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「ゴールデンゴールド」を読んだ感想・レビュー

ゴールデンゴールド表紙
Ⓒゴールデンゴールド

節分の時に「鬼は外、福は内」と言いながら、福の神を家に招き入れるという文化があります。得てして福の神は良いものであるという認識があるわけですが、本作のフクノカミは果たして良いものなのでしょうか。

実際に貧乏な島に大きな経済効果が見込めているのは間違いなくフクノカミのおかげなんだけど、何かが起こる前触れのような気がしてなりません。というわけで今回は、欲望によって変わる島の姿を描いたダーク感満載の物語「ゴールデンゴールド(連載中)」を紹介します。

ゴールデンゴールド あらすじ

福の神伝説が残る島・寧島で暮らす中2の少女、早坂琉花。ある日、海辺で見つけた奇妙な置物を持ち帰った彼女は、ある「願い」を込めて、それを山の中の祠に置く。すると、彼女の目の前には、“フクノカミ”によく似た異形が現れた――。幼なじみを繋ぎ止めるため、少女が抱いた小さな願いが、この島を欲望まみれにすることになる。

ゴールデンゴールドの見所をチェック!!

海辺で拾った置物がフクノカミ

ゴールデンゴールド1
Ⓒゴールデンゴールド

本作の舞台は寧島と呼ばれる瀬戸内海の小さな島です。ここには福の神伝説が残っていて、それが今まさに実現する…的な物語で、海辺を歩いていた中2女子の主人公が不気味な置物を拾って家に持ち帰り、それを祠に置いてお願いをしたらその置物が動き出して…っていう流れ。

しかもその願いが家族の安全とか恋愛成就みたいな類ではなく「この島にアニメイトを」っていう金さえあれば何とかなりそうな願いだったのもマッチして、主人公とフクノカミの不思議な日常が始まるんです。

控えめに言ってフクノカミは気持ち悪くて不気味なんだけど、見た目がっていうよりも敵か味方かが分からない不気味さっていうんでしょうか。福の神って聞くとめでたさが勝ってる存在だと思うじゃないですか?でも見た目的には「これが?本当に?」と言わざるを得ません。

この実態が掴めないフクノカミが、主人公たちの生活をどのように変えていくのかは大きな見所です。

福の神として生活を豊かにしてくれるフクノカミ

ゴールデンゴールド2
Ⓒゴールデンゴールド

個人的にはお守りとか仏像とかによってご利益があるっていう考えは信じてないんだけど、そういう考えがあるとしても見た目から入って欲しいと思うんですよね。確かに耳たぶは福耳のそれだとしても、どっちかって言うと福の神というより疫病神でしょこれ。

現にこの置物を手に入れてから、主人公が生活をしている民宿(民宿として機能していなかったようなお店)が一気に繁盛し始めます。というか置物だったはずのフクノカミが共同生活をするようになってるし。で、島の人たちはこの姿・形を見ても別に驚かないし、普通の人間として扱うっていうね。

ただし島の外から来た人間には不気味な存在として認識されているようで、本作の主人公にとっても「良からぬ物を拾ってしまったのでは?」という後悔が芽生えたりするんです。

でも実際に民宿は大繁盛して島にコンビニ1号店を建設することに成功したり、更には「この島にアニメートを!」なんて展開にもなりそうな流れ。ここだけを見たらフクノカミ様様だけど果たして…?

フクノカミが齎すのは安寧か災難か

ゴールデンゴールド3
Ⓒゴールデンゴールド

僕が中学生だった頃、どうしてもテストで良い点が取りたかった時に「死んだじいちゃんにお願いする」っていう自分ルールがありました。で、それをやった時は漏れなく点数が良かったんです。

でもあまりにもそれが続くから途中から怖くなってやらなくなりました。なんか「良いものを得ている代わりに大事な何かを失っている」みたいなことを考えちゃったんですよね。こういうことが起きた時、多くの人は最初は偶然だって思いながらも、あまりにもそれが続くと逆に怖くなってくるんじゃないかと思うんです。

本作の場合は中学生のテストの点がどうこうじゃなく、もう島の経済を根底から覆すほどの大きな波が来ているわけで、これを偶然と片付けるにはかなりしんどいっていう状況。しかも始まりが何とも言えない不気味な置物から始まってるっていうことで、何かを思わずにはいられません。

本当にメリットしかないのであれば問題ないんだけど、人の顔が変わってしまうほどの効果が出てくるってなるとメリットの反動が気になって仕方ないです。良いことばかりで終わるとは思えない島の運命にも注目です。

ゴールデンゴールド 序盤を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

伝説の福の神が島に降臨して、自分の生活だけじゃなく島全体に大きなご利益をもたらしてくれるっていう棚ぼた展開なんだけど、そのすべてが「今後に起こるしっぺ返しの前兆」のようにしか思えません。幸せの中にある不気味で不穏な空気感みたいなものの表現がめちゃくちゃ上手い。

自分にとって近しい人間が少しずつフクノカミに懐柔されて様子が変わっていくのとか、自分のことに置き換えるとめちゃくちゃ怖いです。普通こういうのって「一家に一人フクノカミ」みたいな展開になることが多いと思うんだけど、現段階でしっぺ返しが来るって決まったわけでもないのに「僕はいいや…」って言えちゃう不気味な雰囲気よな。

とにかく先の展開が気になる感じで、サスペンスとかホラーが好きな人にはぜひとも読んでほしい一作です。特にホラー要素に関してはあからさまに怖がらせるぞっていう感じじゃなく、徐々に真綿で首を締められるような展開っていうのかな…ヒトコワでもないんだけど独特な世界観がたまらない作品なのでおすすめ。

あとがき

人間の欲って怖い。