表紙絵といいタイトルといい、男性読者なら間違いなく連想してしまうものがあると思います。ただしそれを期待して読み始めてしまうと、もしかしたら裏切りという名の落とし穴にハマってしまうかもしれません。
というわけで今回は、広い意味での性にスポットを当てた短編集「女の穴(全1巻完結済み)」を紹介します。
女の穴のあらすじ
『女の穴』:自分は宇宙人で、地球人の子どもを作るよう命じられているので自分と寝てほしい…と担任教師に迫る女子高生の虚無。『女の頭』:禁断の想いが抑えきれず、死んだ兄を人面疽として後頭部に寄生させ続ける妹の純愛。『女の豚』:ハゲでチビでデブで同性愛者の中年男性教師を、豚扱いしていたぶり続ける女子高生の倒錯した愛。……女は不思議で、怖ろしくて、いやらしくて、そして愛おしい……。「コミックリュウ」誌上での掲載時から、独特の感性を持った女流新鋭として各方面より絶賛されたふみふみこ、記念すべきファーストコミックス。前記3作品に加えて、『女の豚』を別視点で描いた意欲作『女の鬼』40pを描き下ろし。
- 女の穴
- 女の頭
- 女の豚
- 女の鬼
以上の4編が収録された短編集です。作者のふみふみこ氏は「ぼくらのへんたい」が有名。
女の穴の見所をチェック!!
女の穴
タイトル的にちょっとやらしい物語じゃないかって思うかもしれないけど、かなり不思議な世界観を持った物語です。実際にやらしいシーンもあるし、先生と女子高生っていうシチュエーションのお膳立てがあるにもかかわらず、全然エッチな感じがないっていうね。
簡単に説明すると地球人の子供を身ごもりたい宇宙人の話で、とにかく謎めいている雰囲気がたまりません。面白いとも言い難いし何が魅力なのかは説明できないんだけど、もしかしたらシュールな雰囲気が心地良いのかも。
きっと読者の数だけ感想が分かれるような作品です。なんとも表現しがたい魅力があって、本短編集の掴みとしてはばっちりなエピソードだと思いました。
女の頭
ちょっとオカルトチックなエピソードで、死んでしまった兄が自分の後頭部に寄生したっていう感じの物語。こんな奇天烈な設定があるのにもかかわらず、描かれているのは兄妹愛とか純愛だったりするから読んでいて戸惑いがハンパないです。
ギャグっぽいのは設定だけで、あとは非常に真面目な恋愛観が描かれています。ご飯を食べるだけじゃなくて会話もできるので、場合によっては妹を守るための発言をしたりしなかったり。
血の繋がった兄妹がお互いに恋愛感情を持つとか、肉体関係を結ぶっていうことに対して一定の気持ち悪さというか拒絶感みたいなものを感じたんだけど、そもそも後頭部に死んだ兄が住み着いてるっていう設定よな。
女の豚
穴、頭と来て「登場する女性の体の部位に特化したエピソードが展開されるのでは?」なんて思ってたら、ここにきてまさかの豚っていうね。本作は弱みを握られた中年男性教師と弱みを握った女子高生のやりとりを描いた物語です。
とある男子生徒のことが好きで、放課後に彼の机に向かって性欲を発散するっていう行為そのものにドン引きしたら最後、あとはこのエピソードがどういう決着をつけるのかが気になって仕方ありません。
女子高生に弱みを握られ、その弱みを武器にあれこれ強要されて虐げられるという展開は、Mっ気のある男性にはたまらない展開じゃないかと思うんだけど、この中年男性は同性愛者だからなぁ。いずれにしてもすごく複雑な恋愛観が混じりあっていて、未知の世界を覗くような興奮のあるエピソードです。
女の穴を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
本作を読んで思ったのは「愛情表現の形は人それぞれ」っていうことでした。よく小学校低学年くらいの男の子は好きな女の子に意地悪をしたくなる的なことを言うじゃないですか?そういうやつの物珍しいやつをかき集めて構成された短編集っていう感じ。
僕からすると同性愛っていうのも少し理解しにくい部分があって、しかもそこにオカルト要素とか不純物が入ってくるから、自分の頭の中でも整理が追い付いてこないんですよね。そんなフワフワした状態で読み進めてるもんだから、暑いのか寒いのかも分からない不思議な感覚が楽しめました。
とりあえずタイトルから想像できるようなゲスい下ネタ漫画っていうんじゃなかったし、性的な描写はあるけど全然エロくない。性行為とかじゃなくて広い意味での性・ジェンダーを表現した短編集だと思います。
一風変わった恋愛もの、かなり特殊な性癖のようなものを覗きたいという人におすすめです。
あとがき
未知の世界過ぎて読了後は心に穴が開くかも。