タイトルから察するに、本作が「あー、アンドロイドが人間と一緒に暮らす的なアレね」ってのは伝わってくるんだけど、最近やたらAIがどーたらこーたらって話を聞くもんだからこういうストーリーが一気に現実味を帯びてきたよね。
「なぜセーラー服を!?」って部分は、読者ウケって言葉の他にしっくりくるものがないから恐らくそういうことなんでしょう。でもアンドロイドと恋愛に発展するって展開なんだとしたら、異性を意識させる服装って意外と重要かも。
というわけで今回は、人の心が分らないクズ青年と人の心を知りたいアンドロイドが人を識る物語「ブキミの谷のロボ子さん(全3巻完結済み)」を紹介します。
ブキミの谷のロボ子さん あらすじ
ある日、主人公の元に自己学習機能を搭載した女子型アンドロイドが自宅に配達されてきた。そのアンドロイドが言うには「人工知能がどこまで人間に近付けるか」という実験のため自身は作られ、無作為に選ばれたユーザーの元に送られてたきたという。
造形はまるで人間のようであり、製造番号などの記載はなし。パーツも市場には出回っていない最先端の技術で作られたものであることは想像に容易かったが、誰が何のためにこのアンドロイドを送ってきたのか…謎は深まるばかりだ。
人との関わりを避けてきた主人公にとって面倒以外の何物でもなかったが、状況を読み込むより先にアンドロイドが言い放つ。「私に人間とは何かを教えていただきたいのです」と。
ブキミの谷のロボ子さんの登場人物
上小杉 惣介
本作の主人公。他人の気持ちを理解するという能力に乏しく、これまでに何度も「何を考えているかわからない」「空気が読めない」などと言われてきた。今は引きこもってデイトレーダーとして生計を立てている。
アンドロイドに「私に人間とは何かを教えていただきたいのです」と頼まれたが、自分自身にもそれが分かっていないとし「人間らしいことが何なのかよく知らないし、知りたいとも思わない」と答えた。
ロボ子
「人工知能がどこまで人間に近付けるか」という実験の元、上小杉の元に送られてきたというアンドロイド。
見た目は華奢で可愛らしい女の子のようであるが、扉を一瞬で吹き飛ばすほどの脚力を持っていたり、ぶつけた手が取れてしまったりなど、アンドロイドであるということを疑う余地はない。上小杉と暮らしていくことで、人間らしさを少しずつ学んでいく。
上小杉 涼
主人公の妹であり、女子型アンドロイドを送り付けてきた張本人。かつて父の死をめぐって起きた確執のようなものがあり、兄に対して良いイメージを持っておらず、言動がいちいち皮肉めいている。
女子型アンドロイドを送った理由を「お兄ちゃんがまともでフツーの人になればいいなと思って」と述べているが、真意については不明。
ブキミの谷のロボ子さんの見所をチェック!!
主人公の心情の変化について
この手の作品っつーのは大体がセオリーとして「アンドロイドから人を想う心を教わりました。めでたしめでたし」という展開になることが多いような気がします。
本作の主人公も昔から人の気持ちが理解できずに「ちょっとズレてる奴」とか「空気が読めない」というレッテルを貼られ続けてきました。その主人公がロボ子と接していくことで、どのように考えが変わっていくのかという部分が第一の大きな見所と言っていいでしょう。
「人間らしいことが何なのかよく知らないし、知りたいとも思わない」って言っていた人物が、最終的にロボ子との別れで涙する姿的なものが見えるような気がしませんか?そんな単純な物語にはならないかもしれないけど、主人公がどのようにして成長、あるいは心情の変化を見せてくれるのか期待して読むと楽しめるのではないかと思います
ロボ子の成長と心情の変化
ロボ子は「自己学習機能を搭載した女子型アンドロイド」であるため、上小杉との生活において色んなことを学んでいきます。そしてコミックス1巻の時点で既に成長ぶりを見せてくれる場面があるのですが、これが今後の物語において読者を揺さぶってくる要素の1つとなってくることは間違いないでしょう。
上小杉が日常の会話で何気なく言ったことを、ロボ子は自分のものとして取り込んでいくわけです。で、それは紛れもなく「上小杉が見せた人間らしさ」とも言えるんじゃないかと思うんですよね(上小杉自身はそれに気付いてないけど)。
多分ロボ子が豊かに感情を表現することはないだろうし、最後までアンドロイドらしさは残すだろうけど、それが最終的に上小杉の成長というか変化に繋がっていくんじゃないかと。「アンドロイドなのに今一瞬、嬉しそうな顔しなかったか?」とかそんなんありそうでしょ?そういう部分も大きな見所だと思います。
父の死をめぐる暗い過去は払拭されるのか
「お兄ちゃんがフツーの人になってくれればと思って」という皮肉たっぷりの言葉と一緒にロボ子を送り付けてきた妹がいて、その妹とは過去に確執があります。
その具体的な内容を明言するのはこの場では避けることにして、妹が本気で兄が変わることを望んでいるかどうかは別としても、やっぱこの仲違いが解消されるのかどうかって部分は気になるところ。
コミックスの1巻時点では妹が完全に敵意剥き出しというか、嫌いなら放っておきゃいいのにわざと近付いてきて嫌味を言うっていうかなり厄介な存在なわけだけど、最終的にハッピーエンドに持っていくのであればこの兄妹の関係の改善は避けて通れないフラグと言っていいでしょう。
ブキミの谷のロボ子さん コミックス1巻を読んだ感想・レビュー
絵は線が細すぎてちょっと見にくい場面もあるけど、ロボ子は普通に可愛いし、全体的にも場面の雰囲気はちゃんと伝わってくると思います。
あとは人間×アンドロイドっていう、手垢が付くだけ使い古されてきたベタな展開をどうやってコントロールしていくかって部分が重要ですよね。これはコミックス1巻時点ではなんとも評価しがたい部分です。
「最終的に上小杉がロボ子から感情(人間らしさ)を教わって、ロボ子との別れの場面で大粒の涙をボロボロ流す」みたいなフィナーレになっちゃうと、一気に駄作になる可能性もあるし、ありきたりな終わり方を迎えたとしても、そこに至るまでの見せ方が上手ければ高く評価される可能性もあるし。
とりあえず、コメディー要素については全くといいほど見当たらないので、ヒューマンドラマ的な作品として楽しめるのではないかと思います。今後に期待です。
あとがき
こんな感じのアンドロイドが出てくる時代も遠くなさそうだよね。