「ハーラーダービー」を読んだ感想・レビュー

ハーラーダービー表紙
Ⓒハーラーダービー

大谷選手がピッチャーをやるときは心が躍るし、もし好成績でマウンドを降りるような場合は絶対に勝ってほしいと思って応援しています。でも例え大谷選手がマウンドを降りる時点では勝っていても、その後のピッチャーが打たれて勝ち星が付かないみたいなことは珍しいことではありません。

一回や二回ならそれもまぁ仕方ないとして、じゃあこれが何度も続いたときに本人はどういう気持ちになるんでしょうか。本作はそんな感じでエースピッチャーのデリケートな部分を深掘りしている作品です。

というわけで今回は、ちょっと趣旨の違う八百長野球漫画「ハーラーダービー(連載中)」を紹介します。

著:森高夕次, 著:水上あきら
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ハーラーダービーのあらすじ

ハーラーダービー1
Ⓒハーラーダービー

ワザと打たれる投手?コンプラ的大問題作! 「なぜ自分が先発する試合は、味方が打ってくれないのか?」 球界屈指の実力投手・周米留斗(シュウ・ベルト)は人知れず悩んでいた…そして相棒である捕手・猛津亜流人(モウツ・アルト)と、ある企みを共有する。それは、相手に「わざと」打たせて試合の「流れ」を自らコントロールするという、いわば八百長行為と言えるモノだった…前代未聞の野球漫画、ここに生まれる!!

ハーラーダービーの見所をチェック!!

ちょっと違う感がある八百長野球

ハーラーダービー2
Ⓒハーラーダービー

野球に限らず団体競技のほとんどって、個人成績がチーム成績に反映するとは限らないじゃないですか?だから野球を見ていてモヤモヤしてしまうことの一つが「抜群の防御率を誇っているエースが必ずしも最多勝投手とは限らない」という点です。

まぁこれはチーム成績とかお給料に関しても言えることで、仮に首位打者とかホームラン王のタイトルを獲っていてもチーム順位が低いせいでお給料に反映されず、自分より成績が悪いのに人気球団にいるからお給料が高いみたいな話もあるからアレだけど。

でもエースとしては「自分の日に点数が入らない」ってなると色々考えたくなるだろうし、「0-0の投手戦よりも2-2とか3-3みたいに失点してた方が流れが来る」っていう感じのオカルトを言い出したくなる気持ちも理解できます。

本作はリーグトップの防御率を誇るのに最多勝には遠く及ばないエースが、いかに勝ち星を積み重ねていくかを実力以外の面からあれこれ実験していくという野球漫画です。この今までになかった感がたまりません。

自分の実力以外の部分も視野に入れた戦略

ハーラーダービー3
Ⓒハーラーダービー

野球以外の競技でもジャッジをするのに最先端技術を使う場面が増えてきましたが、野球に関してはリクエストっていう機能がありながらも、まだまだ審判によるジャッジが大部分を占めています。

で、プロ野球を見ているとストライクの取り方にも審判のクセが出るし、一貫してるならまだいいんだけど「さっきはボールで今回はストライク」みたいなケースも少なくありません。ましてセーフかアウトかっていう判断を間違うこともあるし、酷いときにはどう見たっておかしいっていう判定をされることも。

まぁ審判も人間だから知らない所で「好きな球団、好きな選手、体調の良し悪し」みたいな部分があるのかもしれないし、ある程度の誤審はヒューマンエラーだから仕方ないと思うんです。でもそれを戦略に落とし込んでくるとは夢にも思いませんでした。

それも「この主審は低めを取りやすい」とか「ストライクからボールになる球を取りやすい」とかそんなんじゃなくて、「初孫が見たくて早く帰りたい」とかめちゃくちゃでしょ。これにはニヤニヤさせられること間違いなし。

根拠のあるデータに基づいた考察

ハーラーダービー4
Ⓒハーラーダービー

ノーアウト満塁の攻撃側からしたら少なくとも一点は取ってほしいっていう場面だと思うんだけど、バッターの中にも「ヒットじゃなくて犠牲フライでも一点」みたいな考えが出てくるはず。

ヒットなんて打とうと思っても10回に3回とかしか打てないのに、そこで犠牲フライなんて考えだしたら弱気になって思うような結果が出ないってこともありそうな気がしませんか?だったら「犠牲フライを狙うよりも、ヒットを狙ったんだけど結果的に犠牲フライになった」っていう方が確率は高いような気もするんです。

ちなみにこれ「ノーアウト三塁、ノーアウト二塁三塁、ノーアウト一塁三塁、ノーアウト満塁」のすべての場面で点が入る確率は85%とのこと。こういうデータを用意して理詰めで解説してくれる場面もあって、本当に良い意味で今までに見たことがないタイプの野球漫画だと思いました。

よく「ピンチの後にチャンスが来る」みたいなことも言ったりすると思うんだけど、こういうのも気のせいなのかデータ的にそうなっているのかっていう解説もあって、オカルトチックな部分とデータ重視の部分のバランスが秀逸な作品です。

ハーラーダービー 1巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

表紙を見た感じではちょっと古い雰囲気を感じて、ぶっちゃけ「今さら消える魔球とかやられてもなぁ…」みたいに思ってたけど、あらすじを読んで面白そうだなって思って実際に読んでみたら想像を絶する面白さでした。

最近だとメジャーリーガーのニュースなんかも頻繁に流れるので、「7回2失点で切り抜けるも後続が打たれてしまい…」みたいなことを聞く機会が誰しもあると思うんです。こういうのを聞くとリリーフもわざと打たれたわけじゃないにしても、僕だって先発投手が勝てなかったのは残念だし、当の本人はもっと悔しい思いをしていると思います。

そういう部分にスポットを当てていて、それを面白おかしくしているっていうのがめちゃくちゃ刺さりました。そもそも投手戦の均衡を崩すためにあえて失点するっていう根拠のないオカルトな考えを持ちながら、その奥でデータから考え尽くされている理論があって、これが喧嘩してないっていうのがもう既に面白いです。

野球が好きな人、ちょっと変わった野球漫画が読みたい人、心理戦や頭脳戦が好きな人におすすめします。

あとがき

わざと打たれるっていうのも難しそう。

著:森高夕次, 著:水上あきら
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