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「マエストロ」を読んだ感想・レビュー

マエストロ表紙
Ⓒマエストロ

「有名な「運命」の導入部。皆さんは頭に休符があることをご存じだろうか。じゃじゃじゃじゃーーんではなく、ン・じゃじゃじゃじゃーんなのだ」

これは本作の冒頭で紹介されているものですが、いくらクラシックに興味がなくたって「運命」を知らない人はそうそういないはず。まぁ運命って言われてすぐに出てこなくても、実際に聞けば「あー、この曲ね」ってなる人が大多数でしょう。

「じゃじゃじゃじゃーーん」でしょ。「ン」があるって知ってました?こんな感じで掴みが抜群の音楽漫画です。というわけで今回は、天才指揮者のもとで日本屈指の交響楽団が再結成する音楽漫画「マエストロ(全3巻完結済み)」を紹介します。

マエストロのあらすじ

不況で日本屈指の交響楽団が解散! 食い詰めた連中が謎のジジイ、天道のもとに再結集。これは、身も心も音楽に捧げた者たちが、極上の「運命」と「未完成」を奏でる物語である。手塚治虫文化賞に輝いた傑作『神童』全4巻(小社刊)につづく、感動の音楽漫画です。

ちなみにKindle Unlimited登録者なら無料で読めるのでぜひ読んでみてください(本記事執筆時点で全巻対象です)。

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謎のおじいさんの元に集結する中央交響楽団

マエストロ1
Ⓒマエストロ

本作の主人公は謎のおじいさんと、かつて音楽界の第一線で活躍していた中央交響楽団の面々です。中央交響楽団は不況の煽りを受け、スポンサーの倒産によって解散してしまったという流れ。

それぞれ別のオーケストラに移った者もいれば音楽の道を諦めて再就職した者もおり、そのすべての人間が謎のおじいさんの元に集結し、音楽団を再結成します。

環境を変えても演奏を続けていた者たちにとっては問題ないと思いますが、音楽の道を諦めた者たちにとってはブランクが否定できないスタートです。ちょっとした同窓会のような懐かしさを残しつつ、少しずつ勘を取り戻していくメンバーたちの姿はまさにプロそのもの。

天才指揮者の存在によって大きく変わるオーケストラ

マエストロ2
Ⓒマエストロ

オーケストラ全体を見回したときに、間違いなく一番目立つのは「指揮者」です。とは言え、オーケストラに身を置いたことがない僕にとっては、指揮者なんて「音楽の授業における合唱祭みたいな場でクラスメートたちによって擦り付け合いが行われる、いてもいなくても変わらない存在」くらいの認識でしかありません。

そんなたった一人の指揮者が天才というだけで、オーケストラの姿が劇的に変わる様子が描かれています。まるで指揮棒を振る挙動の1つ1つが、彼らのブランクを埋めていくかのようだと言っても過言ではないでしょう。

楽器に関する解説が興味深い

マエストロ3
Ⓒマエストロ

学生時代に吹奏楽をやっていたとか、あるいはクラシック音楽に興味があるという人は別にして、多くの人は「楽器名くらいは聞いたことがあっても、それがどんな楽器なのかを正確に把握できていない」のではないかと思います。ぶっちゃけ僕なんかトランペットとトロンボーンの区別すら付いてないです。

そんな僕が読んでも楽しめるように、各楽器の特徴なんかを分かりやすく説明してくれているのも本作の見所の1つ。楽器それぞれの個性とか、演奏において難しいポイントなんかを解説してくれているので、素人目にも「ただ音を出すだけじゃだめなんだな」っていうのが分かります。

1つ1つのパートに的確なアドバイスをしていく天才指揮者

マエストロ4
Ⓒマエストロ

オーケストラの中には色んな人間がいるので、自信家で高飛車な奴もいれば、過去の失敗に囚われて自信がなくなっている弱気な人間もいます。それらの個性を踏まえたうえで、それぞれに的確なアドバイスをしていく天才指揮者の姿は必見です。

まるで出来る上司のような観察眼と、相手のモチベーションを向上させるキッカケ作りに長けていて、読者を夢中にさせてくれます。しかも自身に才能があって周りも引き上げるという神のような存在なのに、人格にやや難ありという雰囲気を持っているのがまた良い要素なんですよね。

それぞれのパートとのコミュニケーションは人間ドラマのような雰囲気を持っており、演奏以外の部分にも大きな見所の詰まった音楽漫画だと思います。

マエストロ 全3巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

端的に言ってめちゃくちゃ面白いです。オーケストラの漫画といえば「のだめ」が脚光を浴びたけど、個人的にはこっちを実写化してもめちゃくちゃ流行ったんじゃないかって思ってます。

ちょっと古めかしい絵が気になるって人もいるかも分かりませんが、その程度の理由で本作を見送るのは勿体なさすぎる。音楽にまったく興味がないという人が本作を読んで楽しめるかどうかは分からないけど、のだめが楽しめたって人なら本作も楽しめるはず。

音楽やってる時の真剣さもそうだし、私生活の時の人間ドラマなんかにも見応えばっちりで「なぜこのタイミングで、一度解散している音楽団を再結成したのか。その目的は何なのか」って部分も含めて、グイグイ引き込まれる全3巻です。

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あとがき

じゃじゃじゃじゃーーんではなく、ン・じゃじゃじゃじゃーんなのだ。