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「サイレーン」を読んだ感想・レビュー

サイレーン表紙
Ⓒサイレーン

個人的にはサスペンス作品って「フィクションなのかノンフィクションなのかっていう微妙な感じ」が1番面白いと思ってます。そういう意味でも本作はなかなか秀逸なバランスです。

職場内恋愛をしている2人の警察官が主人公っていう初期設定が、こんなに大きな意味を持つとは思わなかったし、そこに絡んでくる謎の女との関係性とか絡み合う男女の価値観が複雑に絡み合って成立しているミステリアスさが何とも言えないんですよね。

というわけで今回は、男女の関係と怪事件が見事なまでに融合しているサスペンス作品「サイレーン(全7巻完結済み)」を紹介します。

サイレーン あらすじ

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Ⓒサイレーン

警察官の男女2人が様々な難解事件に足を踏み入れていく物語。キャバクラ嬢変死事件、タクシー事件、マンション女性絞殺事件…。ある特定の地域で次々と事件が起きるが、その捜査線上にはいつも1人の女がいた。

その女は隠れるわけでもなく、むしろ向こうから接触してくるような状況である。そこには誰もが知り得ない驚愕の事実が隠されていた。そして一連の事件は思いがけない出来事ともリンクすることになる。

事実は小説よりも奇なり。奇想天外な物語がここに開幕する。

2015年に松坂桃李さんと木村文乃さんの主演で実写ドラマ化済み。

サイレーン 登場人物

里見 偲(さとみ しのぶ)

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本作の主人公にして武蔵県警機動捜査隊所属の警察官。軟弱そうな見た目に反して体力には自信があり運動能力は高く、捜査一課への転属を希望している。猪熊とは交際関係にあるもののそれが職場でバレてしまうと転属させられてしまうという暗黙のルールを恐れ、交際の事実は公表していない。

猪熊 夕貴(いのくま ゆき)

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本作のもう1人の主人公で、武蔵県警機動捜査隊所属の警察官。警察一家に生まれて父親並びに2人の兄も警察官だが、家で一番の出世頭でもある。

里見とは交際関係にあり、どちらかが捜査一課へ配属になった時点で入籍を考えていたが、里見よりも先に捜査一課へと配属された。正義感が強く、それが原因で橘カラに水面下で狙われることに。

橘 カラ(たちばな カラ)

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事件を捜査していると被害者と接点があったり現場に居合わせたりすることから、里見に事件への関与を疑われ始める謎の美女。整形によって完璧な容姿を手に入れており、猪熊が持つ正義感に対して何らかの感情を抱いている。

自分を疑い始めた里見に対して猪熊を上手く誘導して2人を仲たがいさせたり、男を感情的に揺さぶって里見を陥れようとするなどしたたかな部分が多くうかがえる。

サイレーン 見所をチェック!!

職場内恋愛によるメリット・デメリット

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Ⓒサイレーン

今は一昔前と違って「女は結婚したら家庭に入る」っていうのも常識じゃなくなってきてるからアレだけど、やっぱ男としては彼女にとって頼りがいのある男でありたいって気持ちが強いはず。

そういう意味でも捜査一課という同じ目標を持っている恋人がいるなら、絶対に負けたくないって気持ちを持つのが自然じゃないですか?本作ではそういう葛藤や心理描写がすごく上手に描かれています。

こんな時代だと「人が死んでるような事件に介入している警察官のくせに私情を挟みやがって!」っていう声も聞こえてきそうだけど、僕としてはこの恋愛要素がサスペンスを邪魔しているとは思えないし、良いスパイスになってるんじゃないかと思いました。警察官に限らず転勤ありきの職場に勤めている人であれば「職場内恋愛あるある」みたいなのも楽しめるでしょう。

犯人以外が謎だらけという展開

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ミステリー・サスペンス作品の醍醐味って「誰が犯人なんだろう」っていう部分だと思うんだけど、本作は古畑任三郎のような倒叙ミステリーに近い作風です。なので「犯人はわかってるんだけどそのトリックがわからない」というような楽しみ方がメインになるかと思います。

トリックについても分からないっていうか別に推理できるような要素もないし、殺人事件の現場の多くがなぜか自殺と判断されたりして、どちらかと言えば警察の無能さみたいなものがフューチャーされているような感じ。

そこで主人公だけは「アイツが何か知ってる」というような感じで犯人と接触していくような流れになっています。大半の読者がすぐに犯人には気付くだろうし、そのうえで「この犯人は何がしたいの?」って部分を上手く刺激されて引っ張られていくことになるでしょう。

恋は盲目という言葉の意味

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Ⓒサイレーン

相手が男だろうが女だろうが、心底惚れた相手に付け込まれるってのは意外と厄介なものだなぁと思わされます。恋愛経験の少ないうちって、好きな相手のためなら悪事だろうが何でもできそうな気がするもんね。

よく世界で起こった信じられない事件みたいなドキュメント番組を見ていると、男女の恋愛感情を上手く利用して「惚れさせた相手を使って事件を起こす」というようなマインドコントロールの一種がよく見られるけど、まさにそんな感じの怖さが堪能できます。

僕としては「冴えない男が絶世の美女に言い寄られて騙される」っていう展開に「この男アホだなぁ」と思いながらも、心の底からバカにできないというか教訓にしなきゃいけない部分もあるというか、なんか複雑な気持ちにさせられました。

サイレーン コミックス全7巻を読んだ感想・レビュー

最初から最後まで警察の無能さがちょっとしたモヤモヤとして残ったけど、犯人の目的が何だったのかという興味でグングン引っ張られたという感じ。

僕としては日本の警察は意外と有能って思ってるから、巻き起こる事件の数々を事件性無しと処理してしまったり、ことごとく事件の本質を見抜けていない部分は演出とは言っても違和感がありました。

それでも謎だらけの美女が事件に大きく関与してるっていうミステリアスな感じは大きな魅力として成立してるし、男女のもつれとか恋愛感情も秀逸に表現されてると思います。警察を取り扱ったサスペンス作品の場合なんかだと、変に男女の仲とか持ち込まないでくれよって思うことも少なくないけど本作は問題なし。

全7巻というボリュームも短すぎず長すぎず丁度良かったと思います。ちなみに僕は漫画を読んでから実写を見たんだけど、実写も結構良かったです。

あとがき

こんな感じで「殺人を犯しても真相が解明されていないパターンって多いんだろうなぁ」って思ったら、急に寒気がしてきた。