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「カレチ」を読んだ感想・レビュー

カレチ表紙
Ⓒカレチ

割と昔の「憧れの職業」みたいなやつだと車掌さんが上位に来ていたようなイメージがあります。もちろんここ10年~20年の話ではなく、もっと昔のウチの親世代だろうけど。

本作は国鉄時代を舞台にした「カレチ」が主人公の漫画です。ノスタルジーな雰囲気の中で紡がれていく人情味溢れるストーリーには、終始心を動かされっぱなし!というわけで今回は、古き良き時代の人情譚「カレチ(全5巻完結済み)」を紹介します。

カレチのあらすじ

カレチ5
Ⓒカレチ

昭和の時代の国鉄を舞台に、プロの仕事とは何かを描き出してきた骨太ドラマ。その最終章「分割民営化」では、国鉄をとりまく環境が激変。累積赤字問題から、国鉄本社が強引に合理化(=リストラ)を押し進める中、新たな人生の選択を迫られ、それぞれの闘いを開始するプロ達の姿を描く。

カレチの見所をチェック!!

カレチ=客扱専務車掌

カレチ1
Ⓒカレチ

僕の住んでいる田舎は電車が1時間に一本とかなんで、電車を利用したことはほとんどありません。だから電車にはあまり馴染みがないんですが、本作のタイトルにあるカレチというのは「長距離列車に乗務する客扱専務車掌」だそうです。

本作はそんなカレチの日常業務を描いた作品で、乗客との触れ合いだったり職場内の衝突など色んな部分からのカレチを描いています。全体的に昭和時代のヒューマンドラマという感じで、読者に感動的なドラマを見せてくれると言っても過言ではありません。

電車にさほど興味がない僕ですら感情を揺さぶられたので、電車に対する思い入れがあるという人なら鉄板だし、そうでない人にも刺さる人間ドラマが堪能できると思います。

情で仕事をするという賛否ありそうなシーン

カレチ2
Ⓒカレチ

良いか悪いかは分からないんだけど、昔の漫画(昔を題材にした漫画)には人情味が溢れるシーンが多く、それこそ人助け的なシーンが多く見られたような気がします。もちろん本作にもそんな情に溢れたシーンが多々登場するわけですが、これらの多くに何かを思わずにはいられません。

例えば電車において時間通りの運行は難しいケースがあると思います。雪や風などの天候的な部分もそうだし、場合によっては人身事故みたいなこともあるかも。そういう時に乗り換え前提で乗車している場合、数分の遅れが積み重なることで目的の乗り換え線に乗れないっていうことも考えられるでしょう。

そういう人に対して「ちょっと間に合わなそうなので次のやつが来るまで待ってください」っていうのは酷な気もするし、でも仕事としてどうしようもない部分だから仕方ないっていう考え方もできます。ここで「一人二人じゃなくて大人数の人が困る」という牽制をすることで、次の電車を待たせるっていう裏技があるとしたら?

当面のお客さんは感謝するかもしれないけど、待たせた先の電車でも似たようなお客さんが出てくる場合もあるし、この辺について自分なりに考えてみることで景色が変わってくるというのも本作の魅力の一つです。

職場内での衝突

カレチ4
Ⓒカレチ

前項の「乗り換え客水増し」の件もそうだけど、ある人が無茶難題を通そうとすることで他の職員にしわ寄せがくるというケースは少なくありません。一人の乗り換え客を助けるために水増しして「乗り換え客十人って言ってなかった?まだ一人しか来ていないけど…」みたいなことになったら、職員同士の信頼関係にもヒビが入りそうな気がします。

それと一緒で電車を緊急停止させる車掌弁を何らかのミスで引いてしまった場合、時間通りの運行を心掛けている運転手からすれば「ふざけんなよ!」って思ってしまうかも。かと言って、それが本当にミスじゃないかどうかを確認なんてしていたら、それが原因で手遅れになってしまう事態も十分にあり得るわけです。

本作ではそんな感じの職員同士の衝突、そしてそれを諭す上司の言葉がめちゃくちゃ重い!色んな考え方があるだろうけど、主人公や登場人物たちと一緒に自分も考えさせられてしまうほど深いテーマに見所がたっぷりです。

カレチ 全5巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

古き良き昭和を感じさせる熱いヒューマンドラマという印象を受けました。お客さんのことを考えてあれこれ無茶をしてしまう主人公っていう縮図には、それが正しいのかどうかっていう判断が難しい部分もあるけど、たまに間違った判断をしているとしても人間味があって良いと思えます。

で、本作は国鉄を舞台にした作品です。鉄道は今はもう民営化されていますが、国鉄という体制が変わる時の激動の日々みたいな部分にもスポットが当てられているので、当時を知っている読者は懐かしさもあって楽しめるでしょうし、当時を知らない読者でも色んな気付きが得られることは間違いないでしょう。

個人的には電車もそんなに乗ったことがないけど、それでもめちゃくちゃ響いてくる作品でした。電車が好きな人、電車にまつわる人情譚が読みたいっていう人には文句なしにおすすめです。

あとがき

カレチの彼氏。