ではない

 

現代でも特定の民族や宗教を弾圧するような作品ってアレだけど、当時はそういう思想が強かったというか、むしろそういう思想しかなかったというか…。

僕は時代背景がよく分からないけど、日本でもキリスト教を禁止していた時代があって踏み絵とかやってたくらいだから、特定の宗教に対する風当たりの強さっていうのは、今では想像もできないくらい強かったと思う。

そんな中、書き物には個人の思想が反映されるし、知らず知らずのうちに宗教の空気感が滲み出てしまうってこともありそうですよね。その辺の危ない橋というか「命を賭けている感」みたいなものの熱量がハンパ無いです。

ところどころにスパイの存在もほのめかされてるし、劇作家として有名になればなるほどやっかみも増えていくでしょう。そんな時にどう乗り越えていくのかっていうのも大きな見所だと思う。

 

あの手この手で取り入る7人のシェイクスピア

 

芸術的なセンスに乏しい僕としては、これらの脚本とか絵とか音楽とかそういうものが「売れるべくして売れている」っていうことに対しても疑問なんだけど、みなさんはどうですか?

例えば、ピカソの絵を見て「これは芸術的センスに溢れている!」って言う人がいたとします。そういう人に対して「それ本当にそう思ってんの?」っていう純粋な疑問があるんですよね。

 

オシャレなんかもそうで、パリコレとかに出てくるような服装がオシャレだっていう感覚が一切わからないし、こういうのは少なくとも「みんながいいって言ってるから人気が出る」みたいな風潮も強いんじゃないかって思う。

それと一緒で、本作でも最初は「こんな駄作、評価に値しない」と言っていた座長なんかが、当初と全く同じ作品を今度は「有名人の推薦状付き」で再評価した場合、すごく高い評価を下すっていうね。

 

それを知ってか知らずか、有名人に推薦状を書いてもらうためには手段を選ばないっていう策略というか、7人がそれぞれ得意なことを目一杯生かしている感じが最高。

劇作家になろうって考える主人公たちだからこそ、自分たちの書いた作品には絶対の自信を持っているだろうし、どんな手を使ってでも這い上がってみせるっていうハングリーさがたまりません。

 

7人のシェイクスピア コミックス序盤を読んだ感想・レビュー

ぶっちゃけ史実に基づいてるかどうかなんてどうでもいいんですよ。面白ければいい。そういう意味では、本作は面白いと思います。

歴史に精通してるような人だと「これには無理がある」とか言いたくなるのかもしれないけど、個人的に歴史なんてのは「誰かによって都合よく塗り替えられている可能性が高い」って思ってるので、300年以上前のことなんか書物1つ出てくれば簡単に覆る程度の歴史だっていう認識です。

 

だったら、面白い新説はいくつあっても面白いと思いませんか?そういう人なら文句無しに楽しめる歴史漫画と言っていいでしょう。逆に「これが新説なんだったら、今史実とされている内容ってどんなんなの?」って興味が湧いて、ググったりとかしますからね。これも知識が身について、決して無駄じゃないと思う。

僕が歴史を勉強したのは中学までだからアレだけど、ただ単にワードサラダを勉強させるよりも、こういうカタチでシェイクスピアが学べたらそれなりに興味を持ったはず。そういう意味では、リアルタイムで世界史を勉強している学生の方にもおすすめしたい作品ですね。

 

あとがき

竜騎士の最強武器ってシェイクスピアの両手持ちらしいよ。

 

 

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