7日後に必ず死を迎えるとしたらあなたはどうしますか?「明日、世界が滅ぶとしたら?」みたいなIFは残された時間が少ないからパッと決められるんだけど、7日って言われるとなかなか決めるの難しくないですかね。
本作は大学の卒業旅行を期に死の連鎖に巻き込まれてしまう大学生たちの物語です。死までのカウントダウンは徐々に加速していくので、それに伴って恐怖感や焦燥感も煽られていきます。それが魅力のオカルト・ホラー作品と言っていいでしょう。
というわけで今回は、死までの7日間を描いた戦慄の異形ホラー「クダンノゴトシ(全6巻完結済み)」紹介します。
クダンノゴトシ あらすじ
卒業旅行帰りの大学生7人が事故で轢いてしまった、“異形の何か”。その出遭いこそが、悪夢の始まりだった。前途洋々だったはずの若者たちに、突如下される“余命7日間”の宣告。逃れる術は、無いのか――。『三億円事件奇譚 モンタージュ』の渡辺潤が描く、戦慄の“異形”ホラー!!
クダンノゴトシの見所をチェック!!
7日後に必ず死ぬとしたら?
本作のテーマは「7日後に必ず死を迎えるとしたら、あなたはどうしますか?」というもの。最初は大学のちょっとした卒業旅行のつもりで出かけたことが、大きな呪いのようなものへと発展するというお話です。
レンタカーで山道を移動中に人の顔をした大きな牛を轢いてしまい、気持ち悪さのあまりにその場で人面牛を撲殺した主人公たちは旅行が終わった後でその人面牛を夢に見るようになります。そして「お前は7日後に死ぬ」と言われてしまうという感じ。
7日経つ前に自殺しようとしても死ねない事実や、仲間が1人ずつ死んでいく背景などから物語は少しずつ進んでいきます。7日というカウントダウンがゆっくり登っていくジェットコースターのようで、読んでいて心拍数が上がっていくのを感じられるでしょう。
単なる噂ではなく、神話のようなモチーフが存在する
クダンノゴトシというタイトルは「件の如し」と書き直すことができ、件(くだん)というのは半人半牛の姿をした妖怪として語り継がれているようです。また、顔が牛で身体が人間という存在が登場する都市伝説もあるとか。
本作は完全にゼロから作られたオカルトホラーではなく、一部が実際に語り継がれている妖怪をモチーフにされているということもあり、何となく神話のような神々しさも持ち合わせているように感じました。
何て言うんだろう…。「オカルトだと言ってハナから馬鹿にするとバチが当たるような雰囲気」って言うのかな。良い意味でオカルトの気味悪さがしっかりと表現されている作品です。
死の宣告を受けた人間の行動
死の宣告系の漫画作品と言えば、僕の中では真っ先に「イキガミ」が連想されるんだけど、そっちは「死に絶望した人間がとんでもないことをしでかさないように死の宣告は24時間前」というルールがありました。
一方でこちらは7日後ということで気に入らない奴に復讐する時間もたっぷり残されてるし、人間が我を失うのには十分すぎる猶予が与えられています。
霊とか怪奇現象なんかのオカルトと接していても、最終的には「人間が一番怖い」という結論になることも少なくないと思うし、まさにそんな感じの行動を目の当りにすることができるわけだけど、まぁ人間の醜い部分と美しい部分が交互に描かれていてグチャグチャになってるという感じ。
「自分だったらどうするか?」を踏まえて読み進めることで、色んな方向から感情移入することも可能です。
クダンノゴトシ 全6巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
クダンの不気味さ、意味の分からない存在に対する恐怖は言うまでもなく、「死の宣告をされた瞬間の絶望感」みたいなものが痛々しく感じられます。でもそこまで怖くはないという感じ。
序盤は「卒業旅行に行った仲間内でのトラブルや争い」みたいな感じで、呪いを解くために犯人探しみたいなことを始めたりして妖怪の怖さと人の怖さが上手くマッチしていたんだけど、徐々に方向性が変わっていくんですよね。
なるべくネタバレしないように言うと「当事者たちよりも第三者の色が濃くなりすぎてわちゃわちゃしてくる」という感じ。一連の騒動の元凶よりも、この第三者がなんでこんなに出しゃばってんのかが気になるっていうか…。僕にとってはストーリーに没頭できない理由になりました。
オカルト好きで「クダン」と聞いて興味を持った人ならいいと思うけど、本作のコンセプトである「7日後に死ぬとしたら?」という部分に惹かれて手に取ると賛否が分かれるように思います。
あとがき
リュウガゴトク。