たまにニュースでインパクトのある事件があったときに「洗脳されていた」みたいな話が出てくることってあるじゃないですか?ぶっちゃけ意味が分からなかったんです。
でも本作を読むと洗脳の恐怖心みたいなのも分かるし、何より「洗脳されるということが特別な人のものっていうのが大きな間違い」だってことに気が付きます。僕もあなたも誰かに洗脳される可能性がゼロではありません。
というわけで今回は、カルト教団の第一歩のような気味悪さを感じる物語「ライチ☆光クラブ(全1巻完結済み)」を紹介します。
ライチ☆光クラブ あらすじ
工場の煙に覆われた螢光町の片隅にある、「光クラブ」と名づけられた少年たちの秘密基地。その場所で、ある崇高なる目的のために作られた「機械」が目を覚ました。「機械」の正体とは――!? 80年代、伝説の劇団「東京グランギニョル」の舞台を、鬼才・古屋兎丸がマンガ化した衝撃作。
ライチ☆光クラブの見所をチェック!!
子供たちの秘密基地から始まる物語
本作は工業地帯にある町を舞台に展開される物語で、最初は「仲良し3人組が秘密基地を作ってキャッキャする」という楽しさ全開の光景だったのにも関わらず、少しずつ変な方向に進んでしまったという感じの漫画です。
小学生くらいの頃だと「〇〇くんを仲間に入れるかどうか」みたいなので揉めるシーンも珍しくないじゃないですか?最初は居心地良かった仲良しメンバー限定の秘密基地だったのが、気が付いたら規模が拡大していって初期メンバーが追いやられていく…みたいなことは割とよく見る光景と言えるでしょう。
ちなみにこれは前日譚である「ぼくらの☆ひかりクラブ」で語られている部分で、本作はその秘密基地がおかしくなってしまってからの様子が描かれています。ぶっちゃけどちらから読んでもOKです。時系列通りに読み進めたいのであれば、本作よりも先に 「ぼくらの☆ひかりクラブ」を読むことをおすすめします。
過激的なカルト宗教の第一歩みたいな雰囲気
秘密基地は秘密であることに意味があります。普通の中学生なら同級生がこそこそ集まって楽しんでいたところで、別に妙な詮索はしないんじゃないかと思うし、なんなら秘密基地がバレたところで咎めたりはしないと思うんです。
しかし本作で描かれているそれは超やべーやつで、なんと秘密基地の存在に気付いた同級生は口封じの為に然るべき処置を取られてしまいます。秘密基地を見られただけですよ?
これが「秘密基地にある犯罪の証拠とか見られたくないものを見られてしまった」とかならまだ分かるけど、ただただ秘密基地の存在に気付かれたってだけで監禁したり、場合によっては亡き者にされてしまうという…。過激的なカルト教団がやってそうな感じの危険な思考が描かれていて、この不気味な雰囲気は本作最大の見所と言っていいでしょう。
独裁国家のような恐怖心
この秘密基地では明確ではないものの明らかな序列が存在します。そしてトップに逆らったときに何が起こるかが全く分からない恐怖感があるので、これはまさに独裁国家そのものと言っても過言ではありません。
そもそも秘密基地の存在に気付いたってだけの同級生に対して躊躇なく制裁(リンチ)ができるっていう思考が危ういし、メンバー全員に意見を出させて最も過激な意見を採用するってあたりがもうね。
こういうことを平気で行う団体っていうのは、内部での密告とか序列争いで揉めるケースが大半だし、その狂気が自分たちに向くことも考えるべきだと思います。「目を潰す」という意見が通るってことは、いつかは自分がその標的になるかもしれません。…これがただの中学生って思ったらめちゃくちゃ怖い。
ライチ☆光クラブを読んだ感想・レビュー
ダークな雰囲気が満載で、ワケの分からない展開になってもその狂気が色褪せることはない全1巻でした。ちょっとグロいし、あまり羨ましくないエロシーンなんかもありつつ、最初から最後までダークな物語です。
全体的な雰囲気はカルト宗教とか独裁国家という感じそのままで、トップが恐怖や飴と鞭を使ってメンバーの心を掌握して、大それた野望を計画していくって流れなんだけど、野望自体には全くリアリティがないのに狂気にはリアリティがあるから、この辺のアンバランスさも良い意味で気持ち悪く感じました。
本作だけでも楽しめるっちゃ楽しめます。でも本作は秘密基地に集まっている面々が狂い始めてからの物語になるので、見方によっては元々変な奴らだったと思ってしまいかねません。「ぼくらの☆ひかりクラブ」を読めば普通の子が普通に楽しんでいただけなのに…って部分が理解できるので、本作をより深く楽しめると思います。
あとがき
洗脳される怖さみたいなものが覗けます。