ある程度の年齢になった男性読者からすると、あからさまなキュンキュン系の恋愛漫画は響いてこなかったりもします。そして絵に描いたようなハッピーエンドに嫌悪感を持ってしまうという人も少なくないのでは?かと言ってドロドロすぎるのも違うっていうね。
本作はリアリティを感じられる恋愛日常漫画で、特に大人の読者におすすめしたい作品です。というわけで今回は、ベテランカップルに訪れる急展開が目まぐるしい「にこたま(全5巻完結済み)」を紹介します。
※コミックス1巻部分のみネタバレあります。
にこたま あらすじ
いい年齢(トシ)だけど大人じゃなくて、仲良しだけど踏み切れなくて……私たち29歳で最後の思春期迎えます。交際9年・同棲5年の浅尾温子(あっちゃん)と岩城晃平(コーヘー)。仕事、結婚、子作り、アレコレ……三十路直前に訪れた最後の思春期、ゆらぐゆらめく第三次性徴白書!
にこたまの見所をチェック!!
その辺の新婚夫婦よりも付き合いの長いカップルが主役
二十歳の頃から交際していて、交際9年・同棲5年というベテランと呼んでも差し支えないくらいのキャリアを持っている2人が主人公です。ここまでくるとその辺の新婚夫婦よりも付き合いが長いんじゃないかって思うんだけど、年齢が29歳に差し掛かったということもあって様々な心境の変化が訪れます。
世間でも一昔前と比べて晩婚化が進んでるとは言われているけど、子供を産もうと思ったら若い方が有利な面も多々あるわけで…。そういう部分に無頓着な男と、冷静になって考えたときに気持ちが揺れ動き始めた女の物語という感じ。
ジャンルとしては恋愛漫画かもしれないけど、日常漫画っぽさも全面的に出ています。少なくともキュンキュンできるタイプの作品ではなく、大人向けの恋愛漫画と言っていいでしょう。
浮気相手が妊娠してしまうというトンデモ展開
主人公の男の方が会社の上司と浮気をしていて、その上司が妊娠してしまうっていうトンデモ展開です。で、こういう場合は普通であれば「今付き合ってる彼女と別れろ」みたいな展開になると思うんだけど、本作のケースは全然そんなんじゃないのが逆に怖いという感じ。
「あなたの子で間違いないけど検査とかで証明するつもりはないし、私は私で勝手に産んで育てるので特に心配いりません」というドライな対応をされるっていうね。これが吉なのか凶なのかって話です。
気を遣って言ってるのかもしれないし、ゲスい奴なら「彼女にバレなくてラッキー」くらいに思うのかもしれないけど、多くの人はそうやって冷たく対応するっていうのも無理じゃないかと思うし…そもそも女上司だし。こんな感じの波乱の幕開けに注目してみてください。
彼のとった行動、そして彼女の反応は?
とりあえず浮気相手の言うことは真に受けず、自分なりに真摯に向き合うことを決意するという方向になるわけですが、それを聞いた彼女の反応とかが大きな見所です。ぶっちゃけ9年も付き合っていると、1回や2回の浮気で別れるっていう選択肢が取りにくいっていうのもあるんじゃないかと思います。
これが既に結婚していて、ある程度相手に対して冷めた感情みたいなものを持っているって状態なら、慰謝料貰って別れるっていう発想も出てくるんだろうけど、当たり前のように「この人と結婚する」って思ってただろうからなぁ。
いずれにしても彼の性格的には「どうしていいか分からないけど無責任なことはできない」という感じ。彼女からすれば「具体的にどうするかが決まってない=無責任」っていう辛辣な言葉も出てきそうだけど、それに対して彼と彼女がどういう決断をするかに注目です。
にこたま コミックス全5巻を読んだ感想・レビュー
結婚適齢期と呼ばれている年齢に差し掛かっていて、現在恋人がいて、あとは結婚のきっかけを待つだけっていうシチュエーションの人にめちゃくちゃ刺さる漫画だと思いました。
ぶっちゃけ面白いっていう表現が適切なのか分からないくらい結構重い話です。似たような経験をした女性はたくさんいると思うし、そういう人からすれば全編読む前にBADの嵐じゃないかと。そうじゃなくても女性からすればモヤモヤを感じる場面が少なくないかもしれません。
結末に関しては賛否あるかと思いますが、建前とか理想と離れた現実味のある着地点だったんじゃないかと思います。僕はこんな感じの境遇になったことが未だにないけど、物凄くリアリティを感じる恋愛日常漫画でした。大人の読者におすすめしたい作品です。
あとがき
「三十路直前に訪れた最後の思春期」って触れ込みがドンピシャ。