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「血の轍」を読んだ感想・レビュー

 

僕の小学生~中学生のクラスメートに、やたら母親と距離の近い子がいて、何をするにも「お母さんに聞いてみないと…」っていう奴がいたんです。

明確な言葉を当てはめるのであれば、それこそマザコンってやつだと思う。でも普通の親って「子供が自立できるように、あえて突き放すこともある」という存在だったと思ってたし、そういう存在であるべきじゃないかと。

今回は、そういう僕の中の常識が全部ぶっ壊されてしまった衝撃の作品「血の轍(連載中)」を紹介します。

 

 

血の轍 あらすじ

 

舞台は中学校二年生。ごく普通な3人家族を、とある悲劇が襲う。

母親からたっぷりの愛情を注がれて生きてきた子は、それが当たり前の親子関係だと思っていた。しかし、友達の中にはそれが異端なものだと指摘する者もいる。

親子関係というものはカタチのないものであるし、ましてや千差万別である。どれが正解で、どれが不正解ということはない。

 

しかし、ある出来事をきっかけに、穏やかな家庭が激変した。それは明らかに常識を逸脱している親子関係と言わざるを得ないだろう。

「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」など、傑作を次々と世に送り出してきた鬼才・押見修造氏が描く作品。テーマは「毒親」。

 

血の轍の登場人物

 

主たる登場人物は、母親とその息子。どっちが主人公かって言ったら母親になるのかぁ。ドラえもんの主人公がのび太になるなら、息子が主人公かも。

あとは息子と同い年くらいの従弟や、息子のクラスメートなんかが登場します。基本的には息子目線で物語が進んでいき、要所要所で母親が出てくるという感じ。

ちなみに息子は中二だけど、コミックス1巻&2巻の段階では、母親の年齢は明かされてないように思いました。僕の勝手なイメージだと、すっげー綺麗で若く見える30代後半~40代前半ってイメージです。

 

血の轍の見所をチェック!!

大袈裟なレベルの過保護が怖い

 

僕の小学校1年生とか2年生くらいのクラスメートにも、教室の後ろでずっと授業(てか我が子)を見つめてるお母さんいました。まぁこれに関しては、その子が「お母さんがいないと泣いちゃう子」だったから、まぁ仕方ないのかなぁって思ったり思わなかったり。

で、そいつだけが毎日授業参観だったわけだけど、これを「子供サイドからのヘルプ無しに普通にできちゃう親」ってやっぱおかしいなぁとか思いませんか?子供って残酷だから「〇〇くんのお母さん、なんでいつも来てるの?」とかストレートに言うだろうに…。

夫婦が年齢を重ねてからようやくできた一人っ子って、すっげー甘やかされる傾向にあるってのは、なんとなく気持ちとして理解できる。でも本作のお母さんってちょっと色気というか女を感じるレベルのお母さん(森高千里さんみたいな)だから、なんか怖い。すっげー怖い。

 

どこに潜んでいるかわからない伏線

 

みなさんのお家にも「自分ちルール」ってありました?僕の家では親父が自営業をしていて、水曜日が定休日だったんですね。だから「水曜日は友達と遊んじゃダメ」っていう、訳の分からないルールがありました。

しかもこれも「水曜日は遊んじゃダメ」と直接言われたというわけじゃなく、なぜか水曜日に遊びから帰ってくると親父の機嫌がすこぶる悪いという傾向にあることに気付いて、小学生ながらに空気を読んだって感じ。

 

さて、本作にも「やたら距離の近い従弟がいて、いとこが遊びに来る日は友達とあそんじゃないけない」ってルールがあります。なんてことないワンシーンだし、作中でも母親が直接的に「従弟が来るときは友達と遊んじゃダメ」って言ってる感もないんですよね。でも、子供が空気を読んでる。

これすらもすごい伏線に思えて仕方ないです。「自分を良く見せるために、義理の姉やら妹やらにイイ顔しようとしてんのかなー」とか。もしかしたら「あんたの子よりもウチの子の方が何倍も可愛いという自己満足に浸りたかったのかなー」とか。いずれにしても、なんだか怖い。すっげー怖い。

 

悪い影響を与えそうな友達への対応

 

僕が幼少の頃(とは言っても小学生の低学年とかだけど)は、うちに遊びに来ても挨拶ができない子とかは「〇〇くんと遊んじゃダメ」みたいなことを言われたことがあります。同様に僕も友達から「お母さんにキミとは遊んじゃいけないって言われてるから(キリッ」的なことを言われたこともあるし。

そういう経験からか、この程度はよくあることじゃないかなーって思ってます。例えば「高い所にいる時に軽く押して脅かす」なんて悪ふざけをするような奴は、自分の子供のそばに置いておきたくないって考えるのは、むしろ自然な考えなんじゃないかと。「押すなよ」っつってんのに押すやつとかね。まぁ場面によっては「押すなよ=押せ」って意味もあるから難しいんだけど。

 

で、それで「〇〇くんとは遊んじゃダメよ」くらいに言うならわかるんですけど、本作の毒親はマジですごい。「え、そこまでする!?」くらいの感じ。明らかにおかしい、サイコパス。

僕が考える普通の親っていうのは「危険な場所には、我が子を近寄らせない」って考えるものだと思っていたから、まさか「我が子に及ぶ危険は、排除していく」って考えに及ぶとは思わないし…。結果怖い、すっげー怖い。

 

親子愛の中に垣間見える恋愛感情

 

例えば「嫁姑問題」なんてのは、自分の息子に行き過ぎた愛情を持っている母親が、自分の息子を盗られたような気がしてキツク当たる的な現象だと思ってるんだけど(ウチの子にはもっと出来る女が相応しいというような自意識過剰とか)、嫁姑問題に発展するすべての母親が「これまでに息子にできた全ての彼女に対してそうだったか」ってのはやっぱ違うんじゃないかと思うんです。

結婚となると目の色が変わるけど、彼女はむしろ歓迎するんじゃないかなーって。まぁ僕は母親に彼女を紹介したことが1度もないから、勝手な想像で語ってるんですけど、本作のお母さんは、息子がもらったラブレターを息子より先に読むからね。ここまでいくと本当に怖い。

でも同級生にも結婚して子供ができた奴とかが普通に出てくる年齢に差し掛かって思ったのは、意外とみんな親バカになるってこと。…にしても!これはおかしい。正気の沙汰じゃない。

 

血の轍 コミックス序盤を読んだ感想・レビュー

ベクトルとしては「気持ち悪い怖さ」って感じ。僕がイメージする母親って存在と明らかにかけ離れている存在で、でもこのご時世だから「その辺に普通にいるような気もする」っていう、ギリギリの表現が本当に絶妙です。

例えば、常識から逸脱しすぎていることって逆に怖くないじゃないですか?宇宙人に拉致されるよりも、とある国の工作員に拉致される方が怖いじゃないですか?本作の親子関係って明らかに常識から逸脱しすぎてるんだけど、実際にあっても別に驚かないっていうリアリティがあるんですよね。

 

それが少しずつジワジワ迫ってくる感じの恐怖感ったらないです。中学生になっても親と一緒にお風呂に入ってるとか、キスしてるとか…。それはそれで微笑ましいっていう人もいるのかもわかんないけど、少なくとも僕は気持ちわりぃって思います。

そんな気持ち悪さと恐怖感がクセになる、そんな作品です。完結した時には名作の仲間入りするであろうオーラがほとばしってます。

 

あとがき

「隠してたエロ本を見つけ出して机の上に綺麗に並べておく」という行動に負けてないほどの狂気。

 

 

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