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「サンクチュアリ」を読んだ感想・レビュー

サンクチュアリ表紙
Ⓒサンクチュアリ

政治の漫画って聞くと「なんだか難しそう」とか「作者の思想が反映しそう」みたいなイメージが先行しちゃうという人も少なくないと思うんだけど、ここに「政治家とヤクザがタッグを組んで日本のトップを目指す」っていう設定を聞かされるだけでめちゃくちゃ興味が出てきませんか?

本作は暴力団のとある組の会長と代議士秘書の若き二人が、日本の腐敗した政治体制を変えていこうとする物語です。というわけで今回は、ヤクザと政治家のタッグによるヒューマンドラマ「サンクチュアリ(全12巻完結済み)」を紹介します。

サンクチュアリのあらすじ

北条彰は六本木周辺を縄張りとする暴力団・北彰会の総長。ある日、北条は組員の田代を伴い、佐倉代議士のスキャンダラスな写真をネタに強請(ゆすり)を計画。その事務所を訪れるが、そこで出会ったのは政治家秘書には珍しい強面(こわもて)の男で……!?経済的な繁栄を謳歌しながらも、閉塞感漂う日本の現状に疑問を持った北条彰と浅見千秋。社会の在り方を根本的に変革する必要を感じた二人は、裏社会と政界に身を投じ、「光と影」から『サンクチュアリ』を目指す!!

サンクチュアリの見所をチェック!!

極道と政治家の両面から日本を変える

サンクチュアリ1
Ⓒサンクチュアリ

本作を簡単に説明すると「表の社会と裏の社会でそれぞれトップを目指し、最終的に日本を牛耳る」みたいなことを目指すというストーリーです。表の世界は政治家として、裏の世界はヤクザとして頂点を目指します。

まぁ最近だと芸能人ですらヤクザとの繋がりが明るみになると引退みたいなことになるじゃないですか?これが政治家だった場合、それは芸能人とは比べ物にならないくらい大きな問題になると言えるでしょう。

ただし実現する前提で言うと、これって結構合理的なんですよね。政治家にとっての邪魔者をヤクザが排除するとか、ヤクザにとって有利になる法案を通すとか、実はこのタッグってリスクも高いけど最強だったりもします。このタッグが日本のトップに立てるのか、日本をどう変えていくのかに注目です。

主人公は強い絆で結ばれている二人

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Ⓒサンクチュアリ

本作には主人公が二人いて、それぞれ表の顔と裏の顔を担当しています。幼少期のカンボジアから逃げ出してきたという共通点があって、その後は日本へと帰国。腐敗した日本の政治を変えるために、じゃんけんで勝ったほうが政治家、負けた方がヤクザになったっていう流れです。逆でもいけたってくらい二人ともめちゃくちゃ頭が良い。

ポルポト政権下による大量虐殺が行われていたカンボジアから逃げ出してきたっていうこともあって、この二人の絆はある意味では家族よりも強いと言っても過言ではありません。ちなみに僕も詳しくは知らないんだけど、確か当時のカンボジアって大量虐殺によって人口の1/3~1/4くらいが殺されたんじゃなかったっけ?

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Ⓒサンクチュアリ

昔に見たバラエティ番組では、当時のカンボジアって「メガネをかけていると賢そうに見えるから死刑!」みたいなノリだったとかなんとかなので、これが本当だとしたらこんな死線を潜り抜けてきた二人に怖いものなんて無さそうな気がしました。

とは言えこの二人が知り合い同士であるっていうことが後々バレたりすると、政治家としては致命的な弱みになってしまうような気がしませんか?その辺も含め、本当にこの二人が仲違いなどをすることなく走り続けられるかという部分にも見所がたっぷりです。

日本の政治に対する考え方

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Ⓒサンクチュアリ

本作は1990年~1995年に渡って出版された漫画で、今からもう30年以上前の作品になります。この時から既に国民が日本の政治に無関心になることを危険視していて、それが日本を危機に追い込むと言っていました。

これを令和になった今読んでみると、返す言葉が見当たらなくてめちゃくちゃ頭が痛い…。2000年とかそれくらいの頃は「日本の未来は wow 世界が羨む yeah」みたいな歌が流行ってたような気がするんだけど、それから20年経った今の日本を見て色々思うことがある人って多いんじゃないかと思います。

サンクチュアリ5
Ⓒサンクチュア

本作のスタンスとしては「これまでの悪いシステムを一掃する」という、いわば革命を起こそうとしている若い世代が活躍する様子を描いているので、良く言えば「日本に新しい風が吹こうとしている瞬間」を楽しむことができるんですよね。

それが良いか悪いかはやってみないと分からないし、そもそもそれ自体が成功するかもどうかも謎です。古参の政治家たちも長年の経験があるわけで、決して一筋縄ではいかないでしょう。そういう老人たちや権力者たちをどうやって表舞台から引きずり下ろすかという部分にも注目してみてください。

サンクチュアリ 全12巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)

古い漫画だから絵がちょっと気になるかもしれないけど、池上遼一氏の漫画はこういう男臭さみたいなものが全開で味のある絵なので、その辺の漫画の古臭さほどマイナスの要素にはなっていないと思います。

それに内容はめちゃくちゃ面白いです。強い絆で結ばれた二人が、政治の世界とヤクザの世界の両方からトップを目指すっていう設定がもう面白い。「いずれ文春砲とかあるのかな?」みたいなのもそうだし、そもそも政治家をやっていくうえで邪魔になる奴はヤクザの方で消したりとかできるだろうし…。

もちろん力づくで消していくっていうのは限度があるから「スキャンダルを掴んで失脚させる」みたいなことを考えると、今の政治にも似たようなことが幾つか思い当ったりもして、そうなると急にリアリティが出てくるっていうね。

なにより30年前の漫画で「日本を変えるにはこれくらいやらないといけない」みたいな危機感を感じさせる熱量のある漫画です。それから30年も放置されてきた結果が今だと思うとやるせないけど、とにかく面白い漫画なので選挙権を持っている大人の読者にはぜひ読んでみてほしいと思います。

あとがき

トルネコの大冒険の聖域の巻物を思い出した。