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「鉄腕ガール」を読んだ感想・レビュー

 

これまでに野球漫画は幾つも読んできましたが、女子野球で少しダークな世界観を持った作品は、髙橋ツトム氏が描いた本作以外に知りません。

女子野球って競技が読者を選ぶかもしれないけど、男のチームの中に入って大活躍っていうような展開ではないし、女エースがカッコ良すぎて特に気にならないはず。つーか「いっちょやってみようか、球遊び」ってキャッチコピーもカッコ良すぎる。

というわけで今回は、髙橋ツトム氏が描いた野球漫画「鉄腕ガール(全9巻完結済み)」の紹介です。

※物語の核心に関わるような激しいネタバレは無し。

 

 

 鉄腕ガール あらすじ

 

戦後、間もない日本を舞台に描かれている作品。なんとテーマは女子野球。

敗戦国を立ち上がらせるために女子野球というビジネスを始めた蘭崎五十鈴が、加納トメの容姿と野球の腕前に惚れ込んで自身のチームを発足させ、ゆくゆくアメリカとの野球賭博を成立させるというもの。

根底にあるのは女子野球ではあるが、スポーツの爽やかさなどはあまり描かれておらず、勝つために手段を選ばない貪欲さや卑怯さなどが色濃く表現されていて、ある意味「戦争」を思わせるような仕上がりになっている。

 

鉄腕ガールの登場人物

加納 トメ

 

本作の主人公。男勝りな性格と剛腕で、次々とバッターを打ち取っていく本格派ピッチャー&絶対的エース。アメリカ人にカミカゼガールとも言わしめる存在感を持ち、大きな野望を持って渡米する。目的のためには手段を選ばず、好きでもない男の妻になるという一面も。

 

黒沢

 

ストライクスのキャッチャーで、女子野球界屈指のスラッガー。後に日本代表として、加納とバッテリーを組むことになる。

 

蘭崎 五十鈴

 

化粧品会社の社長。加納トメがピッチングしている姿を見て、女子野球というビジネスに進出することを決める。後にアメリカvs日本という大金が動くビジネスを成立させるが、アメリカ陣営によって弟を人質に取られ結果的にビジネスを失敗。ちなみにブチャラティではない。

 

蘭崎 克己

 

五十鈴の弟にして、加納が愛した人物。日米女子野球の時に拉致・監禁されて、アメリカチームの切り札にさせられてしまうが、命を賭けた男の勝負に勝ち、加納を助ける。

 

ケイト・バンクス

 

アメリカチームの3番バッター&ピッチャー。賭けの胴元でもあるビジネスマンの娘。父親はあの手この手で試合に勝とうとするが、本人は正々堂々と戦って加納に勝つことを目指す。

 

鉄腕ガールの見所をチェック!!

ストライクスvsキャンディーズ

 

女子プロ野球で生きていくという覚悟を持った選手が多く所属しているストライクスと、急造チームであるキャンディーズの一戦。

キャンディーズには野球経験者がほとんどおらず、試合のマネージメントをした男も「ストライクを投げてくれれば打たれても構わない」という始末。早い話が噛ませ犬ということですね。

そんな中でも勝つことしか考えていない加納の気迫は、まさにカミカゼ。命を燃やして試合に臨んでいる感じって言うのかなぁ…。女子野球でここまで鬼気迫る感じは良い意味でヤバイです。

 

「男に生まれたかったなんて思わない」

 

例えば野球やサッカーなんかだと女子中学生や女子高校生が「なんで私は女の子に生まれたんだろう…」みたいなことを言うシーンが容易に想像できたりしませんか?

特に甲子園なんかだと女子マネージャーがグラウンドに入ったら問題視されたりもして、中には「本当は選手としてプレイしたいけど、女子じゃ甲子園に行けないからマネージャーで我慢する」という人もいると思うんですよね。

そういう人なら女として生まれたことに対するやるせなさとか、ぶつけようのない怒りみたいなものを抱くこともあると思うんだけど、加納は「男に生まれたかったなんて思わない」と断言するんです。これ、負け惜しみでも何でもなくマジで。

 

日米女子決戦

 

一千億円もの大金が動いた試合。間違いなく本作の1番の盛り上がりを見せた試合だと思います。しかしこの試合の裏では蘭崎社長の弟が拉致・監禁されており、加納が試合に出られなくさせられていたという背景も。

結果的に加納は遅れて参加することになるんだけど、大金が動くということで万が一にも負けられないアメリカチームからの水面下でのプレッシャーや、それに屈しない日本チームの意地など見所が多く用意されている試合です。

勝敗ももちろん気になるし、勝ったとして無事に五体満足で終われるのかどうかもわからない。それに本作は「加納TUEEE!」って感じの作品でもないので、普通に負けそうな感もあるんですよね。だが、それがいい。

 

命がけの駆け引き

 

本作はただのって言ったらアレだけど、普通の野球漫画とは違って戦後の政治的な背景とかも込みの作品です。ぶっちゃけ野球やってる場面とそうじゃない場面が半々くらい。

野球をやってない場面ではビジネスの話をしているか、怖い人たちと関わっているか…。この辺りに高橋ツトム氏らしさが感じられて、他の作品には無い狂気を感じられると思います。ロシアンルーレットとか命がけの場面もあって、まさに凍るような緊張感も。

 

VS ジョー・ダンカン

 

メジャーリーグのヒーローでもあるジョー・ダンカンとの対決は、あっという間に終わってしまうんだけど、僕の中ではまったく予想できない結末だったし、しかもあっという間に終わってしまいました。ちなみにこの戦いでジョーは引退、加納は運命を賭けてます。その結果がまた面白い!

 

2人の行く末

 

本作は野球漫画であって野球漫画にあらず。スポーツ漫画というよりは戦後の日本におけるカリスマというか、復興の一立役者である加納トメの生き様を描いた作品だと思うんです。

そんな加納が愛した男、自身の危険を顧みずに加納を守った男との行く末は非常に気になるところ。日米女子野球後に生き別れた後、克己がハワイにいることを突き止め、急いで向かった加納が見たものは…。

 

鉄腕ガール 全9巻を読んだ感想・レビュー

上にも書いたけど、スポーツ漫画じゃなくて主人公の生き様を描いた作品です。カッコイイ女性が活躍する漫画作品を探しているという人がいれば、まさにドンピシャな漫画作品だと思います。

野球を始めて1週間そこらの女子がバリバリの経験者を相手に試合できるなんて考えにくい部分もあるけど、そういうのが全く気にならないほどの気迫だと感じました。それでいて敗戦を味わって沈んでいる国全体を盛り上げるかのように立ち上がった存在に何かを思わずにはいられないです。

普通であれば「野球漫画に恋愛を持ち込まないでほしい」とかも考えそうだけど、本作に関しては野球以外の雑音(ノイズって言ったらアレだけど)も大きな魅力。高橋ツトム氏のテイストが存分に発揮されている見応えある作品だと思います。

 

あとがき

いっちょやってみようか、球遊び。

 

 

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