大人になるに連れて単純な敵討ちっていうテーマだと満足できなくなってきましたが、複雑だとそれはそれで読むのを途中で辞めちゃうっていう我儘な僕です。そんな僕が複雑だと感じて投げ出しそうになったものの、最後まで読んで良かったと心の底から思えた作品がこちら。
バトル、歴史、異世界、ダークファンタジーもあるかな?色んな要素が複雑に絡み合って、壮大なストーリーを完璧に描き上げているんです。というわけで今回は、感情が溢れる超大作「シュトヘル(全14巻完結済み)」を紹介します。
シュトヘルのあらすじ
見知らぬ時代、見知らぬ国の戦場。その凄惨な光景を毎夜、夢に見る高校生の須藤。ある日、楽器の工場である彼の家に、転校生の鈴木さんが訪ねてくる。彼女がその場で馬頭琴を奏で“シュトヘル”と唱えた途端、須藤は時空を越え、夢で見た国の女戦士に姿を変えていた。そして目の前には、鈴木さんに瓜二つの少年が。その少年は須藤に“シュトヘル”と呼びかけ…。
シュトヘルの見所をチェック!!
モンゴル兵を狙う女戦士が主人公
本作の主人公はモンゴル軍を狙う女戦士で、その圧倒的な戦力から「悪霊(シュトヘル)」と呼ばれています。で、厳密にいえば現代を生きている須藤という男子高校生が転生しているという設定です。
最初はちょっと分かりづらいけど、普段はスドーでモンゴル軍と対峙するとシュトヘルが出てくるというような、簡単に言えば二重人格みたいな感じで進んでいきます。シュトヘルはモンゴル軍(正確に言えばモンゴル軍の下にいるツォグ族)によって村を追われ、仲間たちを全滅させられてたことの復讐を誓うって感じ。
滅ぼされた村で仲間たちの死肉を漁りに来た狼たちを追い払うためにひたすらバトルをしていて、気付いたらめちゃくちゃ強くなってたみたいなところから始まるんだけど、この時点でもう本作がすごい作品だっていうことを強く感じました。
シュトヘルの立場としては「仲間たちを守っている」ということでも、狼からすれば食事なわけで生きている人間を襲ったわけでもありません。そして一頭の狼がシュトヘルに殺されたんだとすれば、それは他の狼たちにとっては仇となります。こういう目線から導入が始まるので、本作も単純なバトル漫画では終わらないという感がめちゃくちゃ伝わってくるんですよね。
大ハンの血を引いた少年の存在
本作のもう一人のキーパーソンがユルールと呼ばれる少年で、この少年は血筋的に言うと大ハンの子供にあたり、表向きはツォグ族の族長の次男ということになっています。しかも現代で須藤に近付いてきたスズキっていう女の子が転生しているというか、ユルールがスズキに転生しているのか…。いずれにしてもここでも過去と現代の間で異世界転生があったような感があるんですよね。
まぁこの辺は実際に読んでもらうと分かるんだけど、めちゃくちゃ複雑です。そして作中の人間関係はもっと複雑。シュトヘルの仇はモンゴル軍とユルールの表向きの兄貴で、ユルールはあることをキッカケにツォグ族から追われるようになり、シュトヘルはユルールと一緒に行動すれば仇に会えるっていうんでユルールと一緒に行動するみたいな流れになってます。
相関図とか書こうもんならあちこちに矢印が飛び交うような複雑な関係性です。でもこの複雑な関係性があるからこそ、壮大なストーリーが紡がれていくっていうことは言うまでもありません。
西夏文字が大きなテーマ
本作の根底には西夏文字という大きなテーマがあって、これをモンゴル軍から守ろうとする物語と言っても過言ではありません。今の時代だと文字を残すことって誰もが当たり前のようにできることだからアレだけど、それでも「勝者が歴史を作る」みたいな部分は感じるし、もっと言えば「権力者によって都合の悪い文書が消される」みたいなこともあるじゃないですか?
本作はそれをモンゴル帝国の時代にやっていたっていう話です。シュトヘルからすれば「文字にすれば死んだ仲間たちが記憶以外の形として残る」って感じだし、まぁ普通の人からすれば歴史とか議事録とかは残しとけって感じでしょう。大ハンにとってそれは都合が悪かったので西夏文字を無くそうとし、それを守ろうとする者たちと衝突するって流れです。
この設定を聞いて僕は初見時に「文字とか難しい話はやめて、もっと最愛の人の仇とか分かりやすい部分でやって欲しかった」って思ったんだけど、文字を守るってことは人を守るってことと同義です。読んでない人にとっては意味不明でしょうが、本作はこういう部分も含めて全てが見所。全14巻が見所。
シュトヘル 全14巻を読んだ感想・レビュー
最初に読んだときはワケが分かりませんでした。というのも時系列が行ったり来たりするわ、転生してるっていう設定なのにその性格が出るときと出ないときがあるわで、理解するのも一苦労という感じ。
僕はかなり理解力が無い方なんで、一度全部普通に読んでからもう一度読み直しました。一度目も中盤くらいには状況は掴めてたんだけど、二度目を読んだときはもう超おもしろかったです。何回読んでも楽しめる漫画だと思うけど、もし時間がないって場合はWikipediaであらすじをさらってから読んでみても良いかもしれません。
大きな要素としてはバトル、歴史、異世界転生あたりになるのかな。ぶっちゃけまだ読んでないって人は今すぐ読んだ方がいいっていうくらいにおすすめの作品です。最初に内容の全貌を把握するのが難しいっていう点だけ除けば神作品。いや、その難解な部分を含めても神作品と言っていいでしょう。
あとがき
絶対にチェックして欲しい作品の一つです。