僕には何名か「作者がこの人ってだけで、前評判は微妙でも漫画は全巻揃える」という漫画家さんがいるんですけど、そのうちの1人が本作の原作を担当している岩明均氏です。
本作は織田信長がめちゃくちゃやっていた時代の話。実写化も可能じゃないかって思うくらいの本格派なんだけど、しっかりと女剣士とか影武者とか読者がワクワクする要素も入ってます。
スポットが当たってるのも織田信長とか徳川家康じゃなく、武田信玄!…の孫の武田信勝ってのが堪らない。というわけで今回は「レイリ(全6巻完結済み)」を紹介します。
レイリ あらすじ
時は1575年。織田信長・徳川家康の軍勢35000と、武田勝頼の軍勢15000がぶつかり、鉄砲を上手く使った織田軍が勝利した。これを長篠の戦いという。
レイリは百姓の所の長女として生まれ、家族4人で仲睦まじく暮らしていた。しかしある日、長篠の戦いにおける残党狩りから「女、子供を判別できないくらい痛めつけた首なら、バレずに報奨が貰える」と言われ、命を狙われてしまう。
父は家族を守ろうとして真っ先に殺されてしまい、母も子供たちを守るために殺されてしまった。レイリと弟は走って逃げたが残党狩りに追いつかれてしまい、弟も姉のレイリを守るために命を投げ出して戦った。
レイリは何とか命拾いをし、武田家家臣の岡部丹波守に育てられることとなる。剣術の腕も男勝りに育っていったが、ある日の賭け試合で武田家一の剣豪・土屋惣三に惨敗を喫してしまった。負けはしたものの、土屋惣三に身請けされたレイリ。その先で待っていたのは武田信玄の孫・武田信勝の影武者としての役割だった。
レイリの見所をチェック!!
残酷なスタートを切る物語の行く末
本作の主人公は強いとは言っても女の子。周りの農民には剣術で勝てても、さすがに戦場に出てくるような武士には勝てないんじゃないかなぁって思うじゃないですか?
ぶっちゃけレイリは勝つ・負けるが目的じゃなくて「死に急いでいる」みたいな感があります。幼くして家族を殺され「自分も早くそこに行きたい」みたいな感じです。でも物語の結末を予想した時に、戦に突っ込んでって無残に散るってのも成立しないし…。かと言って、男を何人も斬り倒すって感じの作風でもありません。
少なくとも「織田信長→明智光秀→豊臣秀吉→徳川家康」っていう大筋の流れは歴史の授業で分かってるんで、武田家に仕えるレイリにどんな結末を迎えるのかってことを考えたら、序盤からワクワクが止まらないです。
武田信勝チョイスが渋い
武田信玄は有名じゃないですか?で、その息子の武田勝頼もまぁまぁ有名だと思う。でもその息子の武田信勝を知ってる人って、よっぽど歴史が好きな人じゃないかと思うんですよね。
僕は名前を知ってる程度で具体的にどんな人だったかまでは全然知らなかったんだけど、そういう僕みたいな読者は知識の一つとして勉強になると思います。歴史漫画で題材にされるような戦国武将って決まってるようなもんだけど、その中で武田信勝をチョイスしてくるあたりは渋いよね、渋すぎる。
ある程度の史実に基いた歴史漫画って、ネタバレじゃないけど何がどうなるかっていうのが歴史の勉強で分かってるわけで…武田信勝みたいにあまり知らない部分にスポットを当ててくれると、そこから見る信長とか家康の感じがまた新鮮に楽しめると思います。
影武者の女剣士っていう展開が胸熱
基本は史実に則って物語が進んでも、そこにひとつまみのIFを入れて欲しいというか…。「まんま史実じゃなくても良くね?」って思う僕にとっては、主人公が女剣士かつ影武者ってだけで胸熱。レイリが剣術や身のこなしで信勝をフォローし、信勝は信玄仕込みの軍才を発揮する…。こんなん面白いに決まってるでしょ。
ちょっと「レイリ強過ぎね?」って部分もあるけど、まぁ本格派歴史ドラマとしての許容範囲だと思います。少なくとも現実離れしすぎて冷めるって感じはないです。
レイリ コミックス全6巻を読んだ感想・レビュー
入り口は「岩明均氏が関わってる作品だから」っていうライトな感じだったけど、思い返せば1巻を読んだ後で「これはドハマリするやつだ…」と思い、完結するまで待ってました。
導入部分が飛散すぎてどうなるんだろうと不安しかなかったものの、蓋を開けてみれば非常に上手く誘導されて、レイリの世界観を堪能できたと思います。本音を言えばもうちょい読みたかった!でも物語のテンポといい、アップダウンといい、文句の付け所がないから辞め時も完璧だったんだろうなって感じ。
歴史漫画が好きな人には読んでもらいたいし、ちょっとした歴史背景を知るのにも最適かと。信長側から見てばっかりだとちょっと偏ってくるからね。全6巻で一気読みも可能なのでおすすめです。
あとがき
いつも傍にいて欲しいってことで零里(レイリ)ってかっこいいね。