例えばゲームで世界を救おうと思ったら、ザコキャラを倒してレベルを上げて…みたいな型が決まってると思うんです。もしこれが「日本のトップに立つ」みたいなゲームで、人生そのものを使ったゲームだったとしたら?
まぁテレビゲームとは違って死んだら人生は終わっちゃうわけで、そんなに危ない橋は渡れないんじゃないかと思うんだけど、それって僕を含めた常人の考えであって、天才(それも悪の天才)は発想がすでに違う次元っていうね。
というわけで今回は、悪の天才が日本を掌握するまでのヒューマンドラマ「翔丸(全3巻完結済み)」を紹介します。
翔丸のあらすじ
頭がよくて、手のかからない良い子だった翔丸。いじめを受けていた彼が、己の頬をカッターで切り付けた瞬間に生まれ変わった。「悪の天才」に――。ずば抜けた頭脳を持ちながら不良の巣窟・曙高校に入学した翔丸は、たった2日で学校を掌握する。翔丸の野望はとどまる事を知らず、暴力団・佐伯組をも取り込もうとするが……!?
翔丸の見所をチェック!!
いじめられっ子の中学生が日本のトップに立つまで
本作の主人公はいじめられっ子の中学生です。中学生とは言っても物語はずっと中学校を舞台にしているわけではなく、すぐ高校にステップアップしてしまうんだけど、いずれにしても頭は良くても引っ込み思案な感じというか、ぱっと見の印象は典型的ないじめられっ子という感じ。
そんな主人公がカッターで自分を傷つけたことをキッカケに覚醒することになります。何がどう覚醒するのかは実際に見てもらった方がいいと思うんだけど、とりあえず一つ言えることは本作はかなり意味が分からない展開が続くということです。
簡単に紹介するなら「いじめられっ子の中学生が日本のトップに立つまでの物語」だし、日本のトップって言っても総理大臣とかそういう堅実なやつじゃありません。日本を動かせるだけの力を持っている人物になるまでのサクセスストーリーと言っていいかも。
カッターを武器に周りの人間たちを掌握していく
本作の重要部分は主人公がとにかく切れ者だということです。たぶん常人では測れないほど先が見えてるんじゃないかと思います。いじめっ子に対して復讐するにしても、どこまでやれば相手が屈するかっていうのを理解していて、そのスレスレのラインに留めているという感じ。
やりすぎちゃうと更なる報復があったり、場合によっては傷害罪以上の罪に問われてしまって警察が動く…みたいなことになるじゃないですか?そうなるギリ一歩手前で留まってるし、もっと言えば「相手が跳ね返ってこないほどの恐怖もちゃんと植え付ける」ってことを同時にやってます。
だからやられた方も「こいつには逆らえない…」みたいになって、その力で少しずつ仲間を増やしていくという流れです。中学校でいじめられてただけの男が最終的に日本のトップになるかどうかの所まで行くわけですから、そのサクセスストーリーが気になるっていう人には鉄板だと思います。
一人の天才がゲーム感覚でのし上がっていく様子
本作を例えるなら「めちゃくちゃ自由度の高いゲームで国のトップを目指す」という感じのストーリーです。日本のトップっていう漠然としたゴールだけが決まっていて、「そこに到達するまでのルートは色々あるけどあなたならどういう道を選びますか?」みたいなことも含め、楽しめる作品だと思います。
ある人は政治家になるだろうし、警察のトップなんかでもそれなりの影響力が手にできそうです。そこで本作の主人公がどういう手段を取ったのかっていう部分にも見所がたくさんあるし、これをゲームに例えるなら最短ルートで攻略したんじゃないかと思わされるほどでした。
そもそもカッターで自傷してから覚醒する人間ですから、常識では測れない奴と言っていいでしょう。ちょっと狂っている世界観にも注目の全3巻です。
翔丸 全3巻を読んだ感想・レビュー(ネタバレなし)
本作を描いている能條純一氏は「月下の棋士」や「哭きの竜」がめちゃくちゃ好きなので、Kindleで評価の良かった本作を読んでみました(評価数は少なかったけど)。あ、ちなみに「ばりごく麺」もおすすめ。
本作は初期設定だけ聞くとめちゃくちゃ面白そうなのに、途中からワケわかんなくなってきます。これは「主人公の思考が天才過ぎて自分の読解力が追い付いてない」ってことにして読んだけど、なんかよくわからない展開が続いたなぁという以外の何物でもなかったです。
でも不思議な魅力があって、最後まで読まされてしまう魅力のある作品であることは間違いないでしょう。月並みだけど「宗教の教祖ってこんな感じなんだろうなぁ」と思わせるような、カリスマ性を感じる主人公が見事な作品だったと思います。
ただ、わかりやすい感じの作品ではないから評価は絶対に分かれると思うし、僕は好きとは言わないけど嫌いじゃなかったっていう感想です。あまり人におすすめできる感じではないかなぁ…。読解力のある人なら楽しめるかも。
あとがき
このルートで日本を攻略するのはすごい。