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「チ。―地球の運動について―」を読んだ感想・レビュー

チ。表紙

 

ちょっと前にWEB上で公開されていた漫画を読んで、その魅力に引き込まれて単行本の発行を心待ちにしていた作品があります。

その時もバズっている本作を見て、ちょっと賢そうなテーマを扱っている作品なだけに「みんなちょっと難しそうなテーマの漫画だとすぐに持ち上げるんだから…」なんて思ってたけど、そんなんじゃなかったです。テーマは難しいんだけど、それを読者には感じさせないし、ただただ面白く夢中にさせられてしまう作品という感じ。

というわけで今回は、とにかく物語の最初だけでも読んでほしいと思った神作品候補筆頭「チ。―地球の運動について―(連載中)」を紹介します。

 

 

チ。―地球の運動について― あらすじ

動かせ 歴史を 心を 運命を ――星を。

舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。合理性を最も重んじるラファウにとってもそれは当然の選択であり、合理性に従っている限り世界は“チョロい”はずだった。しかし、ある日ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは、異端思想ド真ン中の「ある真理」だった――

命を捨てても曲げられない信念があるか? 世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか? アツい人間を描かせたら敵ナシの『ひゃくえむ。』魚豊が描く、歴史上最もアツい人々の物語!! ページを捲るたび血が沸き立つのを感じるはず。面白い漫画を読む喜びに打ち震えろ!!

 

チ。―地球の運動について―の見所をチェック!!

現代との境界線に違和感を感じさせない演出

チ。1

 

本作の舞台になっているのは中世ヨーロッパであり、現代と比べるとライフスタイルも常識も何もかもが違う世界が舞台です。そんな舞台に上がったのが「世界、チョレ~」と言い放つ、現代の若者風な青年だったとしたら?

個人的にはこういう演出が、本来の取っ付きにくさを排除しているように感じました。僕みたいに教養がない読者からすれば、コペルニクスはアベノミクスの親戚かなんかだと思ってしまうので、そういう読者にも読みやすいように配慮されているような気がします。

当時の世界観も想像でしかないけど、当たり前だと語られていることにケチを付けることが罪になったり、今では「たったそれだけで?」と思うようなことで拷問されたり…。そういう歴史背景も説明的ではなく、授業を受けさせられてる感じじゃなくスッと頭に入ってきたのに驚きました。

史実に基いた展開がされていくのかどうかは不明ですが、一つの学習というか賢くなった感が得られる漫画で、堅苦しさがなく、何より面白いと感じる作品です。

 

学問を取り扱った漫画なのに熱量がすごい

チ。2

 

合理的に生きることをモットーとした青年が自身の感情を揺さぶられる瞬間の演出を始め、本作は熱量がすごいです。世の中はバカばっかりだと見下していたかと思いきや、その先頭に自分が立っていたなんて…。

天が動いているという見解が当たり前だとされているなかで「実はそうじゃなくて地が動いているんだ!」なんて言ったら異端者扱いされて拷問に遭う。研究すること自体が罪になるから隠れて研究を進める一方で、それがバレた時にはあっさり研究してたことを認めるっていうね。

個人的には「認めずに表向きだけでも嘘つけばいいじゃん」って思うんだけど、そうさせないのがこのキャラの信念なんだろうなとか思ったら、学問の奥深さとか魅力に一気に引きずりこまれている証拠でしょう。

「世界、チョレ~」って言ってた青年が、自分の身を危険に晒してまでも信念を貫く姿。これに心を揺さぶられない読者はいないって。

 

チ。―地球の運動について― コミックス1巻を読んだ感想・レビュー

ぶっちゃけ掴みは完璧。で、コミックス1巻を読み終える頃には「2巻が早く読みたい」以外の感想がないというくらい夢中にさせられました。

僕は漠然とした宇宙の話は好きだけど、中世ヨーロッパで天動説やら地動説の話が出ていた頃の歴史には全く興味がないし、理科の授業で習ったような天体にも全く興味がありません。そんな僕でも夢中にさせられたくらい。

今では当たり前だと言われている知識は、先人たちの研究によって支えられているわけで、幾つもの犠牲の上に成り立っていることは想像に容易いです。重力にしろ何にしろ、当時それを発見した人の凄さは計り知れないと思います。

まして地球が動いているなんて、今でも「よく発見したな」くらいに思う事実です。しかも今後もしかしたら覆る可能性もあるんじゃないかって思うレベルの事実だと思ってます。

本作は熱量も凄いし、可能性も感じさせる作品だと感じました。少なくともコミックス1巻の時点で既に、勉強嫌いの僕が「学問って面白いんだな」って感じるくらいのレベルには完成されています。ちょっとでも興味が湧いたら、ぜひ読んでみて欲しいと思える作品です。

 

あとがき

これを読んでからなら、歴史の授業も天体の授業も興味を持って聞けただろうなぁ。