筒井哲也氏の作品は「ダズハント」「マンホール」で夢中になりました。その後は「有害都市」などの過激な社会派作品を手掛けているんだけど、どれも短い巻数で綺麗に完結しているから読みやすいのが特徴。
でもやっぱり1番有名で人気が高いのは、この「予告犯」なんじゃないかと。Youtuberがやたらと話題になる現代において、この手のストーリーは多くの人を引き付けるのでは?
そこで今回は、現代テロリズムを描いたサスペンススリラー「予告犯(全3巻)」を紹介したいと思います。
予告犯 あらすじ
シンブンシと名乗る男が動画サイトで配信している動画を通じて何かしらの犯行予告を行い、その通りに実行する様子を描いた作品。動画の閲覧者は他人事と言わんばかりに盛り上がり、警察はシンブンシを追い、シンブンシは警察の捜査をかわしながら幾度となく犯行予告を行う。
しかしシンブンシには完全に逃げようとしている様子は無く、適度に痕跡を残しながらわざと発見されるように仕向けているようにも思えた。果たしてシンブンシの真の狙いは何なのか。
予告犯の登場人物
ゲイツ
IT業界で働いた経験があるということでゲイツと呼ばれている。
物凄く冷酷な一面を持っているが、仲間想いの温かい一面も。
カンサイ
大阪出身だからカンサイ。音楽の道を目指していたが挫折した。
ファンの人から貰ったという青酸カリの入ったペンダントを持っている。
メタボ
31歳だが日頃の不摂生がたたって腹が出ているため、メタボと呼ばれている。
パチスロにハマって実家の工務店を引き継ぐことを諦めた。
ノビタ
口数が少なく、女性恐怖症で引きこもり。
父親を亡くしたことをキッカケに働きに出ることを決意した。
ヒョロ
フィリピン出身の日系人。
母親が死ぬ間際に残した言葉で自分の父親が日本人であることを知り、父親を探して日本にやってきた。
吉野 絵里香
シンブンシを追っている警察の中心人物。
エリートであり、とにかくシンブンシの事件に強く執着している。
予告犯の見所をチェック!!
シンブンシは正義か、それとも悪か
本作で描かれているテロリズムは基本的には私刑と呼ばれる報復行為で、ノリ的には「社会が裁かないなら俺が裁いてやる」的なもの。
例えば、最近特に多いYoutuberの炎上騒動とかですね。人様に迷惑をかける配信者ってのも多いし、面白いと思ってやってSNSに動画をアップしたら炎上したってことも多いんだけど、逮捕される人もいれば謝罪動画をアップしてその再生数で更にメシウマっていう人もいるわけで。
そういう人物に報復するって行為は法律的には完全にアウトなんだけど、動画の閲覧者はどう見てるかってのが何とも言えないくらいリアル。
「目には目を、歯には歯を」をテーマにした私刑
ちょっと前に多くニュースになった飯テロ系ね。飲食店のアルバイトが悪ふざけした様子を自身のSNSにアップして大きな騒ぎに発展した的なやつ。
僕の記憶では牛丼チェーン店の店員がメガ盛りだかの更に上のメニューを作ったとか何とかで炎上してたのが記憶に残ってるんだけど、本作ではゴ〇ブリを揚げるっていうことをした人物が登場します。
その人物に対して「目には目を、歯には歯を」の精神で報復行為を行うっていう少し過激な内容。「食いたかったから作ったんだろ?じゃあ食わせてやるよ」的な怖いやーつで、想像するだけで鳥肌が…。
揺れ動く犯人像
警察は配信された動画を手掛かりにシンブンシの行方を追うことになるんだけど、手始めにシンブンシの背格好から体型を割り出そうとするも、多くの目撃証言に食い違いが出たりして捜査は難航します。
実際に私刑に遭った人物から話を聞くも、やせ型と言われたり小太りだと言われたり…。ただし所々に証拠も残していて、操作をかく乱させる目的はあっても最後まで逃げ切ろうと思っているような感じではないというミステリーさが光ります。
予告犯 全3巻を読んだ感想・レビュー
いつだって野次馬は無責任で面白がっている感じがすごくリアルだし、警察も国家公務員としての使命に燃えてというよりも、私怨みたいな部分が感じられてすごくリアルだと思った。
真相に徐々に迫っていく感じもスリリングで、徐々に迫っていく感じがたまらないんですよね。よくありがちな「ちょっと過激な内容を描いて注目だけ集めとこう」的な作品に終わってないというか、全3巻なのにすごくまとまった綺麗なストーリーだと思う。
見せしめ的な犯行だと思いきや、その裏に隠された真実に気付くとスッキリします。いたずらにグロい場面があるわけでもないし多くの人にオススメ。
物語は「予告犯 THE COPYCAT」へと続く
Amazonとかで「予告犯」って入れて検索すると、似たような作品がもう1つ出てくるんだけど、そっちは予告犯の後の世界をテーマにした物語です。
早い話が予告犯の模倣犯的な感じで、いわゆる「シンブンシたちに影響を受けた他の人間の物語」ってことになります。続編っちゃ続編なんだけど、正確には続編じゃないです。
オリジナルには壮大なサスペンス要素があったけど、こちらは愉快犯というか真似事をしている感が強いと思いました。まぁ僕が感じたような事がkindleのレビューにそのまま書かれてるんで、ここでは省略します。
作者はシマウマなどで知られる小幡先生なのでグロ描写は安定。何かしらの悪いことをした人間に制裁を与えるっていう、一種の因果応報みたいなものが好きな人なら楽しめるかと。
あとがき
飲食店の順番待ちで入口の紙に「ネルソン・カトー・リカルテ」とか書き始めたら、もう手遅れ(偽名を書くのは犯罪っぽいので、良い子のみんなはマネしないこと)。
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