僕にとって面白い漫画を探すときに絶対的なのは「ストーリー概要」なんですよね。もちろん「この漫画家さんは前作が面白かったから」という理由で、前評判も全くなしにコミックスを購入するパターンもあるんですが、基本的には紹介部分が面白いかどうかで選んでます。
そういう意味では、本作ほど紹介部分で心が躍った作品はそうそうないです。トータル的な評価は別にして、物語の導入部分でここまで読者を惹きつける作品は滅多にないんじゃないかと。
というわけで今回は、10年間軟禁された男の復讐劇「オールドボーイ ルーズ戦記(全8巻完結済み)」を紹介します。
※コミックス1巻のみネタバレを含みます。
オールドボーイ ルーズ戦記 あらすじ
施設刑務所と呼ぶのに近い、無機質な個室に軟禁され続けた男がいる。自分がなぜこのような場所に閉じ込められているのか、何の目的で軟禁されているのか、皆目見当が付かない。
部屋にはTVが置かれており、世間から隔離されているとは言え、情報の入手に困ることはなく、食事は中華料理屋からの出前があり、定期的に散髪などもあって身だしなみの管理までされていた。
いずれ自分がここを出る時のことを考え、ストイックに身体を鍛えては犯人に復讐を誓う。そして軟禁されてから10年の月日が経った時、遂に解放される時がやってきた。
オールドボーイの見所をチェック!!
10年間軟禁した犯人の目的とは?
本作の1番の見所は「なぜ殺すでもなく10年に渡って軟禁し続けたか」という点です。主人公は恨みを買った可能性について見当が付かず、犯人についても予想が全く付かないという状況。
もし恨みを買ったのであれば、軟禁じゃなくても方法は色々あるじゃないですか?毎日出前を取ってやるような義理もないし、テレビを見せてやる必要もないわけで…。
つまりセオリー通りに考えるのであれば「私怨じゃない何かの目的で軟禁した」と考えるのが筋です。まぁそれが何なのかは、本作を最終巻まで読んでもらいたいわけですが。
10年って言ったら刑務所に収監される懲役刑でも決して軽い部類の刑罰ではありません。どのような目的で10年間も監禁したのか、外に出さないというだけでそれ相応のもてなしを与えたことに意味はあるのか。本作の大きな見所です。
自分を軟禁した犯人を探る
主人公は10年間軟禁されている間、とある中華料理店の出前を食事として与えられ続けていました。そしてある時、もやしソバに紛れ込んでいた伝票の切れ端に書かれていた「青龍」の文字を見て「この料理は青龍という名前の中華料理店で作られているに違いない!」と推理します。
軟禁を解かれて外の世界に出た時、ひと段落ついてからこの中華料理店を探し始めるんだけど、やり方が超アナログで面白いです。電話帳で青龍という名前の中華料理屋を探して、1軒1軒回って餃子を食べるっていうね。
10年食べ続けた味だから間違うはずがないっていう自信も面白いし、電話帳に載ってた8軒の青龍を総当たりするって発想も面白い。こういう些細な手がかりから犯人に到達していくまでの過程がとにかく面白い作品と言えるでしょう。
オールドボーイ コミックス全8巻を読んだ感想・レビュー
本作は序盤時点での感想と、最後まで読んだ感想とが大きく変わる読者が多いんじゃないかと思いました。個人的には「序盤:やべーなにこれ超おもしれー、読了後:…へ?なにこれ意味わかんね」という感じ。
まず10年も軟禁されていて、その間ずっと復讐するために身体を鍛えて牙を研いでいたっていうのは熱い展開だと思います。で、解放後は少しずつヒントを集めて自分を軟禁した犯人を捜すっていう展開も面白いです。
そして犯人が誰なのか明らかになった時に、驚きが用意されていれば文句がありませんでした。ただ、この手法を使うには監禁されるちょっと前の状況から漫画を描き始めなきゃいけないんで、監禁された状態から始まる本作では使えない手法ではあるんだけど…。
本作の場合だと実際に犯人が明らかになっても何の驚きもないので、サスペンスとしては破綻してるような気がしないでもなかったです。更に謎なのは監禁された理由…ですね。「え、お前、そんな理由で俺のこと監禁したの?10年も!?」というギャグにもならない感じって言うのかな。少なくとも僕には、全く意味がわかりませんでした。
めちゃくちゃ酷評してるけど、序盤の期待感の煽りは超一級品でマジで引き込まれた作品です。Kindle読み放題サービスに加入していれば、最終巻以外は無料で読めるみたいなので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
序盤の面白さ、そして結末の意味不明さについて共感してくれる人が1人でも増えたら嬉しいです。
あとがき
今まで会った人の中で、10年も監禁したいっていう対象は1人もいなかったかなぁ。
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