僕はコーヒーもお酒も飲みません。今も昔も「コーラ最高!」くらいの感じなので、あまりコーヒーの香りがどうたらとかコクがどうたらって話は好きじゃありません。
でも香りって思い出とリンクするじゃないですか?「過去に好きだった人の香水の匂いが忘れられない」みたいな気持ちはわかるんで、コーヒーの香りがそういうスイッチになる人も少なくないんだろうなぁと。コーヒーを片手に思い出にふけったという人もいることでしょう。
本記事はそんな人にはぴったりの漫画です。というわけで今回は、幸せを運ぶ移動珈琲店による人情譚「珈琲いかがでしょう(全3巻完結済み)」を紹介します。
珈琲いかがでしょう あらすじ
あなたの為の珈琲を…。幸せを運ぶ移動珈琲物語! いい香りに誘われて向かったその先に待っていたのは、素敵な移動珈琲屋さん。店主が淹れる珈琲は、一杯一杯、丁寧に、誠実に、心を込めて淹れられ、なんだか気持ちがほんのりほぐれるような、そんな味。そのお店はあなたの街にもやってくるかも…?
珈琲いかがでしょうの見所をチェック!!
バーのマスターや居酒屋の大将とのトークのような漫画
本作は移動式珈琲店にて、店長とお客さんのトークや触れ合いがメインとなっているヒューマンドラマです。例えるならバーのマスターとの会話、居酒屋の大将や女将との会話に近いと思います。
移動式珈琲店って見たことがないんだけど、焼き鳥とか焼き芋を売っているような軽トラが珈琲店になっているようなイメージです。タコのイラストが描かれていますが、これも立派な伏線となっています。
日常生活の悩みなんかをコーヒーを飲みながら店長に打ち明け、他愛もない会話から何かしらのヒントを得て、勇気を出して踏み出した一歩が好転するというような雰囲気が素敵です。そっと背中を押してあげる感じの店長の雰囲気は素敵だし、新たな一歩を踏み出すお客さんの姿が眩しく感じます。
ハートウォーミングなエピソードが積み重なっていく
基本的には大筋に1本のメインストーリーがあって、それを核としてショートエピソードが連続していくという感じ。で、コーヒー店の店主と新しいお客さんによって素敵なエピソードが展開されて、徐々に店主の人柄や過去が明かされていくという感じでしょうか。
色んな境遇のキャラクターが登場するんだけど、どれも共感できるような悩みが出てきて、よほど順風満帆に人生を謳歌しているという人でもなければ、必ずや心に響いてくるエピソードばかりです。
例えば「一生懸命、地道にやっていることは誰かが見ている」というのは、一生懸命やっている人にとってはたまらなく嬉しいことではないかと。もしかしたら普段から「作業が遅い、効率が悪い、使えない」と評価を受けていても、ある人からすれば「丁寧、誠実、誠意がある」と映っているかもしれません。そういうエピソードがたくさん登場します。
主人公の秘められた過去
主人公がなぜ珈琲店を開いて旅をしているのか、それには大きな目的があるようです。そして主人公に忍び寄る謎の影…みたいな設定もあり、全3巻にもかかわらず重厚なストーリーが展開されるといっても過言ではありません。
徐々に明かされていく主人公の過去を知ると、まるで珈琲の甘さと苦さが調和しているかのような不思議な気持ちになるはず。まぁ本作の主人公に限らず人生には酸いも甘いもあるんで、珈琲のような感じといえばそうなのかもしれませんが。
いずれにしてもちょっと軟弱そうな絵から想像できるような過去ではないし、割と芯がはっきりしていて読みごたえを感じるという読者がほとんどではないかと思います。少なくとも私はそういう感じの前評判を聞いて本作を読み始めましたが、期待以上に楽しめました。
珈琲いかがでしょう コミックス全3巻を読んだ感想・レビュー
まるでコーヒーのような人情譚って言えば、まさにそんな感じの作品です。時に甘く、時に苦く。なんなら一緒に飲む人がいることで劇的に美味しくなるかもしれないし、淹れ方が適当だと高い豆を使ってもそれなりの味にしかならなかったり…。
最初は絵があまり好きじゃなくて「本当に面白いのかよこれ」くらいのテンションだったけど、最初のエピソードを読んだらもう全3巻ノンストップでした。特に感情を揺さぶられやすい読者だと、最後まで目が離せない展開が続くんじゃないかと思います。
色んなタイプのエピソードがあるんだけど、そのどれもが「分かるわ~」と言いたくなるような要素を持っていて、まるで自分がそのコーヒーを飲んでいるかのような錯覚になるほど。人情譚など温かみのある漫画が好きな人、サクッと読めるドラマのような漫画に興味がある人には文句なしにおすすめです。
あとがき
ここのコーヒーなら飲んでみたい。