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「ルックバック」を読んだ感想・レビュー

ルックバック
Ⓒルックバック

今や飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット作を連発している藤本タツキ氏。「ファイアパンチ」もそうだし「チェンソーマン」もそう。そしてこの読み切りは漫画ファンじゃない人の関心も一気に引き付けました。

個人的なことを言うと、コミックス1巻の読み切り作品でここまで心を突き動かされるとは夢にも思わなかったし、アプリで読んでから電子書籍版の単行本を買った後、さらにその足で本屋に走ったからね。

とにかく多くの人に読んでもらいたい作品です。というわけで今回は、藤本タツキ氏による青春長編読切「ルックバック(全1巻完結済み)」を紹介します。

一応本記事はネタバレを極力伏せて紹介しているつもりですが、本作は余計な情報や先入観を入れずに読むことをおすすめしたい漫画作品です。

ルックバックのあらすじ

自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって――。唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。

ルックバックの見所をチェック!!

少し調子乗りの女の子が主人公

ルックバック1
Ⓒルックバック

あなたにも幼少の頃は特に「他の人よりも得意なことでチヤホヤされた経験」みたいなものがあると思います。というか小学生くらいの頃って自分は何にでもなれるって思ってたなぁ…。それこそバルサに入るかヤンキースに入るかで悩んじゃうくらい。

で、これがいかにおめでたい思考回路かっていうのと同時に、子供らしさというか活力みたいなものを感じさせられるんですよね。ぶっちゃけ大人になった今はこういう感情ってほとんどないので、おめでたいくらいがちょうどいいのかなって思ったりもします。

本作はそんな感じのいわゆる子供らしい子供と、ちょっと変わった不登校の子供が「漫画」で繋がりを持つことになるっていうストーリーです。漫画家が漫画をテーマに描く作品ってすごい説得力を持つ作品がただでさえ多いのに、本作はそれを1巻に凝縮してるのがやばい。控えめに言って語彙力を失うくらい超やばい。

子供ながらの辛辣さと純粋さ

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とある界隈では「学校に行くべきか、行かなくてもいいか」みたいなことで盛り上がってた(現在進行形?)ような気がするんだけど、僕が小学生の頃にも不登校の子はクラスに一人くらいは普通にいて、僕はただ漠然と「なんで来ないんだろう」って思ってました。

で、別に学校に来ない子に対して特別な感情は抱いたことがなく、でもしいて言えば「勉強しなくていいからずるい、毎日好きなことがやれてずるい」くらいの感じだったと思います。本当に何も思ったことがないし、当時は家が近いっていう理由だけでプリントとかを持って行かされることも疎ましく感じていませんでした(むしろ頼りにされてるって思ってたかも)。

もしこれが今の自分の立ち位置を脅かすような存在だった時に、それに対してどう思うかですよね。例えば「自分はクラスの人気者で、サッカーはだれにも負けない!」みたいな奴が、不登校の子とコミュニケーションのつもりでサッカーをやったらボロ負けした…みたいな時の感情ったら何とも言えません。

少しの差なら「あいつには負けねー!」みたいにもなるんだろうけど、「完膚なきまでにやられるほどの才能差を見せつけられたとしたら自分だったらどうするか」って考えさせられました。子供の頃は誰しもが持っていたであろう感情っていう意味で、とにかく深すぎるくらいに深い心理描写に見応えたっぷりです。

嫉妬や悔しさが入り混じる感情とそのぶつけ先

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例えばサッカー部に所属している少年がいて、クラスどころか学年でも一番上手いっていう子が転校生に敵わなかったっていう場面に近いかな。どっちも上手いでいいのに、なぜか二番目でも三番目でもない奴が好き勝手言うっていうね。

得てして自分がそれなりに実績や自信を持っているものに対し、勝手に他者と比較されて貶されるっていうのは誰もが嫌な気持ちになるんじゃないでしょうか。でもこれって小学生の頃くらいだと割とよく見る光景だったような気がします。

しかもそれって少しの差でも悔しいし、大きすぎる差でも悔しいんですよね。特に後者だともう頑張れない可能性まであるし。小学生ながらに圧倒的な差を見せつけられるほどの才能と対峙したとき自分ならどうするか。そしてそこから回り始める運命の歯車って感じの作品です。

ルックバックを読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

この作品は読み切りとして発表された時点でめちゃくちゃ話題になった作品です。まぁ作品として面白いのは言うまでもなく、でもそれ以上に「読み切りと単行本で内容が差し替えられる」というような問題で超話題になりました。

個人的には読み切り作品を読んだ段階で「そんな不適切な表現ってあった?」みたいに思ったし、漫画好きな友達と一緒に「あのシーンじゃね?ここじゃね?」みたいに喋ってたものの、まぁ割と見当違いなことを言ってしまったくらい。

さて、肝心の内容についてはめちゃくちゃ面白かった!個人的には流行った作品に対して「そんなに面白いか?」って言うことが多い方なので、この作品が面白いっていうことで多くの人とそれを語れたことがめちゃくちゃ嬉しかったくらいです。

読んでて思わず声が出ました。ギャグじゃないのにカッコ良すぎてニヤニヤしちゃうシーンもありました。涙は出ないんだけど感動させられたし、電子書籍で購入したのに紙でも持っておきたいと思わされたのも久々でした。ここまでくると面白すぎてネタバレしたくない作品と言っていいかも。

とりあえず本作は、僕にとっても久々にぜひ多くの人に読んでほしいと思った作品です。こんな紹介記事をブログにアップしといてアレだけど、本作は事前情報をあまり入れずに読んだほうが楽しめるんじゃないかと思います。

あとがき

元々、紙で持っていた漫画を電子書籍で買い直すっていうパターンはめちゃくちゃあるけど、電子書籍で読んだ後で紙の本を買ったのはこれが初めてかも。