ショートエピソードが何本も詰まった作品は満足感が得られやすくて結構好きなんですよね。色んなエピソードが読みたいという欲張りな読者にとって、これは最高の出会いと言っても過言ではありません。
しかも本作の場合、さらにプラスαのとてつもなく大きな要素が隠されているんです。これに気付いた時、ほぼ全ての読者が驚きを隠せないことになるでしょう。というわけで今回は、3色のコントラストが不思議な世界観を作っている短編集「ニッケルオデオン(全3巻完結済み)」を紹介します。
ニッケルオデオン あらすじ
たった8ページの短編に、愛と勇気とちょっとの毒を。(あとは、BLとかロリとかヤンデレとかフリークスとかヒーローとか邪神とかとか…)。ショートの妙手・道満晴明がおくる、不思議な味わいの短編集。
ニッケルオデオンは全3巻から構成されており、それぞれ赤・緑・青というタイトルによって分かれています。順番は赤→緑→青ですが、短編集なのでどれから読んでもOKです。
ニッケルオデオンの見所をチェック!!
何でもありのショートストーリー(8ページ)
本作はジャンルを説明するのが難しく、あえて言うなら「何でもありの短編集」という感じです。ルールは1つのエピソードが8ページというだけで内容はエロありグロあり…基本的には不思議な物語ではあるんだけど、とにかく何でもありという印象。
例えば何かしらの動物に姿を変えられてしまう的な展開って珍しくないじゃないですか?で、王子様のキスで元に戻ったりするのかな。でも「猫とかにしてくれりゃあいいのになぜヤドクガエル!?」みたいなシュールな展開も少なくありません。
そしてグロとは言っても絵のタッチがふんわりしてるし、ストーリー自体も淡々と進んでいく感じなので、そこまでグロいと感じることはないと思います。首とか手足がバラバラになっちゃうような展開もありますが、血が飛び出るようなことはないのでかなりマイルドではないかと(エロについても同様です)。
1つ1つのエピソードも完成度が高くて面白い
本作はかなりあっちこっちに行くタイプの短編集で、動物園を題材にしたような物語の次に幽霊の話が続いたりなど、かなり読者の頭が忙しくなる感じの作品です。でも1つ1つのクオリティがかなり高くて、誰にでも必ず気に入る作品が出てくること間違いなし!
個人的にはウィットに富んだ感じのエピソードが好きなんですが、上記画像のように「オセロの白い方持ってきて」みたいな言い回しがすごく好きなんですよね。こういう無茶ぶりをする先輩キャラはめちゃくちゃ気になってしまいます。
そして後輩の返しも実に見事でした。これは実際に本作を読んで確認してみてください。ちなみに1冊に13本ものショートストーリーが収録されているので、自分なりのBESTが見つかるはず。
既視感が生まれる瞬間がめちゃくちゃ面白い
本作を読んでいると「あれ?」って思う場面が多々出てきます。例えば「さっきこの人出てこなかったっけ?」とか「カエルに変えられた人いなかったっけ?」とか、そういう違和感を感じる場面が定期的に訪れるんです。
特に赤・緑・青という枠を超えてそれをやられると、違和感の正体を探るためにもう一度読み直したくなります。すると今度は別の違和感に気付いて…みたいな感じになって、たぶん永久に読める。
1つ1つが独立して完成している短編集なんだけど、どこかで繋がっている部分があったりして遊び心に溢れている作品だと思いました。これをやりたくてそれぞれのショートストーリーのクオリティが下がってるなら救いようがないんですが、本作は1つ1つのエピソードも魅力があるのでまさに最強の短編集じゃないかと。
ニッケルオデオン コミックス全3巻を読んだ感想・レビュー
どこから読んでもいいし、1話1話がしっかりと区切られているのでテンポも良いし、好きな時に8ページをサクッと読んで、好きな時に読むのを止められる手軽さもある短編集です。
で、読み始めて違和感に気付いたら最後。「このシーン前に見た気がするんだよなぁ」って思ったらまた最初から読むことになって、何回も繰り返し読まされることになりかねないので注意してください。何度も繰り返し読むことで、本当にクオリティが高くて綿密に練りこまれた作品なんだということに気が付くでしょう。
全3巻で合計39本のショートストーリーを堪能したとき、かなりの満足感が得られる作品です。1つ1つのエピソードも満足感があるし、全体的に見ても大満足な短編集なので多くの方におすすめします。
あとがき
あいつが私に「る」攻めしてたの。