Wikipediaによると自殺は各国において死因の10位以内に入っているそうです。ぶっちゃけ僕の周りにも自殺してしまった人が何人かいるし、僕自身も自殺しようと思ったことがあります(結局は思っただけで行動すらしてないから未遂でも何でもないけど)。
でも逆に言えば20年以上生きてきて一度も自殺を考えたことがない人の方が珍しいんじゃないかって気もするし、自殺は殺人罪っていう人の気持ちも分かる。でも精神的に不安定だったりするのであれば、自殺を考える人の気持ちも何となく分かるよね。
で、もし自殺未遂者が犯罪者として扱われるとしたら…。生かすでも殺すでもなく島流しにして「あとは死ぬなり生きるなり好きにして」と突き放したら…。というわけで今回は、自殺未遂者が流れ着く島での物語「自殺島(全17巻完結済み)」を紹介します。
自殺島 あらすじ
「自殺島」─それは、自殺を繰り返す“常習指定者”達が送られる島。主人公・セイも自殺未遂の末、その島へと辿り着いた。果たして、セイ達の運命は!?
自殺島の見所をチェック!!
死にたかったはずの人たちが生きようとする姿
一度でも自殺を考えたことがあるという人は、自分が死んだ後のことを考えたことがあると思います。例えば僕自身は小さい頃に親と喧嘩した時なんかは「死んで困らせてやろうかな」って思ったこともあるんだけど、これは自分の死で後悔する親の姿ありきなんですよね。
ぶっちゃけ自殺志願者も、いざ島流しされて「勝手に死んでどうぞ」ってされるのは違うというか、そうされたら生きる方向に頑張るのも分からなくもないです。
本作はついさっきまで死のうとしていた人たちが今は懸命に生きようとしているという矛盾から始まる物語なんだけど、この矛盾こそが本作の魅力であり、単なるサバイバル漫画に終始していない要因の1つと言えるでしょう。
生き抜いていくための協力と衝突
本作は自殺未遂者が集められて島流しにされたというシチュエーションなわけですが、そのコミュニティの共通点は「自殺しようとした人」という一点のみであり、色んな境遇や様々な性格の人が存在します。
そもそも学校生活のクラス然り、部活動然り。もっと言えば同じ会社の部署であっても考えの合わない人というのは存在するわけで、みんながみんな協力的だと思ったら大間違いです。手を取り合う人たちがいるなかで、それを崩壊させる人たちも存在します。
まして一度は死を覚悟した人なわけですから、何をしでかすか分からないという意味では無法者と言ってもいいでしょう。そういう人たち同士の協力や衝突は多くの人間ドラマにつながっていくような気がします。
割と本格的なサバイバル要素あり
本作には割と本格的なサバイバル要素があります。ぶっちゃけ日本のどこかの無人島みたいな感じになっているので、そこまで「水が確保できない」みたいな厳しいサバイバルじゃないんだけど、素人が知識を持ち寄って漁に挑戦する様子なんかは、読んでいてワクワクする展開です。
話が進んでいくにつれて狩りもするようになるんで、さっきまで生きていた動物を食べるという展開や形がある生物を解体して食べるという行動から「生きる」意味を考え直したり…。「自殺島ってタイトルなのに生きようとするんかい!」とか思った僕みたいな読者でも、その壮大なテーマにぐんぐん引き込まれていきます。
自殺島を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
コミックス1巻を読んだ感想・レビュー
「犯罪者を島流しにする」なんて展開は実際にあったことだと言われているし、それをテーマにした漫画も多々あります。本作を描いた森氏も本作を描き終わった後で無法島って作品を書いてるし、似たような作品が多々あるのは事実です。
ぶっちゃけ物語の展開はそれらと似通った部分が多く、想像に容易い展開が多いと感じました。中から食料を奪う奴が出てきたり、女を襲う奴が出てきたり…。でも「自殺しようとしていた人たちが一生懸命生きようとしている」という要素が加わるだけで、かなり新しい空気が入り込むのは面白いの一言に尽きます。
主人公の意識がどう変わっていくのか、似たような境遇の人たちと協力したり衝突したりした結果、どのように歩みを進めていくのか序盤から目が離せません。無法地帯のサバイバルという展開に興味がある人にはおすすめの漫画です。
コミックス全17巻を読んだ感想・レビュー
非常に見ごたえのあるサバイバル漫画でした。
最初こそ「自殺未遂者ばかりを島送りにする」とか「島で力を持った者が暴力で食と女を支配する」みたいな展開が多く、ちょっとイロ物というか不健全な描写が続くんだけど、トータルで見ると最初は死のうとした人たちが生きることに一生懸命になる様子が強くなっていって、かなり見ごたえがあるサバイバル漫画だと思います。
生きていくために手を取り合う人間もいれば相手から奪おうとする人間もいて、それぞれに自分なりの正義じゃないけど譲れない一線みたいなのがあるってのも分かるし…。大切な仲間を殺されて怒りに任せて復讐に走る人間の気持ちとか、苦しい気持ちを押し殺して刃を引っ込める辛さも理解できます。
とにかく「生きる希望」みたいなものを見せるのが非常に巧く、読んでいて先の展開が気になる漫画です。自殺島ってタイトルや冒頭を読んだ感じだとダーク感が満載だけど、トータルで見ると光属性で間違いなし。
あとがき
生きるのも死ぬのも難しい。